第九十四話 守るべきもの
兄弟をガンダやマキ達に会わせ、皆の了承の後、孤児院の院長の所に連れていき、頼んだ。
院長は、他の孤児院から来た子達のようにここのことを説明し、自分達に何が必要かをわからせ、学校に通う心の準備をさせ、宿舎に部屋を与えた。最初は2人で一部屋。そのうち個室が欲しくなったら、その時に。
院長に丸投げしたドーラとユータは、昨晩の疲れがあるので今日はのんびりしようと決めた。
ゲスザンスとゴーミはそのまま潰すのが一番楽だ。が、できることはしてみたいな、とユータがちょっと思ったので、ドーラも「んじゃそっちでやってみっか」と乗ってくれた。
一応様子見て、一般人達が良くなる可能性が高いと思えば、良い領主を見つけてそいつを王にさせ、国民を良くするように努力させる。
という案。
ただ、向こうの冒険者ギルドの本部がどこにあるのかしらんが、そこをぶっ潰す。
冒険者をドラゴニア側に来させないようにする=冒険者の面倒を見るどころか寄生虫のごとく吸い続けるために自分らの手元に強制的に押しとどめることをすることを許すようなドーラとユータではない。
一人でも多くの良い冒険者(もしくは良い一般人でもOk)を、その悪夢の国から脱出させたいがため。もちろん行き先はドラゴニアでもいいし、新たな同盟3国でもいい。どこでもいいのだ「いい奴等が逃れることができれば」。
単純にそれだけ。
だから、あの兄弟に話を聞いたんだが、、
邸の2人の部屋。
2人は床に転がってごろごろしてえる。そこらじゅうに漫画が散らばってる。
ジュースのペットボトルも転がっている。向うから持ってきて飲み終わってもボトルだけ使っているのだ。水とか茶とか果物ジュースとか入れて。
ちゃぶ台の上には、こっち製チップス。最近は結構うまくできている。化学調味料使ってないので美味しい。他には、味付干し肉も皿に乗っている。
「厳しそうだなゲスザンスは」ドーラ
「だねぇ、、でも一応北の領主の領都に行ってみていい?」
「ああ、見るだけ見るか、、」
・・・・
ユータも可能性低いかな、と危惧している。
ま、ダメ元なのだ。
ゲスな国の孤児院は地方の街にあるという話だった。
国中から集めて一箇所に押し込む。当然「王都にはそんなの置けない」と、地方に。
なので、王都消滅から逃れられてる孤児は多い。
あの兄弟も、なんか北の方に居たという。ただ、孤児院の大人たちがゲスだったと。
そこの領の領主はダメだろう。人品以前に人を使えていない。人の上に立つ資質はない、致命的だ。
そんなことはユータも少し考えてわかっていた。
それでも行ってみたい、とユータ。
だからダメ元。
その晩の食事はとんかつだった!
ドーラとユータの大ぐらいは以前ほどではないけど、やっぱ大食い者の倍程度食べてやっとお腹いっぱいに感じる。
それを知っている厨房チームはユータとドーラのおかずもご飯も特大にしてくれている。
あのゲスザンスから来た兄弟(ターロ、ジーロ)達孤児院の新人も邸の食堂で食べる。皆への顔見世みたいなものだ。明日の朝晩は街中の食堂、あさっては噴水の向こうの食堂に連れて行かれるだろう。
2人はユータとドーラの前に在る皿と丼を見てその量に唖然とした。
で、新しい子たちが席に着いてから隣の子が「おかわりしていいからね。食べ終わったら、あそこのおかずや汁やごはんを盛りにいきなさい。」と教えてくれた。そして、
「でもあまり食べすぎると、食後のお菓子がたべられなくなっちゃうから注意しなさいね」とも。
食後のおかし?
「デザートってやつね、」
「貴族かいっ!!!」思わずつっこむ兄
「いやねぇ、平民だって食べていいのよ?」
そりゃそーだけど、、、
「あと、あと、うちの国に貴族は居ないからね」と言われていた。
腹一杯から5%引いた程度満腹食べた兄弟。
食後にはアイスが出てきて、兄弟は目を白黒させていた。つか、いまどきいねーよ白黒させるやつw
「俺、これだけの為に一生ここにいてもいいかもっ」兄、涙ぐみながらアイスを舐めている
「ボクは作る側にまわってみたい気がするよ、にい!」現実的な弟
何気に見ていると、他の新しく来た子たちや、教えている先に来た子達ともなかよくなっているようだ。
そういうのを見られると、嬉しいユータとドーラ。これだけはなんど見ても飽きない。
だが、子供でも船(ダンジョン)や釣り橋(北の森)などで跳ばされる者もいる。ゲス国から来たゲスな領主などの子弟に多い。産まれたときからゲスしか知らねば染み付いてしまっているのだろう。モモンガ達は容赦ない。
更生する機会?反省すらしていない奴等にそんなのを与えるバカはこの世界には居ない。
その時間と労力はまともな者達に向けられるべきものだ。
ナディ(81話〜)はあれからここの厨房チームに入ったのでここで働いている。新人が来ると気になるらしく、毎回話しかけては「わからないことあったら私に聞いてもいいからね」とタカビーに言っている。
大概「おう、ありがとな」と素直に言われるので最近は少し控えめな物言いになっているけど。
ここに来ると、皆心にゆとりを持てるようになるようだ。衝動で反応する前に、頭で考えるようになる。だから理由もなく謝るとか意味不明なことをする者もいない。すぐに怒る、ということも滅多にない。それなりの理由があって初めて怒りを出すから。感情(衝動)で怒るような者はいなくなるのだ。来た当初そういう子でも、周囲から諭されているうちに、早々に冷静になることを覚える。心に余裕ができていてはじめてできることだろう。
子供のうちにそのようなことを覚えるのだ。
ガンダ達は、そんなみんなが大人になっていくのを楽しみにしている。
(ま、これを、この未来を守るために、俺らがゴミ掃除していくんだ。仕方ないよな?)ドーラ
(そういうことだね、、、そうだね!)ユータ
敵より味方の未来を守るんだ、と、思い出した様子のユータ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます