第306話 親切

町営バスは、暗くなってきた細い道を

通り、広い国道バイパスに出た。

バスセンターがある。

そこには寄らず、町営バスは

大きなDIY,スーパーの駐車場にある停留所に停まる。


丸いバス停の看板に、青。真ん中が白く、横一文字に抜かれて

そこに黒い文字「町営循環」とある。


時刻表には、まばらに文字が。



友里絵はそれを見て「路線バスの旅でがっかりするバスだ」と。

蛭子さんの顔真似。


菜由が「ははは、似てる似てるー」


由香は「よく食うところは友里絵そっくり」


友里絵が「由香は太川だな、るいるい♪」と、右手を出して、こいこい。


由香は「ははは。るいるいってどんな意味?」



友里絵「さあ」


由香は「知らないで言ってるんかい!」と・・・。「さっきと逆か」



友里絵も、ははは、と笑う。



そこのDIYで、おばあちゃんが乗ってきて。何か、大きな包みを持っていて。

「よっこらしょ」と、ノンステップバスに登るのも一苦労。


愛紗は、そのおばあさんの側に行って「荷物、持ちましょう」


おばあちゃんは「ありがとうよ」と、コンビニ袋みたいな白い袋に一杯の

お買い物を手渡し、ドアの持ち手を持って、やっと、の感じで。

バスに乗った。


すぐそばのシートに座る。

隣のシートに愛紗が「はい、お荷物ここに置きますね」と。


おばあちゃん、にこにこ。「ありがと」と。

野良着のような服に、ジャンパー。

農家のひとだろうか。


運転手さんは愛紗に「ありがとね」と。


愛紗は、いいえ、とにっこり。



ドアを閉じて。



発車しまーす。と。運転手さん。


車内よし!


前方、よし!


右、よし!


と、クラッチを切り、ギアを1速に。

このバスは、普通のシフトが床から出ているタイプだけど

まだ新しいので、しっかりとしている。


バスは、のんびりとスタート・・・。



バイパス道路に入り、次の交差点を右折。

高森駅の方へと向かい、駅を通過して南阿蘇村へと・・・。



さっきの市街地で、おばあちゃんは降りて。

愛紗に何度もお礼を言って「ありがとうよ、ありがとうよ」と。



菜由は「いいことしたね」と、にっこり。

友里絵は「タマちゃんみたい」


由香「ああ、そういえばそんなことあったね」


運転手さんが「ありがとうね」と、にこにこ。



愛紗も、ちょっと恥ずかしいけど「はい。」と、答えた。

自身がバス業界の人間、そういう意識もあった。



駅前の三叉路を過ぎて、しばらく行くと

広い高原道路に出る。

山裾を、カーブを描きながら進み

少しづつ標高を上げて行く。


「なんか、旅行って感じ」と、友里絵。


「いままではなんだったんだ?」と、由香。


友里絵は「コント芸人の移動」


菜由は「ははは、そうかも」

車窓は、夕暮れが近づく。


九州は、関東より30分くらい遅いので

夜もゆっくり。


ゴルフ場や、牧場、自然公園もまだまだ、のんびり。


温泉館があるところで左折。

目前にあるのがKKR南阿蘇である。


「ホテルっぽい」と、友里絵。

白い、瀟洒な建物だ。


玄関が広く、ホールが右手。

左手はレストランだろう。



「何曜日かわかんなくなっちゃった」と、友里絵。


由香は「毎日日曜だろ」と、当たり前みたいな顔で


菜由は「バチ当たりそうだなぁ」と。



愛紗は「いつも、曜日なんてないものね」と、ふと、現実に戻る。



「月月火水木金金♪」と、友里絵。


由香は「金が好きだろ、やっぱ」と、おどける。


「なすたーしゃ・きんすきー」と、友里絵。


愛紗は「女優さんね」


友里絵は「金好き」と、はっきり。


由香は「おいおい」



友里絵は「GOLDだよ。なんだと思ったの?」


菜由は「・・・・・」おっと。


由香は「ははは。そっか、あたしはまた・・。」


友里絵「あたしの股?」


由香は「んなこと言うかい!」と、空手チョップ!。


愛紗は「あ、着いた」(^^;



玄関の前にバス停がある。


「ありがとうございましたー」と、4人で。


運転手さんは「はい、ありがとねー。」と、おとなしそうなおじさん。



パタン、と、前扉が閉じて。

中扉もあるけど、使って居ない。

乗降数の少ない路線だと、その方が安全なのだ。


友里絵は「あー、ついたついたー。なんか、旅も慣れてきたな。」

由香は「もう半分以上過ぎたもんね」と、ちょっと淋しそうに。


菜由は、指折数えて。「えーと、友里絵たちは

金 1レ「富士」

土 日野家泊

日 指宿

月 指宿

火 人吉

水 南阿蘇

木 由布院

金 由布院

土 2レ「富士」


・・・でしょ?もう半分は過ぎた。」



愛紗も「なんか、だんだん淋しくなるね」


友里絵は「帰りたくないなー」と、阿蘇山に向かって吠える「おぉおおおおおーーー」


由香は「よせよ、人がいるんだから」


どこかのわんこが、吠えてお返し(^^;



友里絵は「通じた」と、にっこり。



由香は「オオカミかよおまえ」



菜由は「帰るのいやだったら、辞めたら?」と。


友里絵は「辞めてどうすんの?」と、マジメな顔。


由香は「真由美ちゃんのお姉さん」と、にかっと、笑う。



友里絵は「あー、その手か!いいかもね。かっこいいし」


由香「お兄ちゃん次第だよ」と。



友里絵は「そーだね。ハハハ。さ、エントリーエントリー」


由香「エントリ?」


友里絵は「あ、チェックイン」



愛紗は「なにかと思った」


フロントは、玄関のまっ正面・・・・。






真由美ちゃんと恵をのせた

急行「球磨川7号」は、肥薩線に入って。

川沿いを上り始めた。

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