第188話 friends and strangers

「はっ」と、気づく。本当に眠ってしまった深町は

まだ、新幹線が小田原に着いていない事に安堵。


「よかった」と、思う。


その僅かな間、夢を見ていたような気がする。

バスに欠乗、代行を出して貰った、そういう記憶だ。

彼自身は、寝過ごした事は一度も無く・・・・。


指令の野田曰く「鉄人だよ、あれは。人間じゃない」と。


普通、寝過ごし、遅刻は何度かあるそうだ。

そのくらい、過酷なのである。


21時に勤務解放ー翌朝5時。なんてのは楽な方だ。

それでも、実際には21時30分ー4時30分くらいになる。


通勤が片道30分でも・・・22時ー4時である。

その間に入浴ー食事、では、寝る時間は4時間あるかどうか。


それもこれも、みな不正な事である。

(現在は禁止になったが)。



愛紗たちが、安心して生活が送れないのも、

深町が、将来に希望を持てないのも。


あの、心を痛めた子供たちも、そういう人たちが作ったのだろう。



みな、その「不正」が原因なのである。


法を逸脱しているのに、正さなくていいと思う人。

それを利用して、人を貶めて喜ぶヘンな人たち。




深町自身は、戦う人ではなく

面倒だから関わりたくない人、である。


「昭和だったら、こんなこと無かったなぁ」



でもまあ、大岡山にはまだ「正義」がある。

それが無ければ、事故になってしまうから、だが。




深町が、遅刻が無いのも「迷惑を掛けてはいけない」と、思う心だが・・・。

例えば、研究所ぐるみで不正をしていたら、正しい事をしていると

「迷惑」になってしまうので

そういう所には、居られない。


そういう事も随分あった。


今の、子供のいじめと同じようなもので

集団で嘘をついていると、一緒になって嘘をつかなくては

「皆に迷惑を掛ける」事になる。



バス・ドライバーにはそれがないので

真っ直ぐな人が、残る。

嘘や誤魔化しが通用しないからだ。















お部屋に戻った友里絵たちは、美味しくご飯をいっぱい食べて「ちょっと食べすぎたーな。」



「とても」と、菜由。


「太るね」と、由香。



「わたしも」と、愛紗。



「これで幾らなの?宿泊費」と、菜由。



「さすが主婦」と、由香。



愛紗「職員は3000円」



友里絵は「えー、あれで?」とっても、そうは思えない。


由香は「10000円コースくらい」



愛紗は「当たり。ビジターだと10000円」


菜由は「そうだろうねー。そのくらいの感じ」



何と言っても、贅沢な使い方である。パスタのお皿の代わりに

チーズをひとつ、そのまま使う。

使いまわしは出来ないし。

香りと、味。それが、パスタそのものの熱でチーズから移るのも

料理のうち、であるから

古いチーズでは無理だ。



きびなごの刺身にしても、新鮮でないと

特有の癖が出てしまって、料理にならない。

産地がすぐ近くなので、可能なメニュー、だったりもする。



それらが食べ放題なので、食材も大量に必要である。しかも生鮮品が多い。




「関東だったら30000円コースかなぁ」と、友里絵。



「そうかもね。行ったことないけど、そんなに高いとこ」と、由香。




愛紗も「時間ないから行けないし」






「そーだなぁ。結婚したって愛し合う暇もないよ」と、友里絵。




「誰と結婚するのよ」と、由香。



「それもあるけどさ」と、友里絵。ははは、と、笑う。




「そーいえばさぁ、あの、ゴジラの娘がさ「セフレでどう?」って

指導の、誰だっけ、あの声のでかいの。」と、由香。



友里絵が「有賀だっけか」



由香は「そんな名前だっけ。あれと、さ、滝さんとかと。勤務終わった

タマちゃんに言ったんだって。そしたら「いえ、いいです。眠いから」

だって。」



と、笑って。



友里絵は「そういうのを、男と一緒に言うって事はさ・・・。」



由香は「まあ、あいつらはそういう連中なんだろうね。タマちゃんと

自分らが一緒だと思ってるから。」




友里絵「不良品、返品か」



由香「そうかもね」と。




菜由も「そういう事って、そんなに大事だと思わないけどね。」



愛紗もそう思う。けど、ちょっと恥ずかしいので、言わない(^^)。





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