第302話 たーま、たまたま?

ゆっくりゆっくり、高森線ディーゼル・カーは走る。


♪おてもやーん♪の、オルゴールが、なんか、和める。


「おてもやんってさ、この辺りの歌だっけ?」と、由香。


「さあ」と、友里絵。


由香は「友里絵には聞いてないって」と、にこにこ。(^^)。


友里絵は「あーサベツだー。悪いヤツだー。帰れ!帰れ!かーえーれ!」


菜由は「帰ってるじゃん、あたしら。みんなで」と、にこにこ。


友里絵「そーなんだよね。それ考えると悲しくなるなぁ」と、ちょっとしょんぼり。


愛紗が「おてもやんって、かわいい女の子のことでしょ?ほっぺが赤くて、にこにこの」


友里絵は「あたしのこと?」と、ほっぺたに両指、にっこにこ。


由香が「女の子って年かいな。ちっちゃい子だよ。3つか4つか。」


菜由は「かわいいよねー、そのくらいって。」

と、思い浮かべるのは・・・。



友里絵が描いた、石川の顔に菜由の髪の女の子だった。


菜由は「・・・・なんか、思い出したら気分悪くなってきた」(^^;



友里絵「なんか、酸っぱいもの食べたいとか?」



由香「アホ」



愛紗は「まあ・・・ありえなくはないけど」



友里絵は、とととと・・・と、歩いて、さっきのニャンコのところへ。


トラトラのニャンコ。

けっこう太ってて、まんまる。


友里絵が撫でても、平気。「なーご」と。頭をすりすり。



さっきの「らら」ちゃんが、とことこと。。。と来て。


白い夏服。ブラウスみたいなものに縁取りが、紺色の。

中学校の制服みたいな感じ。


「たま、たまー」と、ノラちゃんの名前を呼んで。


たま、は、ららちゃんの方を見て。起き上がった。


伸びをして、「なーご・・・。」


友里絵は「ららちゃんの猫?」


ららは、「ううん、ノラちゃん」と、にこにこ。たまを撫でている。


友里絵も「たーま、たまたま?」


ららちゃんは口をおさえて「うふ。たまたまじゃないよ」と、笑った。


白いソックス。紺のスカート。

さっぱりした短い髪。



友里絵は「一年生?」



ららは「はい。この春から」と、にこにこ。制服もそういえば、新しい。


ららは「ゆりえさんは何年生ですか?」


友里絵は「えー、あたし?と、自分の顔に指をさして。」


ららは、首をこっくり。「はい。あたし」



友里絵は「もう卒業したの。20才」と、にこにこ。



ららは「びっくりだー。3年生かと思った」


友里絵は「高校生にみえたか」と、にこにこ。



由香は遠くから「まあ、頭の中身は・・・そんなもんかな。」と。右手で髪を。

菜由は「ははは。そうかも」と、ひとさし指で頬をかりかり。

愛紗は「かわいいもんね。私達は、高校生には見えないでしょうね」と、にこにこ。



由香は「愛紗はさー、体は高校生で通るよね」と、にっこり。


菜由「なんかいやらしいなぁ、その言い方」と、訝しげな顔。


愛紗は「心が、アレね」と、にっか。




由香「そんなことないって。体が綺麗だって言っただけ。」と、マジメに。



菜由は「あたしは汚れてるわよ、どーせ」と、ふざけて。



愛紗は「それも考えすぎ」



菜由は「そっか」と、笑う。



単行ディーゼル・カーは、白川鉄橋を渡る。


昼間だったら峡谷が見えるけど、今は夕方なので薄暗くて何も見えない。



がこーん、がこーん・・・と、鉄橋を渡るディーゼルカーの音が響くだけ。


「昼間見たいね」と由香。


菜由は「明日、下ってくるから」


愛紗は、ふと思う。


・・・・何しに来たんだっけ?(笑)。

今日、水曜日。



運転席の隣では、ららちゃんとゆりえちゃん(^^)が

楽しくお話をしながら。

にゃんこと遊んでいる。


ららちゃんは「お家にも、にゃんこが居るの」と、にこにこ。「まだ子猫なの」と。

にっこり。


友里絵は「子猫、かわいーよねー。」と、にこにこ。


ららちゃん「うん!」と、にこにこ。





駅を、いくつか過ぎて。


ららちゃんは、友達ふたりと降りていった。

「ばいばーい」。


友里絵も「ばいばーい」と、手を振って。



由香が「可愛い子だったね」


友里絵は「うん。熊本の方の高校に通ってるんだって」


由香は「ふーん。大変だなぁ」と、ちょっと気にして。


菜由は「そーかぁ、そういう事も考えないと・・・。」と、マジメな顔。


愛紗は「子育ての話?」と、聞く。


菜由は「そう。」と、当たり前な顔で。




友里絵は「まあ、石川さんが九州に来るって言えばの話よね」


由香は「鋭い」と、はた、と。



菜由は「そうなんだけど、石川は整備士だし。東山のコッチの工場だって転勤出来るでし


ょ?」



愛紗は「結構現実的に考えてたんだ」と、ちょっとびっくり。




単行ディーゼル・カーは、かたこん、かたこん・・・と、駅に着く毎に人を降ろして行って。


阿蘇下田あたりまで来ると、愛紗たちのほかには数人、位になった。



にゃんこは、まだ乗っている。運転士さん、通路、その隣の窓で


寝んころりん。



足を舐めて、毛づくろい。





由香が「あれ、逆立てると怒るんだよね」(^^)。



友里絵が「そうそう、でもかわいそうだからやらない」



菜由は「優しいなあ」






友里絵が「あの猫ね、たまちゃんなんだって」



愛紗は、もう、その名前を聞いてもドッキリしなくなった。

そのことに、愛紗自身が少し、変化を感じていた。


ひとりでいると、ヘンなことばかり考えるのかな。







一方の熊本駅3番線。急行「球磨川7号」湯前行きが

出発時刻。


夕方、平日。なので、人吉方面に行く人はほとんど居ない。


熊本まで通勤する人は、この辺りには居ない。

熊本付近、例えば豊肥本線沿線とかに引っ越してしまった方が楽だから。


そんな理由で、空いている。

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