第105話賊将
私(村上義清)「どうした。」
真田幸隆「景虎の律義さに賭けてみませんか。」
私(村上義清)「どう言うことだ。」
真田幸隆「景虎の父長尾為景は生前『信濃守』を持っていました。」
私(村上義清)「そうだな。」
真田幸隆「その『信濃守』は現在空位となっております。」
私(村上義清)「うむ。」
真田幸隆「その『信濃守』が空位となっていることを良いことに小笠原長時が勝手に『信濃守』を使っています。」
私(村上義清)「……俺もそうなんだけど。」
真田幸隆「静かに。」
私(村上義清)「……。」
真田幸隆「本来朝廷から与えられるべき官位を、天皇様の承認無しに僭称するなど許されることではありません。ましてや天皇様が直接景虎様のお父上であられます長尾為景様に与えられた『信濃守』を使うなどもってのほかであります。このまま野放しにしてはなりません。討伐すべきであります。」
私(村上義清)「……あの……。」
真田幸隆「言わなくてもわかっております。信濃にとって本来あるべき姿。故長尾為景様が統治する信濃の国を取り戻すべく私。村上義清は、賊将小笠原長時と一線を交え、見事討ち果たしたいと考えております。景虎様。つきましては此度の私がいくさをすること。お許しくださいませ。お願い申し上げます。勝利を修めた暁には賊将小笠原長時が不法占拠していました松本平一帯を景虎様に寄進することをお約束申し上げます。と……。」
私(村上義清)「えっ!……それじゃあ。」
真田幸隆「御心配なく。景虎は『(松本平は飛び地となるから)いや別にそちらで管理していただければ宜しいですよ。』と答えると思われます。関東のことでそれどころでは無いと思われますし。寄進につきましても『それならば天皇様に。』と仰られると思います。そのほうが景虎の株を上げることにもなりますので。」
私(村上義清)「あいつの株は上がるけど、そこを管理すのは。」
真田幸隆「勿論。」
私(村上義清)「敵が攻め込んで来た時は。」
真田幸隆「勿論。」
私(村上義清)「そこから上がった収益は。」
真田幸隆「勿論。」
私(村上義清)「俺に得なことが1つとして無いんだけど。」
真田幸隆「美しき信濃を取り戻した英雄として後世語り継がれることになりますぞ。」
私(村上義清)「(俺の知らないところで評価されても嬉しくない。)将軍家と喧嘩になるんだけど……。」
真田幸隆「信濃守を騙る賊将小笠原長時に信濃の守護を与えた将軍様が悪いだけのことであります。御心配なく。」
私(村上義清)「敵を増やすだけだろう……。」
真田幸隆「そうならないようにするためにも早く信濃守を取りましょう。」
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