旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第231話呼び水

　春日虎綱の三河進出を自らの権益拡大の呼び水にしようと考えている様子の真田幸隆。

真田幸隆「勿論殿の了解なしには動くことはありません。」

私（村上義清）「もしかしてうまくいかなかった時の保険を掛けていないよね？」

春日虎綱「いえ。そのようなことは御座いません。殿は真田様にとって主人でありますので、（幸隆が許可を求めるのは）当然のことでありましょう。」

私（村上義清）「（２人の間では話がついているんだな……。）わかったよ。しかし『武田が上野に入ったら』が条件だぞ。それも（北条の援軍としての）武蔵からではなく、（武田の単独行動である）志賀を通った時だけだからな。」

真田幸隆「ありがとうございます。」

私（村上義清）「ただどうだろう？」

真田幸隆「なんでしょうか？」

私（村上義清）「武田が志賀と上野を攻めたとしよう。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「武田が攻め込む時、輝虎は上野には居ない。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「うちは上野の。とりわけ箕輪衆からの救援要請に応える形での出陣となる。そうなると……輝虎にうちが上野に入る許可を取らなければならなくなる。と言う事だな。」

真田幸隆「それはしないとほうが宜しいかと。」

私（村上義清）「どうしてだ？」

真田幸隆「それをしてしまいますと、上杉と北条の抗争にうちが巻き込まれることになってしまいますので。我々の目的はあくまで箕輪衆をこちらの陣営に引き入れることであります。それ以上深入りする気はございません。」

私（村上義清）「（今、『我々』と言いやがったな、あいつ……。）無許可で攻め入るのか？」

真田幸隆「流石に無許可は乱暴ですので、我らと武田並びに輝虎の養父山内上杉憲政との講和条件であります実質中立地帯となっている志賀を武田が通過ないし侵攻した時、我らが志賀に兵を出す許可を得れば、それで十分であります。輝虎からすれば（志賀は）必要のない場所でありましょうから。」

私（村上義清）「上野はどうするのだ？」

真田幸隆「あそこは関東管領の管轄でありますので。」

私（村上義清）「輝虎不在の上野だぞ。」

真田幸隆「ええ。」

私（村上義清）「見捨てると言う事か？」

真田幸隆「そうなりますかね？」

私（村上義清）「そうだろう。輝虎の援軍が無ければ箕輪衆は持たないだろうに。」

真田幸隆「そうならないと困ります。」

私（村上義清）「武田の領土になってしまうのだぞ。」

真田幸隆「ですからそうならないと困るのであります。」