第280話 駄菓子屋さん

由香は、友里絵の買ってきた駄菓子を見て・・・。


「こういうのって、なんかいいな」



友里絵は、タコ糸のついているアメ玉の、糸を持って


「あげる」と、由香と、真由美ちゃんに。


由香は「これ、アタリが出るんだよね」


真由美ちゃんは「そうそう!ひっぱると。くっついてきて」


菜由は「路地にお店があって。おばあちゃんがやってて」



愛紗も「なぜか、おばあちゃんなんだよね」



友里絵「おばちゃんのとこもあったなー。踏み切りの側の」

由香「あー、あったね。ラーメン、作ってくれるとこ。」


真由美ちゃんは「ラーメン屋さんですか?」



由香「インスタントのね、袋麺に、10円足すと。おばちゃんが作ってくれるの」


真由美ちゃんは「カップラーメンでなくて?」



友里絵は「そ。カップラーメンは、お小遣いだと高いから」



真由美ちゃんは「なるほど・・・。」



菜由は「自転車で来てる、男の子とかね。なんか、汚いズボンはいて。

泥だらけで」



由香「友里絵だろ」


友里絵「女だよ、いちおー」


みんな、ハハハ、と笑う。



車内は、ほとんどだーれもいない

水曜日の午前。



急行列車とは言え、車両はかつての特急形である。


結構、ゴージャス。



由香「でもさーぁ。普通の女の子だったら、駄菓子買ってくるかねー。」



友里絵「いいじゃん、ふつーでなくたって。」



菜由「まあ、そうだよね。自由、自由。」



愛紗は「そうそう。」(^^)。愛紗は、その「普通」が苦手で

逃げてきたから(^^)。


友里絵を羨ましく思う。最初から、そんな事気にしていない。





肥薩線は、この辺りは球磨川沿いの河岸からちょっと上の辺りを走る。


トンネルが多い。


緑色の川は、ゆっくりゆっくり流れていて。


川幅も結構、広い。


人が住むところもなさそう。



携帯電話を使っている人が、トンネルのたびに途切れるので


「もしもし、もしもし」・・・と。

言っては、また掛けなおして。


つながると、またトンネル。


そんな様子が、なんかユーモラス。



水面を、つばめが、すいーっ。ひょいっ。


列車は、かたこと、かたこと・・・・と。長閑に下っていく。






由香「子供の頃、自転車がほしくてねー。」


友里絵「そうそう。ママチャリ借りてたけど。ちょっと大きくて。遊びに行っても

帰ってこないもんだから、よーくお母さんが怒って。

貸してくれなくなった」


菜由「そりゃそうだよ」


友里絵は、わはは、と笑い「それで駄菓子屋さん行って、前の道路でメンコしたりして」



由香「ほぼ男だな」


友里絵「そーだねぇ。女の子の遊び・・・って。どんなんだか知らない。」


真由美ちゃんは「駄菓子屋さんだと、リリアンとか」

と、懐かしそうに。


菜由は「あ、なんか、編み物するの。紐ができる」




友里絵「まあ、編み物はねー。メンドいから。」




トンネルを潜って、緑深い山裾の崖に敷いてある線路を行く列車。


愛紗は「地震があったら転がりそう」


と、車窓からの川面を眺めて。



真由美ちゃんが「お花が咲いてましたね」



菜由が「どこ?」



真由美ちゃんは、対岸の・・黄色い房のついた木を指差して「ほら、あそこに」



友里絵は「ミモザかな」


由香「あんたにわかるのかいな、花なんて」


友里絵は「花言葉は・・・友情、秘められた恋」



由香は「ばはは、似あわねー!止めろ!苦しい!」

笑い転げている。


真由美ちゃんも、くすくす。


友里絵「あー傷つくなー。いちおー女だよ」


菜由「まあ・・・。」


愛紗も、言葉には出さないけど、笑顔。



友里絵は「そんなにおかしいか?」



由香は笑いながら「だって・・・さ。普段、屁とか糞とか言ってて、いきなり・・・

花言葉」


友里絵「それはオマエだろ!あたしは言ってないよ」と。由香をはたく。


まだ、由香は笑っている。


友里絵は「だーめだこりゃ」(^^;




愛紗は「イメージってあるもんね。なんか」




真由美ちゃん「そうですねー。文通とかしてて、会うとイメージ違うとか」



由香は回復(笑)して「ホレ、こーいうお嬢さんが「花言葉」を言うんだってばさ」



友里絵「いーじゃん、自由だよー。あたしが言ったって」と、にこにこ。口とんがらかして(^^)



菜由「そりゃ自由さ」



由香「そっか、どっちかって言うと・・・・友里絵はさ、真由美ちゃんの

「お兄ちゃん」だ。」


真由美ちゃんは、可笑しそうに笑う「面白いですね」



友里絵「女だってばさ」




由香「生物学的にはな」






友里絵「生物学と来たか」




由香は「でもさ、心がなんつーか・・・」



友里絵「野郎」



由香「わかってりゃいーさ」




友里絵「そーいうあたしが「花言葉」って言うと・・・おかしいのか。なーるほど。

そうかもね」と、友里絵も笑う。



菜由は「お相撲さんがさ、刺繍してたらなんか、かわいいでしょ?」



友里絵「あーなるほどね。かわいいけど。・・・・・。

でも、あたしがお花の話しすると・・・かわいくなくて「おかしい」のか?」



愛紗は「なんでだろうね」



菜由「やっぱ、芸人なんだよ。生まれつき」



友里絵「あたしは、不幸な星の下に生まれたんだわ・・・。」と。

窓を見て、空を見上げて。



由香「ジュテーム!オスカル!」


友里絵「あ、そーだ、愛紗はオスカルやったんだよね」



愛紗「ヘンなこと思い出さないでよ」(^^;



真由美ちゃん「あとで写真見せてくださいね」

と、にこにこ。



愛紗「はい、見つけたら。」

と、ちょっと冷や汗(^^;





菜由「でもさーぁ、お兄さんもさ。真由美ちゃんが妹だったら

それは優しくしちゃうよね、こんなに可愛かったら。」



真由美ちゃんは「そんな・・・」と、肩をすくめて。ちょっと恥ずかしそう。



友里絵は、掌を向けて「ちょっと待て!」



菜由は「なに?」



友里絵は「それはさ、あたしが可愛くないから、おニーちゃんが

優しくないのか?」




菜由は「えーと、それは・・・・・。

そういう事になるか。ハハハ。」と、わらう。



由香「そりゃねぇ」(^^;



友里絵は「くそー」



由香「くそ、なんていうもんなぁ」ハハハ、と笑う。



菜由は「それだとさーぁ、いきなり会わないでさ・・・。

メル友か何かでイメージを膨らませてからの方が・・・。」



由香「いいかもね。名前だけだとね。藤野友里絵。って。

すんげー可愛い子、って思うじゃん。どっかのお嬢さんで。

バイオリンケースかなんか提げて」



友里絵「下げてたけど、昔」


由香「すぐ飽きたろ」


真由美ちゃんもおかしそうに笑う。




菜由「んで、会ったら・・・がらがらとイメージが・・・。」



由香「煉瓦の家が崩れるように・・・。」(^^;



友里絵「でもさー、こんなあたしを可愛いって言う人だっているんだよ」



由香「タマちゃんか」


友里絵「そう。」



菜由「あの人はねー。なんか、神父さんみたいだもん」


愛紗もそう思う。



真由美ちゃんは「友里絵さんは可愛いです」



友里絵はにっこり「そう?」



愛紗も「そう。かわいいわ、とっても」



由香「男好みかどうかは別だけどね」



菜由「それがオチか」



友里絵「やっぱ、相方だもん」



ハハハ、と、楽しく笑いながら・・・・

急行「球磨川2号」は・・・八代に近づく。



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