第11話:アレクシス皇太子

「よく私を頼って来てくれた、もうなにも心配することはない。

 君達はここで安心して休んでいてくれ。

 キャメロン嬢の受けた屈辱は私が晴らさせてもらいましょう」


 私達は大陸一の大国、オギルヴィ皇国を頼りました。

 オギルヴィ皇国が全力を使えばベテューヌ王国を滅ぼす事は簡単です。

 ですがアレクシス皇太子だけでは皇国の全力を使えないでしょう。

 いえ、使ってもらっても困ります。

 オギルヴィ皇国に全力で大陸制覇に乗り出されては、戦乱が大陸中に広がり多くの民が塗炭の苦しみを味あう事になります。


「アレクシス皇太子殿下のお言葉はとてもうれしいのですが、私には復讐をする心算は全くないのです。

 愚かな妹の為に、皇国の民や王国の民を苦しませる訳にはいきません」


「ふむ、それは殊勝な考えだが、本当にそれでいいのか。

 極悪非道な妹の思い通りになってしまうぞ。

 王国の民は君の妹に搾取されて苦しむことになるのではないかな。

 民を助けるために戦う覚悟をした方がいいのではないか、キャメロン嬢」


「その時は皇太子殿下の手の者に妹を始末して頂きます。

 殿下の配下の刺客ならば、事を荒立てずに妹を始末することなど簡単ですよね。

 何も大陸の民に戦乱の苦しみを味合わせる必要はないのではありませんか」


「ふっ、期待通りの答えだよキャメロン嬢。

 君が大陸の民を戦に巻き込んででも公爵家を継ぎたいと思うような者なら、皇国から叩きだしてやるつもりだったのだが、そんな事はしなくですみそうだ。

 ベテューヌ王国と正面から争う訳にはいかないから、皇国の公式な客人として迎える訳にはいかないが、私個人の友人として迎えさせてもらおう。

 皇城の一角に君達のための屋敷を用意しよう。

 必要なら生活費を支給し侍女も送るが、どうだね」


「ご厚情心から感謝いたします。

 屋敷は遠慮せずにお借りさせていただきます。

 しかし生活費や侍女の手配はご遠慮させていただきます。

 既に心から信用できる護衛の者がおりますし、王国から連れてきた民が沢山いますので、彼らに仕事を教えるつもりで侍女や従僕をさせるつもりです」


 最初から王国の民を連れて国を出る気があったわけではありません。

 王国の政治が悪化しているせいで、困窮する民が多すぎたのです。

 王国から皇国に逃げる途中に明日にも死にそうな飢えた民が沢山いたのです。

 そんな者達を顧みずに見捨てて逃げられるほど図太い精神力などありません。

 最初の街で手に入れた馬や馬車に乗せて皇国まで連れてきてしまいました。

 助けた以上最後まで責任をとらなければいけません。

 

 

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