旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

第1話プロローグ

 2020年3月。世界的な流行を見せた新型ウイルスの影響により自粛生活を余儀なくされた私。幸い仕事にはそれ程影響は無く。収入源に困る。と言う事態には陥らなかったのでありましたが、旅行。それも鉄道旅行が好きな私にとっては辛い毎日。そんな中、ウイルスに備えつつ経済を回すべく様々な対策が施され。徐々に日常が取り戻され。今回の自粛騒動において、甚大な被害を被ることになった観光産業を復活させるべく国から打ち出されたのが


『旅行に行こう』(邦題)


……なのでありましたが、私が住んでいたのがギリギリ東京であったため、スタートと同時には活用することは出来ず。


(……武蔵小杉が良くて、なんでうちが駄目なのか……。)


と思っていたのでありましたが10月。東京も解禁。早速こちらも今回のウイルス騒動で大変なことになった鉄道を使い旅行することにした私。新幹線。少し在来線に乗った後、つい最近まで特急が頻繁に走っていた今は完全な地域輸送に特化した第三セクターの鉄道に乗り到着したとある町。ホテルに入り、感染対策が施された中で出来得る歓待を受けた私はそこで


『婿投げ体験が出来ますが如何なされますか?』


とのお誘いが。この地域では妻を娶った新郎が小正月。5メートル下の崖に投げ落とされると言う伝統行事。5メートル下となりますと、普通「無傷で。」と言う事にはなりませんが当地は豪雪地帯。たっぷりと積もった雪の上に投げ込まれるわけでありますから問題は無い。とは言え5メートルは高い。普通であれば丁重にお断りするのでありましたが、


『経済を回す』


と言うことを考えますと


「是非。」


と答えた私。夜。準備が整い会場へ。地元の屈強な男たちに担ぎ上げられた私は5メートル下の崖の下へと放られるのでありました。




(……10月って、雪降っていたっけか……。)

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