第六十七話 タイムパラドックス 数日のみの異世界扉


ダンマスとドーラ、市さんとタカとボクで無人島に戻って、ボクが扉を収納してから市さんの道場に戻った。

で、

扉をどこに設置しようか会議、をして、すぐに結論が出た。

「市の道場以外に皆安心して扉を使える場所無いだろ?」

とのドーラの一言で。


市さんのプライベート、つまり自宅部分の廊下の奥に設置。認証ない者は通れないようにした。

そのときにダンマスが、

「まぁ、魔力が無い者は、この扉自体が見えないですけどね」と。


ユータが最初に向こうに行った時、ガンダさんや皆が言っていたけど、向こうではだいたい誰もがほんの少しでも魔法は使える、って。だから魔力が無い者はいないんだろう。

つまり、、魔力が無い者は行けないどころか、見えもしない世界なのかもしれない。


「じゃ、完全に魔法のみで作った者は、こっちの連中には見えないのか?」

ドーラがダンマスに訊く。

「そうですね。でも、気、を使える者なら見えるかも知れませんね。似ていますからね。」ダンマス

ほうほう、と、、ニタッとしたドーラ。


扉を設置して使えることを確認し、じゃあとでココに集合ねー、と別れようと、

「まぁ、待ちたまえ諸君♪」ドーラ

そう言ったと思ったら、ほいっと、

空にでっかい怪獣の幻影を作り出した

あんぎゃぁーー!!と叫んでいる。


が、、街から悲鳴も何もあがっていない、全く何も変わらず。

「あ、、遠くの方で、ゲッ、という声がしましたね?」ダンマス


「聞こえた?」ボク

「いーや?」ドーラ

ダンマスは耳もいいんだ!


ドーラは幻影を消して

「実験終了!!ダンマスが聞いた遠くの一人のみ、が見えただけでしたー!」

パチパチパチ、、と、ボクとタカが拍手してあげた。


ボクとドーラは家に戻って母さんに伝えようとしたら、

「言うな、俺達はダンジョン側から帰るから」と、ドーラが止めた。

まぁ、それなら、、、


で、何か持っていこうか、、、、、あ、、、、

「そーいえば、もう女の子たちのシャンプーとか石鹸とか無いんじゃない?」ボク

「あー、俺が買って持ってってるから大丈夫だ」ドーラ

何この女の子には気の利く子!!モテそうだね?


「いや、最初の頃、ユータがバイトして金稼いで買っててくれたろ?遠慮してたんだよ。ヒモノが売れるようになってからユータが買い物経費を俺にも渡すようになったろ?あれから俺が買って持ってってる。いろいろ新しいの試したぜ?でも、あまりなんかあれでなー、、ちまちま買うのもめんどくさくなり、美容院で使ってる業務用を買ってったら、それがイイって皆。で、最近はでっけー箱の奴だ。女子たち皆で使っても、一ヶ月持つぜ?」


いつの間に凄いことしてたんだ?


「石鹸も液体のを持っててみたけど、ダメらしい。固形のが良いってさ。でっかめのいい匂いのにしている。」ドーラ


石鹸も!!


ドーラが見ようによっては子供にも見える美形。よくぞそこまで?とか思ったけど、、

「市に協力して貰って、ネットで買って市ンとこに届けていた」ドーラ


この世界を知り尽し始めたドラゴンかっつ!!!!恐るべし!!


・・・・・ドラゴンが通販でシャンプーとか買っている図、、を想像し、、ぷww、とかなるユータ。

・・・・ジト目のドーラ。視線の先のユータ、はっ!と気づく。



ユータがバイト先の運送屋さんに電話してバイトの日程を聞く。

「山場は過ぎたので、あとは事務所の引っ越しが20日すぎから月末近くまで続き、それは夜間なので、それに出てもらえれば助かる。」

と言われた。そこの息子のクラスメイトも出るというので、タカもユータも出ることにした。タカはバイトあるなら出るからと言っていたので。


・・・・・

その間、ずっとドーラはなんか考えていたようで、、

バイトの話が決まってから


「なぁ、おもしろいことになるんじゃないか?時間の流れが。」

とドーラが言ったけど、、、

そのドーラの顔が怪しすぎて、、めんどくさくなる、ことの間違いなんじゃ、ないかな?


んじゃ、ボクらやることないね、となって、

「ちょっと出てくるねー」と言って家を出た。


「今日はこのまま市んとこ行って、俺らはダンジョン経由で向こうに帰るからな」ドーラ

「うん、わかった。」ボク


道場に行くと、ダンマスが

「やっぱりそっち使いますか、、、」とドーラに。

「まぁ、、やってみたいし、、、」ドーラ

「気をつけてくださいね。」ダンマス

「、、うん、、わかっているさ、、何があるかわからないからな」ドーラ


そこまで重大なのかな?まぁ、ドーラは実験みたいなもんだと言ってたけど、、

気をつけるっても、、まぁドーラに任せるしかないね。


タカが来た。ダンマスは市とタカを向こうに送っていった。ダンマスも「今回は私は扉で行きます」と二人と一緒に行った。

戸締まりは市さんがやってたんで、ボクとドーラはそのまま洞窟に転移し、コテンして向こうに戻った。


ーー


「やっぱりな、、」ドーラ

ボクらがドラゴニア側に戻った時間は、ゴンザールに扉を作ったあの後ではなかった。

無人島に扉を設置し、こっちにタカと市さんを連れてきて、そして向こうに戻った直後だった。


「ユータ、魔力、どうだ?」ドーラ

え?・・・あ、、

「もの凄く減っている、、、でもまだ全然大丈夫だけど、、この量一気に減ったのって、今までなかったかも、、」


だよな、、とつぶやくドーラ。

「実は俺も3割位減ってる。」ドーラ

・・・・ボクは、、1−2割かなぁ、、


2時間後くらいにダンマスがタカと市さんを連れて扉を抜けてきた。

「あ、れ?ユータ、先に来てたんだ?」タカ

市さんもびっくり顔。


「大丈夫ですか?」ダンマスがボクらに訊く。

「ああ、3割程度、、」ドーラ

ふむ、、、まぁその程度なら、、まだ、、とダンマス。


「でも、この後ですからね?」とダンマスがドーラに言う

「ああ、わかった。ホントに気をつけるわ」ドーラ

「こんなことやったのは、はじめてですからねぇ、、、」ダンマス

「だろうな、、こういう機会自体がまずありえなかったろうし、、」ドーラ


ーー


今まで、、大魔法使いのときも、

日本側の人間をダンマス側の世界に連れて行く、という理由がなかった。

なので転移扉の異世界間接続をするという事自体、考える者はいなかった。

あのダンジョン5階層の壁抜けのため、ダンジョン側から洞窟側に「一方通行で抜ける」道さえ魔法で作れればよかったのだ。

あの洞窟は、向こうの世界の者達をユータの世界の方に「逃がす」ためのものとして作られたのだから。



だからあの時、大魔法使いは、あの洞窟を作って消耗した魔力を回復させたら、その通路、一方通行なら魔力も節約できるので、、を洞窟の壁に作って皆を逃がそうと思っていた。

のだが、、


結局、大魔法使いがあの洞窟まで作り、ユータの世界と接続させたことで魔力の大半と、大魔法使いの世界にあふれていた魔力をかなり使った為に、世界は安定した。だから逃げる必要はなくなった。そして、あの洞窟はお蔵入りになった。


大魔法使いはその後かなり後、自分が消える前に、自分の勘に従って、指輪と腕輪と剣と魔導書を仕込んだ。

ユータとドーラが洞窟で眠り、魔力を必要だけ回復しその質を向上させる仕組みは、避難民達の魔力欠乏を考えて作られた基本的な仕様のものだった。


ダンマスさえ、そこまでは知っていない。

あの時の大魔法使いは必死だった。時間との闘いのようなものであったから。


もし、ダンマスと大魔法使いが今茶飲み話でもできるようであれば、大魔法使いは笑い話として全てをダンマスに話したろう。

だが、当時はそんな時間なかったし、その後も、安心した大魔法使いは、アレを笑い飛ばすにはまだまだ心にゆとりはなかった。いつ、また、、と、気がきではなかった。


なので、大魔法使いが行き来して双方の世界で使った時間が反対の世界に反映されていない、ということになっている事が重大な事だと考える機会もなかった。よって、その影響のことも何もわかっていない。



ーー



・・・・

「「たぶん・・」」ダンマス、ドーラ

どうぞ、、とドーラはダンマスに譲る


「ああ、そう、ドーラもわかったろうね、、君達が君達と会ったら、消耗はそんなもんじゃ済まないだろう。まだ何もわかっていないんだ。消耗のみで済むかどうか、もわからない。」ダンマス。


「ああ、でも、今試してみなけりゃ、、」ドーラ

「・・・そうだよねぇ、、」ダンマス



「あ、、あの洞窟に扉を設置すれば、、」ドーラ

「・・あの危機の時、大魔法使いでさえ、回復した己の魔力の大半を使って一方通行だけの通路を作ろうとしたくらいなんだよ?基本は扉と同じなんだと思う。

現に、あの壁に、扉を付けたらちょどいいへこみがあったろう?

時間の進みは壁抜けと一緒になるだろうけど、維持するだけで君達2人の魔力の大半がなくなるはずだ。それこそどんだけ寝込むことなるやら、、」ダンマス


それに、、とダンマスは続けた。

「あの大魔法使いの術の上(中で)にそれを行うことで、どうなるか全く予想すらできないので、やってほしくない。あの洞窟が壊れたら、また、世界に魔力過剰の不安定が起きるかもしれない。それは避けたい。」


「そっか、、、」


「そう、、多分、今回であの扉はお蔵入りにしなけりゃならないとなるだろうね。でも、折角彼らがココに来たんだ。その間、可能な限り魔力を付けてもらうよ。」ダンマス

「・・うん、、頼む、、いい奴等なんだ」ドーラ


ボクはそれを聞いていてあまりわからなかった。けど、あの向こうとこっちの世界を繋ぐ扉はボクらには、まだ早すぎた、手に負えなさそうなものなんだということはわかった。

今回のみの扉。

いつか、ボクらがそれを使えるようになるまで。


ーー


その後、タカと市さんはダンマスの修行に入った。

ボクらは一日だけ居てまた向こうに戻った。テストするため。


で、道場に行き、扉をくぐった。

「「あ、」」

どしーん!!


ボクとドーラは何かに弾かれ、道場側にすっとんで、、、意識が、、、、


「あ!」

扉が開いたと思ったら、その扉からボクとドーラが覗いている!!、、、あ、すっ飛んだ、、

、、、ボクは急に力が抜けて、、膝をつき、、崩れ落ちた、、

「だ、、ダンマスを呼べ、、すぐ、、」と、側にやはり崩れ落ちたドーラが、側に居る子に声を掛け倒れた

ボクも、、、・・・・・


ーー


「で、どうだった?」

と、ベッドの上で寝ているドーラがダンマスに訊く。

ボクらはまだフラフラだ。2−3日寝ている方がいい、とダンマスに言われ。寝ている。


「あっちに居たあなた達に魔力をかなり与えて回復させましたよ。家にフラフラのまま帰えせないでしょう?

家の前まで送ったけど、大丈夫そうでしたね。

多分、向こうのあなた達がこれに遭わなかったこと、の、差、の分なんでしょうね。

向こうに帰れば向こうのあなた達になるでしょうから、扉を覗かず、タカ君と市君が帰ったら、すぐにしまっちゃってくださいね。」

「「はーい」」ドーラ、ユータ


ダンマスがタカ達の修行を見るのに戻っていった後、


「ねぇドーラ、んじゃ向こうでこっちを覗いてたボクらはどこなの?」ボクは訊く


「ああ、アレは”在ったこと”だよ。なかったことにはならない。あったからこそ、俺らここに寝ているだろ?

・・・そうだな、、こう、、一本の紐が、途中でクルッと小さな輪を作った、って感じだ。同じところに戻るけど、その輪の部分は存在している。」


「よかった、、、。」


「なんだ、あの自分が消えちゃうと思ったのか?」ドーラ

「・・・うん、、なんか、やだなーって思った」

そうか、、



その後、回復し、タカと市さんの日程もぎりぎりになったのでダンマスが道場に送っていった。

それを見てからボクらはダンジョン経由で向こうに戻った。

タカと市が道場に戻ってきてる。ボクらの時間も同じ時間に戻っている。


「あれ?これって、、もしかしたら、俺らも同じ時間にもどれるように”なった”んじゃね?、ほら、扉だか洞穴の方だかが学習して、、、」ドーラ

「・・かもしれないけど、まだ今のあなた達ではそれを検証する力がありません。もっといろいろできるようになってからですね、ほら、とっとと扉しまう。」ダンマス


「あれ?んじゃダンマスの時間は、、、」ボク

「ああ、私の時間は、無人島に行く前の時ですよ。向こうに帰ったらその時間に戻ります」

・・・・・・


「んじゃ、、全部わかってたのかよ?」ドーラ

「いや、一部変わってますよそりゃ。少しだけど。」ダンマス


ほんとかよ、、というドーラのつぶやきを聴きながら扉を仕舞った。

タカと市さんは「あーーー、、」みたいに小さく声を出してしまっていた。


2人はダンマスから説明を聞いていた。

なので、「一度きりの修行のチャンス」を必死に活かしてガンバッていた。その甲斐があったようで、先程ダンマスからでかい魔石を貰っていた。


「この魔石の魔力なら一ヶ月くらい持つでしょう。これからあなた達は、ここからどんどん吸収し、この程度の魔石なら一週間で吸い尽くすくらいになってください」

と言っていた。


こっちの世界でたった2人の魔法使い候補、かな。


数日限りだった異世界間扉は終わった。ボクラの夏休み。

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