第334話 さかまゆ

そのうち・・・線路が行き止まりになって、行く手は笹が生えている。


友里絵は「あれ?行き止まりだよ?」



坂倉さんは、最後尾の展望室に入って。マイクを握り・・・観光案内。



ーー皆様がご覧になっている線路は、

スイッチバック、と言います。急坂を、線路を切り替えながら

列車は、阿蘇の外輪山を越えて行きます。

これから列車は、方向を変えて阿蘇方面へと向かいますーーー



と、車内に放送が流れる。



友里絵は「ガイドさんみたい」


由香「あんたもガイドさんじゃん」



友里絵「忘れてたね。(^^)。」



菜由は「鉄道のガイドさんってのもアリかもね」


愛紗「そうかも」




停止位置表示が、線路の脇に立っている。



友里絵は「機関車のところから見えないのにね、どうやって解るんだろ」


由香「なんか、坂道にあったみたいよ、目印。」



菜由「賢いなぁ」



車両の最後尾が、ガラス張りの展望室になっていて

観光の人は、自由に出入りできるようになっている。



木の内装は、どことなく懐かしい感じ。



坂倉さんは、車掌さんと一緒に。

停止位置確認、よし!。



ただ、なんとなくメイドさん風の服なので(^^)かわいい。



確認が終わると、車掌さんは肩から下げた列車無線で機関士に話す。


停止位置、確認。


機関士が、了解。と、無線でお返事。



機関室で、逆転器を回す。


前進位置に。


給排気位置を大きく取る。


 ぽ、と。短く汽笛。


機関助士は、投炭をしているが

この機関車は重油を併燃しているので、さほど忙しくはない。



機関士は、機関車単弁、と言うブレーキを緩めつつ

スロットルレバーを引く。


先ほどから、編成直通ブレーキ弁は解放してある。

連結器ばねを伸ばしておくためだ。


上り坂である。


機関車がゆっくり、前に出て行く。


蒸気が、シリンダに入り、出て行く。


しゅ、しゅ・・・。


結露した水を排出する、ドレインを開く。


線路に蒸気が、しゅー、と。出て行く。



シリンダ弁位置が最大なので、蒸気が多く入る。

力も大きい。



編成の前の方から、ゆっくり、ゆっくり・・・引かれていく。


電気機関車とは違う、ゆったりとした動き。



最後尾も動き始めた。



ゆる、ゆる・・・と、揺れながら。



友里絵は「なんか、いいね。のんびりしてて」

由香「ほんと」



菜由は、むかーし、子供の頃に乗ったな、と思う。


愛紗も、なんとなく、ふるさと日南を思い出す。


海沿い、森の中を走る列車に揺られて・・・どこかへ行ったっけ。



どこに行ったかは覚えて居ないけど。






友里絵のケータイに、まゆまゆ(^^)からメールの返信。


友里絵はすかさず「あそBOYでね、坂倉さんに会ったよー、「まゆまゆ」ちゃん(^^)」



と、返信。




吉松のまゆまゆはそれを見て、ニッコリ。


「さかまゆにあったんだー」


坂倉さんと、日光さんは同期。なので、仲良し。


まゆまゆ、さかまゆ、と、呼び合う(^^)。




由香は「偉い偉い、サイレントにしたね。」と、にこにこ。



友里絵は「うん!まゆまゆから。愛紗のオスカルみたーい、だって」



愛紗は「えー、あ。コラージュか」と、納得。


友里絵は「こらーじゅってなに?」



由香「なんだっけ?」



菜由「写真のモンタージュみたいなやつ」



友里絵「ああ、あの、刑事もので出てくる・・・犯人探しみたいな。愛紗が犯人?」



由香「じゃなくて、写真を切り貼り」


友里絵「ああ、なんだ、アイコラか」



由香「そうみたい」




列車は、ゆっくり、ゆっくり、急坂を登って行く・・・。

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