第226話矢作川

松平家康の本拠地岡崎城の西を流れるのが矢作川。その流れに沿って発展したのが一向宗。




春日虎綱「矢作川の流れは岡崎から南西に向かった後、南に針路を変えます。そこに築かれたのが要塞本證寺であります。」




 今の矢作古川。当時は勿論矢作川。




私(村上義清)「そこが一向宗勢力の境目になる。と……。」


春日虎綱「はい。どうやら家康はその向こうを狙っているようであります。」




 吉良氏の事。




春日虎綱「家康が今後、岡崎で稲作をするにせよ。町作りをするにせよ矢作川の利水治水が必要になります。大量の水が必要になるときもあると思われますし、自分の領地を守るため。水を領外に逃がすことも必要になると思われます。その時、障害となるのが吉良氏の存在であります。吉良氏の領土も矢作川の水を頼っています。稲作は勿論のこと。上流から運ばれてくる大量の土砂を利用しての塩田。更には新田開発にも利用しています。そして何より吉良氏の方が松平氏よりも先に定住しています。」


私(村上義清)「水の権利は吉良にある?」


春日虎綱「はい。家康にとって、たとえ必要なことでありましても吉良の了解なしにはことを為すことは出来ません。」


私(村上義清)「家康のところ(岡崎)が助かると言うことは、下流の吉良が危なくなる。」


春日虎綱「はい。その関係性が清康以来続いています。」


私(村上義清)「そこにも(家康は)手を入れたいと考えていると言うことか。」


春日虎綱「はい。」


私(村上義清)「吉良と一向宗の関係は?」


春日虎綱「今川が岡崎を治めた時と同様ではないかと。」


私(村上義清)「『別に自分のところだけでやっていくことが出来るから、こっちの権益を侵さなければ構わないよ。』と。」


春日虎綱「はい。」


私(村上義清)「しかし家康はそうではない?」


春日虎綱「はい。」


私(村上義清)「一向宗が行っている商売と、吉良が握っている矢作川の水利を手に入れたい。」


春日虎綱「交渉ではどうすることも出来ませんので。」


私(村上義清)「武力で以て奪うしかない。」


春日虎綱「家康にほかの選択肢がありませんので。」


私(村上義清)「お前の管轄地でそう言った場所は無いか?」


春日虎綱「天竜川につきましてはこちらも遠江(今川領)のものも『あそこはどうしようもないですよね。』『無理に入り込まないようにしましょう。』と諦めの境地にありますので、どちらが先に定住したかどうかもありませんね。三河方面は陸路になりますし。」

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