第百十一話 ダンマスの気持ち(ムータン)
で、ドラゴニア、ムータン、異世界間初の経済軍事同盟締結。
ドラゴニアの通貨をムータンでこっちの世界の通貨に両替してもらうことが可能になった。
王様はレート通りでいいと言い張ったが、ドーラは最初の話しを押し通した。ドラゴニアにとってこっちのカネは「必要なモノを買うだけのため」なので、そレだけの価値が無いものはまず買わない。
だが、ムータンはそれ以上のリスクを負うのだ。
ムータンが
・異世界の強国と繋がりを持った
・金を大量に得られる
・魔法を使えるようになる
このざっくりな3つだけをとっても、世界の大国は喉から手が出るほどだ。特にあの建国以来侵略戦争していない年は2−3年しかないあの世界最強国は絶対に、あの手この手で侵略してくる。
でも、ドラゴニアにとって、別にこっちの世界のモノは「無くても問題ない」ので、いつ両替できなくなっても良い。さほどリスクはないのだ。
ムータンの負うリスクは、ドラゴニアと比べて天地ほどの差があるのだ。亡国の危機を招くほどのリスク。
それをこの王は判っている。
彼にとって、彼の国にとって、彼の国民にとって、それほど”魔法”は魅力なのだ。
もしくは、彼(王)は、国ごと向こうに移転したいと思っているのかもしれない。
もしそうだとしたら、ダンマス、ドーラ、ユータは喜んで協力するだろう。
”本当の善良な人びと”は、そういう国は、それほど価値があると彼らは知っているから。
この同盟の本質は目に見えないそこなのだ。
ムータンにしても、もし、国内で魔法を使うことができるようになれば、経済封鎖とかされても全く問題なくなる。怖いのは国内を混乱させられたり、武力侵略されること。
でも、バリア張れば、何をどうやっても人も入ってこられなくなる。国内混乱工作はされない。
また、サーチを常時発動できればミサイルや航空機に対処でき、
更に、ダンマス達がいれば、攻撃してきた国の軍と政府を完全に抹殺できるだろう。ひとつふたつ前例を作れば、こんな小国に手を出すバカはいなくなるのではないか?
と、王は踏んだ。
今回何もしなくても、そのうち必ず何かをされる。どんな小国であろうとも、無視してもらえる期間などわずかにしかない。それは今日までの歴史が証明している。
ーー
夕食も終わって、皆部屋に戻ったあと、、
大魔法使いのプチ屋敷。
大魔法使いが一人で少し酒を飲んでいると、ダンマスが現れた。
なんとなく、来るんじゃないかなーと思ってまだ寝てなかった大魔法使い。
ダンマスにショットグラスを渡して酒を注ぐ。ひとじゃないからチェイサーとかいらない。今では大魔法使いも同類だが。
クイッとあおるのも好きだが、ちびちに舐めるのも好きなダンマス。
喉越しをあまり感じないからだ。でも匂いと味がわかる。
とげとげしい新しめより、香りがよくなり味も丸みが出る何年か置いたものが好みの様子。
テーブルを挟んでちびちびやる2人。
「もし、あのとき、こっちに移住となったら、どうするつもりだったんですか?」ダンマス
前回の向こうの世界崩壊の危機の事だ。(第九話)
「・・・こっちをあまり詳しく知らなかったし、、まず国を作ろうと思っていた。ひっそりとな」ユーリ
「だが、今となってはそんな、ひっそりとなんぞ出来やしないってわかったがね。モロバレだ。人工衛星ですぐバレる」ユーリ
「そう、すぐに、、そう、あそこの配下もしくはあそこ自身が物量に物言わして乗り込んできたでしょう」ダンマス
「当時の俺らじゃぁ、勝ち目無いわな、、魔力がすっからかんだったろうからな。あの地下でもそう簡単に回復させられなかったろう。不可能だったかもな、、」ユーリ
「状況把握しているうちに爆撃され、、、」ダンマス
「だよなー」
ユーリは今ではダンマスとだけはざっくばらんに話せる。ユーリにとってはそこまでの仲になっている。
「ただ、今度ダンマスが国を興すとなれば話は全く違ったものになるよな?」
「ええ、準備万端ですよ」
だな、、とつぶやくユーリ。
ただ、、と、
「あまり関わりたくない世界なんだよな、なんか、こっちは」ユーリ
「ええ、ユータがいなけりゃ来ませんね。」
「まぁ、俺は戻らないほうがいい感じなので、仕方がないけどな、、」
「どうでしょう?あの子達は、やらかしますよ?」
期待、かな、、とユーリ
ですねぇ、、とダンマス
ーー
で、
期待通りに、とは言わないが、”ぷち”で
翌朝早くに、
「んじゃ、ユータ、市のところへの扉作って」ドーラ
「ええっ!、、と、、こっちの世界内だけだからいいのか、、、」
「そういうこと。奴等をここに住ませて、稽古の時だけあっちに帰す。なんかあったらこっちに移住しちゃえばいい」
「まぁそーか、、」
ということですぐ作ったユータ。
「どうだ?魔力は」
「うん、あまり減ってない感じ、向こうで作った時とあまり変わらないかな?」
安心して2人は扉をくぐる。
「よう!」ドーラ
「あ、、いつの間にと言うか、扉ですか!」市
「こんばんわー」
「ユータさん、、、、、どこから?」
「「ムータン!」」
????
市は知らない様子だった。
ーー
一方ダンマスも翌日はもう動いた。
ムータンの地理的中央付近の森の中にダンジョンの種を埋めた。
ダンマスは毎日夜寝る前に種に魔力を注ぎ込み、あの洞窟の中で寝て魔力回復させ、朝ムータンに戻るようにすることに決めた。
ユータとドーラの魔力はまだまだ大丈夫なようだ。ダンマスは特に見ようとしないでもわかるのだ。
目に見えるほど減ったら、洞窟に行くように言おうと思っている。
こっちの世界で、まだどこの国にも知られていないうちに、できるだけ進めとかねばならないのだ。
その後ダンマスは密かに空港と、国外に通づる全ての人が通る道の側に、迷彩にしたモモンガ達を配置した。
全ての道だ。もちろんいくつもある悪意の無い抜け道にもだ。この国に対し悪意のある者達の出入りを許さないため。もちろん手法はいつもどおり。
逆に、今までいた情報ルートや便利に使えていた者達が消えたら、おかしいと思われるだろう。でもそのまま情報が筒抜けになるよりは万倍も良い。時間は稼げる。
ダンマスは、本心は、この国全てを向こうに移転することを提案したいのだ。だが、まだダンマス達にその力はない。
ダンマスは、あの王が、本当の王としての実権を持ち、どこまで良い国にできるか、を見届けたいのだ。
もしかしたら、私が産まれてから、最もおおきく困難なケースになるかもしれませんね。
ダンジョンの王は、そう思うと、ゾクゾクしてきた。
必ず勝つ。そう決めた。
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