第41話 今日も帯出者【利用者】カードを見る
電子書籍が主流になった今、図書館の利用者は減っているらしい。
らしいと言うのは、よく知らないから。
知らない事はとりあえず知らないままにしているのが最近、私の主流になりつつある。
だって、短い人生、知りすぎて良かった事なんて数えるくらいだった。
人は知らないけれど、私は図書室や図書館が大好きだ。人には言えない人生を生きていて何度も人生を辞めようと決めたから。
海外の名言に、死にたくなったら図書館に行けと言う言葉にそっていたら何とか20代は生きていた。
子供の頃から図書室や図書館にある本の1番最後に張ってある帯出者【利用者】カードを見るのが好きだ。
ジブリの映画「耳をすませば」や映画「ラブレター」に出てくる名前と貸し出しされた日などが書いてあるカード、今は自動貸出し機が印刷してくれる紙がたまに、本の間に挟まっていたりする。
現在は利用者番号も伏せてあるので個人情報は守られている。
ただ、いつか誰かが借りた本のタイトルを見る。今自分が借りている本と誰かが借りた一冊以外は、違う人間だからまったく知らない本のタイトルに出逢う。
自分がまったく興味もない科学や化学や参考書やジャンルもよく分からない本のタイトルがある。
たまに面白そうな本のタイトルだけを紙に書き写して、忘れてしまったり借りたりする。
何だか、その誰かが一冊だけを共有しながらも違う時間と人生を歩んでいるのだと思わせられる。
当たり前の話なのに、自分の人生を必死に生きていていると忘れてしまう。
貸出し機からの紙は、そっとゴミ箱へ捨てておく。帯出者【利用者】カードは、数秒見ては、また読書に戻る。
一人なのに、誰かがいる。
そんな一枚の紙が私は大好きだ。誰かの人生の歴史を教えてくれる。
今日も静かに帯出者【利用者】カードを見ている。
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