第295話 回715M、熊本、場内待機!

回送「有明」は、熊本駅に向かって軽快に走っている。

なんといっても、人が乗っていないから軽いのだ。


真由美ちゃんは「弟さん、お元気ですか?」


恵は「真?うん、元気だよー。相変わらず。国鉄に入るのかな、あいつも。」


真由美ちゃんは「姉弟電車、なんて」(^^)。


恵は「わたしが運転士?なれるかなーどっちかと言うと貨物の方が向いてそう」


真由美ちゃんは「そしたら兄と同じ職場ですね」


まあ・・・・夢物語である。旅客の車掌から貨物の機関士になった女性は

前例がない。


貨物は貨物・・・と、最初から分けられていた時代である。



回送「有明」は、熊本駅構内に進入。



待機線の信号機が、赤である。


御馴染みの警報ベルが、ぢゃーん。と鳴る。

運転士は、赤いボタンを押して確認。


信号、閉塞!


キンコンキンコン・・と、チャイムが鳴り続ける。

停止位置・・・よし!。


待機線の停止位置は解り難い。


ブレーキ・ノッチを戻しながら・・・・。


速度を落とし、待機線に停止する。

車両はそのまま、上り「有明」になるが、ホームが空かない場合

こうして、待機線に停まる。


「真由美ちゃんの家は、兄妹電車にはならないね」と、恵。

凛々しい表情と似ていて、口調もさっぱりとしている。


この電車は方向幕なので、待機中に行き先を変える。

電気モーターでの巻き取りなので、今は簡単。

運賃表示機がある車両ならば、コンピュータ制御で同時に行われるが。



真由美ちゃんは「はい。兄は・・・機関車が好きなんです」

と、にっこり。


恵は「そう。そういう感じね。じゃさ、真由美ちゃんが寝台の車掌になれば

一緒の列車に乗務できるね」と、恵はにこにこ。

にっこり笑うと、少女のようで愛らしい。


そこの落差があって、魅力のある人だな、と・・・真由美は思う。



真由美ちゃんは「はい。でも・・・・夜行の車掌さんって、女の子はいないですね」



恵は「そうだけど、西鹿児島ー門司くらいなら乗れるよ。18時くらいだし。夜。」


真由美ちゃんの夢は広がる「いいでしょうね・・・・ブルー・トレインの車掌さんになるのって。



西鹿児島、11時45分発。特急「はやぶさ」東京行き。

12時20分発、特急「富士」東京行き・・・。


普通、寝台特急の車掌は通し勤務だが、例外もあるのだ。

下り「富士」「さくら」「はやぶさ」等、広島車掌区の担当の場合は

門司で交替。その場合は九州管内は

「富士」が大分車掌区。

「はやぶさ」が、熊本車掌区。

「さくら」が、長崎車掌区だったり。


そういう時は、女子でも乗務が可能なのだ。

しかし・・・・女子の車掌で、寝台特急の乗務に当てられるものは、無かった。

それも慣例である。








入れ替わりで、豊肥本線には特急「あそ」が入線。


ターボ・ディーゼル・インタークーラ。

軽快な赤い車両である。


さきほどの右カーブを、すばらしい加速で駆け抜けていく。


閉塞、進行!速度、75!


運転士は、ギアを固定段3、に切り替えて。


車内のエンジン音が低くなる。


がらがらがら・・・・・・ごーぉ・・・。



水曜の午後とあって、比較的車内には乗客の姿が見える。


録音の女声アナウンスが「次は、新水前寺、新水前寺です、お出口は右側です」と。

機械的だけど、優しい声だ。


水前寺公園は、此方でお降りになると便利です、と言わないのは

既に閉園時刻を過ぎているからで

その辺りのきめ細やかさは、コンピュータとはいえ

中々のものだ。









ホームで待ってる友里絵は「・・・・うー。便所行きたくなった」


由香が「便所こーろぎかよ、オマエ」


菜由が「ははは、居たの?」


由香が「いや、団地じゃ見たことない」


友里絵は「うー、漏れちゃう漏れちゃう。フランソワーズ、モレちゃウ」と、足をぱたぱた。



由香は「冗談言ってるうちは大丈夫だな」


友里絵は「うー・・・・。」^^;;;;


由香は「そこにしゃがんで、線路にしちゃえ」(^^)。


友里絵「・・・・・。」



愛紗は「そろそろ・・・・あ、来た。」


赤い列車の、ヘッドライトふたつ。

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