第228話空白地帯

 自らの基盤強化を目指し矢作川の一向宗と川向うの吉良氏攻略を目論む松平家康に、その家康と牛久保を巡る攻防戦を繰り広げている今川氏真。三河の平野部で激しい争奪戦が繰り広げられる中……。




私(村上義清)「奥三河どうしようか?」




 今川、松平が三河平野部で相争う中、双方共目の届かない状況となっている奥三河と、その奥三河と境を為す村上義清と南信濃を管轄する春日虎綱。今は今川の勢力圏でありますが、義元在世期間中には美濃の遠山氏や西三河の吉良氏と手を結び今川義元に反旗を翻したこともある奥三河の国人勢力。




春日虎綱「三河の混乱はどちらかが勝つにせよ、和睦するにせよ、いづれ収束を迎えることになります。その時三河は強固な勢力が治めることになります。これは松平になるのか。今川になるのか。はたまた織田が進出して来ることになるのかわかりませんが。」


私(村上義清)「そうなる前に楔を打ち込んでおきたい?」


春日虎綱「はい。」


私(村上義清)「可能か?」


春日虎綱「直接支配は難しいと思います。信濃同様奥三河も山岳地帯であります。現地のものの協力無しには治めることは出来ません。」


私(村上義清)「彼らの権益を認めつつ、今川よりもうちについたほうが得であり、かつ安全が保障されていることが条件になる?」


春日虎綱「はい。権益面につきましては、仁科や木曾における実績を引き合い出しながら下交渉を行いまして、口約束ではありますが折り合いはついています。勿論彼らがそれを材料に氏真や家康と交渉する可能性はありますが、そうなっても良いよう。遊びを設けています。」


私(村上義清)「安全保障については?」


春日虎綱「玉薬ありますよね?」


私(村上義清)「(上杉)輝虎が気前よく売ってくれるので助かっている。」


春日虎綱「玉薬に問題が無いのでありましたら、こちらの被害を少なくすることが出来るでしょう。」


私(村上義清)「『現地のものの協力無しには』と言ってなかったか?」


春日虎綱「今川から引き離すためには、うちが今川よりも強いことを示さなければならないでしょう。」


私(村上義清)「仮に今川と手を結んで来たらどうする?」


春日虎綱「うちの爆弾小僧(四郎)を作動させるだけのことであります。」


私(村上義清)「あいつ下手すると根絶やしにしてしまうだけの力があるけど大丈夫か?」


春日虎綱「そこは山岳地帯の奥三河でありますので。」


私(村上義清)「(集落の1つを見せしめに使うつもりだぞ……。)」


春日虎綱「勿論そうならないようにするのも私の仕事であります。ただそれを実行に移すとなりますと……。」

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