第230話 はやとの風

指宿枕崎線ホームから、日豊本線ホームへは、すぐ。


友里絵は逃げてきて(笑)どこへ行くんだかわかんなくなった。




由香が「つかまえた!このー」(^^)



「わー、めんごまんご」友里絵。



「おーあぶねぇ」と、由香(^^;



「まんごすちんぷりん」と、友里絵。


「鶴光師匠かよ」と、由香。



「おーるないと、すっぽーん」と、友里絵、にこにこ。



「聞きようによっては、あぶねーなぁ」と、由香。



「♪ぱやっぱ、ぱっぱやぱっぱ♪」と、友里絵は、トランペットの口真似。



「ねえ、愛紗、どの列車?」と、友里絵。



「いきなり真面目になるなぁ」と、追いついてきた菜由。




愛紗は「黒いの。そのまま吉松まで行けるけど。隼人で乗り換えなくていいし。」




「しゅわっち!」と、友里絵は万年筆を空に向けたふり。


「それはハヤタ」と、由香。



「♪777♪」と、友里絵。




「パチンコかいな」と、由香。




「懐かしいね」と、菜由。


「見てた?」と、愛紗。


「夕方ね、なんか再放送してたでしょ」と、菜由。



「ウルトラマン・・・」と、友里絵。


「余計なものつけるなよ」と、由香。



「こーたろー」と、友里絵。



「ははは。よく出るなぁ」と、菜由。



暇そうなおじいさんとかが、杖もってにこにこ。

中折れ帽子、金縁眼鏡。

懐中時計ぶらさげて。



「あ、見世物じゃありませんから・・・」と、由香(^^;








4人、仲良く。日豊線ホームへ。


架線が通っているけれど、肥薩線はディーゼルなので

直通列車はディーゼル。




床下で、エンジンの音。がらがらがら・・・・。



「なんか、いっぱい乗ってるけど、全部乗り放題ってすごいねー。」と、友里絵。



愛紗は「あんまり知られてないけどね。知らせてもいないのかも」



由香「ああ、なんか聞いたな。出張の人とか、行商人が交換するとか」



菜由「そんな事するんだ。高速道路のチケットみたいね」




愛紗「そう。ゆき券ーかえり券セットなんだけど。北海道とか九州なんかだと

一ヶ月フリーとかあるし。それで、ゆき券とかえり券を交換する、と。」



由香「バスにもいたなぁ、定期券をさ、期限切れのを指で隠して乗る人」



菜由「ああ、なんか・・・・中村さんが追っかけてって捕まえたとか」



友里絵「あの人、高校の先生だったからかな。結構そういうとこが」



中村は、元高校教師で、なぜかバス・ドライバーになっている。

賭け事が好きなので、そのせいかも・・・・なんて言われていて。




愛紗「でも、そこまでしなくてもいい、って言ってるけど。会社は。

第一、運転席を離れていてバスが動いたら大事故になるし。」



そう、時々ニュースになるが

大抵は、小さな貸切バス会社で

運転手は委託。


規制緩和で、バス事業が届出になったせいで

いろんな会社が参入した、そのせいだった。


事故が連続して起き、また規制強化になったり。




「特急が乗り放題。ごーじゃすーぅ」と、友里絵。



「いいでしょ」と、愛紗。



うん、と、菜由、由香。



「普通の列車も乗れるの?」と、友里絵。


「そりゃそうだよ」と、由香。



「そーなんだぁ。だけどさ・・・なんで、「西」鹿児島なんだろ。

お隣の駅が鹿児島なのに」と、友里絵。



菜由は「うん。列車の終点だったから、なんだろうけど。そういう事ってあるね。

車庫がこっちだったから」


愛紗「南宮崎は、宮崎駅の方が賑やかだけど」



友里絵「いろいろあるんだね。」




由香「ほら、大岡山だって。車庫行きのバスがお客さん乗せていくから。

結構乗るじゃない。」



友里絵「あー、そうだねー。市民病院で降りないで、そのまま車庫へ行くもんね。

便乗の時」




愛紗は、その話をするとどっきりする。


ずっと前の、思い出があったから。




菜由が「そうそう!ガイドの研修の頃。お昼休みに自転車で

二人乗りして行った事あったじゃない。コンビニ。」


愛紗は「そうだっけ?」




菜由は「そう。あの時、回送の深町さんのバスが来て。向こうから。

せまーい田んぼ道だから。転んじゃった事」


愛紗は「あー、あの時ね」




回送ルートは狭いので・・・・

市民病院の脇の、田んぼ道で。

バスが待っててくれたので、焦って。


でこぼこ道の自転車乗るのは、慣れなくて。

オマケに二人乗り。



きゃー、とか言って。

転んで。



「あの時も、笑ってて。あの人。

バス降りてきて、起こしてくれたんだよね」と、菜由。




愛紗「なつかしいね」遠い、遠い、昔の話のように思える。


深町は担当車を、UDの7953に変わって。


そのバスも、有馬が横浜営業所から調達してきた

少しだけ綺麗な中古だった。



それでも、まだ契約社員で、経験の浅いドライバーに

比較的新しい、空気シフトのバスを当てるのは異例の事だった。



まあ、深町の場合は一度入社して辞めているので

通算では、経験が浅い、と言う事もないのだけれど

それを、やっかむ人も多かった。





菜由は「あれって、わざと転んだの?」


愛紗「まさか」



そんな気持は無かったけど・・・・・。

どこかで・・・・


可愛く。


ありたいと思っていたのは、あるかもしれなかったな、と

思ったりもした。









「隼人って、なんか人の名前みたい」と、友里絵。


「そだね」と、由香。


「ピーターソン隼人」と、友里絵



由香「あー、なんだっけそれ。」



菜由「漫画だよ」



由香「あーそうだ!レース漫画の」



友里絵「お父さんが読んでた。」




由香「友里絵の父ちゃん漫画好きだよね」



友里絵「そーだよぉ。あたしの名前も北斗の券からだもん」


「拳だって」と、由香。



友里絵「漢字だめー。ははは。それはいいっけ。」


菜由「ユリアか」



友里絵「そう。最初ユリアにしたかったんだけど、おかーさんに反対された。

漫画のキャラなんて!」って。



菜由「ははは。今じゃありえないな」



由香「そーだねぇ。ララちゃんとか、キキちゃんとか」


愛紗「いるの?そんな子」



由香「いたよー。ほんと。どっちも当て字だけど」



菜由「愛紗も当て字じゃない?」



愛紗は「そう。お父さんが考えたとは思えないなー。」



友里絵「なんか、ミュージシャンのおじさんがつけたとか、伯母さん言ってたね」



愛紗「うん、でもわたし、知らないの。その人」




菜由「もしかして・・・・そのミュージシャンの人がホントのお父さんだったりして」



愛紗「まさか。顔もだって、わたし。似てるもの。両親に。」



由香「タマちゃんだったりして」



友里絵「それは・・・・あ、でも有り得るね。25歳違うって事はさ・・・。」



愛紗「お母さんと、その人が恋人だった?」



由香「でも、タマちゃんってそういう事する人じゃないね。」




友里絵「そりゃそうだけどー。迫られて仕方なく、とか。」


由香「そりゃオマエだろ」





友里絵「でも、なーんも無かった。」




菜由「それは、コンビニのキッチンだったからでさ・・・そうじゃない場所だったら。」




友里絵「有り得るかなー。あたし、失敗したかなー。ははは」



由香「うまくやってりゃ、今ごろ学者の奥さん!」



友里絵「タマの腰か」



菜由「ははは、上手い!タマちゃんだもんね。おーい、座布団2枚!」



友里絵「手をあげて、横断歩道をわたりましょー」


由香「松崎真か」



菜由「ふるいなー。その後は・・・なんだっけ。ずーとるびーの。」



由香「山田くん」



菜由「そうそう。今は誰がやってるんだろね。」







賑々しく話す、4人。だーれもいない車両なので

気兼ねもない。






でも、愛紗は、なんとなく・・・その命名者が気になったり。




「そういえば、聞いた事なかったなぁ」



「何を?」と、菜由。


「わたしの名づけ親」



友里絵「あ、ごめんごめん。ネタにしちゃって。じょーだんだから。ほんと。」



友里絵は人文字でJODAN、と。歌いながら(笑)。



菜由「おもしろい!あんたが大将!」


友里絵「それもやるかー」







特急「はやとの風」は、そろそろ出発だ。

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