第150話 12D、杉河内通過!

「ゆふいんの森」は、豊後森を出発。

閑散とした郊外から、すこし山間いに入っていく。


つぎは、北山田駅だけれども、ここも通過だ。





「愛紗はさーぁ、優しいひとたちに囲まれて育ってきたから、そのひとたちの中で

頑張って褒められて、嬉しい。それで無理しちゃって生きてきて。

どっかしら、ストレスがあって。でも、暴走も出来なくて。

それが、結婚とか、そういう話になると流石にもう「嫌だ」と。

それまで我慢してきたから、爆発した。


だけど、大岡山に行ったって、その癖が抜けないから。


「誰か」の為に何かしたい。


そう思ってるのね。だから、何か、他の「誰か」を見つけるか・・・

自分の為に生きるか。


そうすればいいんじゃない?」と、菜由は一気に。





「そうなのかな」と、愛紗。



「そうよ。私も少し、そういう所があるもの。それで鹿児島に戻らないで

大岡山で結婚した」と、菜由。





「あいしゃはさ、も少し楽しまないと」と、友里絵。




「何を?」と、愛紗。



「いまを」と、友里絵。




「楽しんでないかなぁ」と、愛紗。



友里絵は「いっつも、なんか悩んでて。可愛いけどね」






「ゆふいんの森」は、断崖の間のような谷間を通ったかと思うと

そこが、天ヶ瀬駅だった。



有名な温泉場なので、一応、「ゆふいんの森」も、停車するが


単線で行き違いができないので、ほんの少し。



高速道路の高架が隣にあり、天ヶ瀬駅は宙に浮いているみたいに感じられる。


川沿いに温泉場が結構あり、風情のある、いい温泉だ。




「温泉もいいねー。」と、友里絵。



「出たな、おやじギャル」と、由香。



「死語」と、友里絵。



「そうかも」と、由香。




天ヶ瀬での乗降はなく、ドアに立っていたCAも

すぐにホームから車両に乗り「乗降、終了!」



車掌が笛を吹き、ドアが閉じられる。




坂道なので、ちょっと重そうに列車は走り出す。





がらがらがら・・・と言う、ディーゼルエンジンの轟きが山間いに響く。



高速道路を通る車も少ないようだ。





愛紗は「私、どうしたらいいんだろう」




菜由は「まあ、女の子ってそうだもの。誰かに褒められたりする

習慣で生きてるから。」



「でも、菜由はさ、石川さんに出会えたから」と、愛紗。




菜由は「偶然ね。良かったよ、ホント。そうでなかったら・・今頃どうなってたか」







列車は、坂道を登り切ると、こんどは下り。



断崖に挟まれた滝が、車窓左手に見える。


車窓の右手も元は、断崖だったようで


間に、川。




「あー、滝!、降りたいなー。」と、友里絵が言ったが


この駅、杉河内は通過である。




「すごい景色があるね」由香はびっくり。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る