第257話悩み
私(村上義清)「どうした?虎綱。」
春日虎綱「私は元々甲斐の人間でありますし、晴信の側近でありましたので武田と本願寺の関係が密であることは重々承知しています。今回の家康の要請に応じ、一向宗の範囲に兵を出すことがどのような結果を招くことになるのかについて真田様に相談しました。」
私(村上義清)「それで幸隆は何と答えたのだ?」
春日虎綱「一言『気にするな。』と。」
私(村上義清)「どう言う事?」
真田幸隆「我が領内の一向宗の規模を考えた場合、仮に武田が信濃の一向衆を扇動したとしましても大きな規模に発展することはありません。
今後(虎綱が管轄している)南信濃と(進出しようと考えている)奥三河を見た時、誰と誼を通じたほうが得なのか?
武田ですか?違いますよね。武田は三河に影響力を行使することは出来ません。辿り着くためには我が領土か今川領を通らなければなりませんので。
では今川でしょうか?奥三河は今川の勢力圏にあります。そこを狙うのでありますから仲良くしている場合ではありません。
なら一向宗でしょうか?確かに彼らは西三河に拠点を設けております。経済力とそれに裏打ちされた軍事力を有しています。ただ彼らは宗教勢力であります。(有名無実ではありますが)朝廷並びに足利将軍家がもたらす秩序とは異なるところに居ます。これらのお墨付きがあるからと言って関係を維持することが出来るとは限りません。
そうなって来ますと自ずと答えは見えて来ます。」
私(村上義清)「武田が攻めて来たらどうするつもりだったのだ?」
真田幸隆「武田と境を為している地域の全ては私の管轄地にあります。尻拭いは私がします。故に『気にするな。』と申したのであります。」
私(村上義清)「飯富が(いくさでは無く)直談判に来ても対応することが出来たか?」
真田幸隆「ん!?……その時は上位者同士で膝突き合わせていただければ宜しいかと思われますが……。」
私(村上義清)「俺と武田の重臣は同格と言うことなのか?」
真田幸隆「いえ。そうではありません。飯富は私のような端場の人間では話にならないと思っていると思われます故。」
私(村上義清)「飯富自身が攻め込んで来たら?」
真田幸隆「その時は容赦なく叩きのめすだけであります。」
私(村上義清)「(大丈夫かな……。)」
春日虎綱「(真田幸隆が)このような状況にありますので正直迷いました。家康の手伝いをして良いものなのかを。この一件によって信濃がいくさの場となってしまうのを私は望んでおりません。この悩みは出兵中も消えることはありませんでした。」
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