旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第119話囮

村上義清が居る塩尻峠から様子を伺い知ることが出来なくなった春日虎綱より、早馬が到着。

保科正俊「如何なされました。」

私（村上義清）「（虎綱からの報告を見せながら）このようになったそうな……。」

保科正俊「それでしたら……。」

私（村上義清）「いや……。」

保科正俊「何故！？」

私（村上義清）「それよりも……。」

　しばらくして春日虎綱、四郎勝頼と高遠頼継がいくさをしていたと思われる場所より一群の部隊が……。そこに現れたのは……。

　少し時間を巻き戻して、高遠頼継に接近しては離れ。また接近しては離れを繰り返しながらいくさの場所を変えていく春日虎綱と四郎勝頼。これを追う高遠頼継。平地が尽き。もう移動することが出来る場所が無くなった春日虎綱と四郎勝頼。『追い詰めた！！』と意気上がる高遠頼継隊。そこへ……。

「放て！！」

　高遠頼継隊の両脇より数多の弾と矢が……。真田幸隆が春日虎綱と四郎勝頼に課した役割。それは……。

春日虎綱「囮になれと……。」

真田幸隆「そうだ。此度のいくさの場所を私は塩尻峠と想定している。」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「そこで問題となるのが高遠頼継の存在。」

春日虎綱「高遠城に戻した……。」

真田幸隆「頼継には長時に対し嘘の内応をするよう指示を出している。」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「ただそれを頼継がどのように利用するかわからぬ。」

春日虎綱「情勢次第でどちらにでも加担することが可能。」

真田幸隆「そうだ。故に頼継に伝えている場所とは異なる塩尻峠でいくさを行うことにする。」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「で、次に問題となるのが塩尻峠と頼継が陣を張る場所。仮に頼継が小笠原長時側となった場合、塩尻峠の手前で彼を迎え撃たなければならない。」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「ただそうなった場合、頼継が陣を張る場所と塩尻峠を結ぶ線上に適当な迎撃場所を見つけることが出来なかった。」

春日虎綱「それで私に……。」

真田幸隆「うむ。そなたの用兵の妙を使い……。」

春日虎綱「頼継を……。」

　真田幸隆の依頼を受けた春日虎綱は、保科正俊に頭を下げ、長槍隊を借り受け。高遠家の養子に入ったばかりの四郎勝頼を騎馬隊の大将にするべく教育。この日を迎えたのでありました。

高遠勝頼「一兵たりとも逃すな！！！」

とこれまで逃げに逃げまくっていた鬱憤を晴らすが如く反転する四郎勝頼。

春日虎綱「四郎を討たすな！！！」

と高遠頼継の両脇から一斉に躍り出たのは上原城より出陣した諏訪衆の面々。抵抗を試みる高遠頼継。しかしこれまでの移動に次ぐ移動により隊が間延びしていたところに、両脇からの飛び道具。更には三方からの突撃。衆寡敵せず。高遠頼継は自害の道を選ぶのでありました。