旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第212話介入

太田資正は扇谷上杉の元家臣で松山城城主。兄資顕が北条家への従属を選ぶ中、上杉家に留まった資正でありましたが河越城の戦いで主君を失い、その後の戦いで主家滅亡の憂き目に遭った資正は上野に退くも北条家から松山城を奪還。これに留まらず資顕死去の隙を衝いて岩付城を攻略。太田家の家督の継承に成功した資正でありましたが、北条家の巻き返しに抗しきれず降参。その後は北条の家臣として常陸方面を転戦すると同時に陸奥の伊達氏などとの取次の任にあたっていたのでありましたが、山内上杉の養子になった輝虎の関東遠征に呼応。対北条の先鋒として活躍したのでありました。

私（村上義清）「氏康から良くされていたのだろ？」

真田幸隆「はい。資正の嫡男氏資の奥さんは氏康の娘であります。」

私（村上義清）「押し付けられた？」

真田幸隆「氏資はどうかわかりませんが、資正の行動を見ていますと資正はそう思っていたのかもしれません。それに……。」

私（村上義清）「どうした？」

真田幸隆「厳密に言いますと資正は北条氏康の家臣ではありません。」

私（村上義清）「と言うと？」

真田幸隆「資正の出身が名門太田家であることに氏康が配慮をしまして、当時の関東公方足利義氏の家臣の扱いとしていました。尤も義氏の母は氏綱の娘であり、妻は氏康の娘でありますので。」

私（村上義清）「近親者ばかり……。」

真田幸隆「どこもそうでしょう。資正を北条に付けようが、関東公方に付けようがどちらも北条の家臣であることに変わりありませんので。」

私（村上義清）「このままの状況が続いていたら、岩付城に居を構えながら氏康から常陸の攻略や陸奥との取次を任させることになっていた。」

真田幸隆「……そうなりますね。」

私（村上義清）「そんな平和な環境を一変させる出来事が発生してしまった……。」

真田幸隆「元々は扇谷ではありますが上杉の家臣でありますし、北条は主家を滅亡に追い込んだ仇。」

私（村上義清）「北や東の関東の連中がこぞって輝虎に味方する中、仮に北条側に留まったりしようものなら。」

真田幸隆「岩付城は最前線になってしまいますからね……。」

私（村上義清）「しかし輝虎は氏康を倒すことが出来なかった。」

真田幸隆「はい。氏康は資正を許すわけにはいきませんので、当然報復の兵を出し松山城を攻略。次いで岩付城も攻め立てます。ただ氏康は資正を葬り去ろうと考えているわけではありません。」

私（村上義清）「資正の持っている（北関東や東北の）影響力は貴重だからな……。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「再び資正を北条方に戻す餌に氏康は京の権力を利用した？」

真田幸隆「そうなります。」