第94話 1列車、出発!

由香たちのことを、新幹線の車掌さんは

指令に報告、1列車「富士」を待たせるように伝えた。


「指令、こちら762A車掌」


「762A車掌、どうぞ」



「762Aより、東海道線1列車への乗り換え客あり。

2名。1列車の抑止願いたい。どうぞ。」



「こちら指令。762A車掌、了解」


その指令が、東海道線の指令に電話で伝わる。


新幹線とは別なのだ。



「こちら新幹線指令。浜松駅にて762Aより

東海道本線1列車への乗り換えあり。2名。抑止をお願い致したい。」と。


在来線側の指令は「了解。」



在来の指令から・・・・。



「1列車車掌、1列車車掌、こちらは指令。どうぞ。」


9号車に居た、日野車掌は入電に気づく。


そろそろ、天竜川を越えて、浜松に入る辺り。



「指令、1列車車掌です。どうぞ。」



「1列車車掌、こちらは指令。762A列車からの乗り換え客2名確認。

乗降確認まで抑止する。どうぞ。」



「1列車車掌、了解。」



・・・新幹線から「富士」に乗り換えるのは珍しいなぁ、などと

日野車掌は思う。



逆は多いんだが。






その頃、新幹線762Aは、浜松駅に到着。


若干の遅れ。


友里恵と由香は、かばんを抱えて。

「さ、降りるよー。待っててね。愛紗。」と。



なんとなく、乗り遅れそうで。落ち着かない。



列車が速度を落とす。



止まる。


赤いランプがドアの上に点滅し。ピンポン♪。



プラグ・ドアがロックを外し、すっ、と開く。


「それゆけー。」と、友里恵は駆け出す。


由香は「走んなくても大丈夫!」と言いながら


親友の後を追った。


11号車だから、階段まではそんなに遠くない。



「エスカレータなんて乗ってられない!}と

友里恵は、階段を

バッグを抱えて駆け下りて。


乗り換え改札。



携帯をかざす。



赤いランプが点いて。「あ、あれ?」



由香は、となりの自動改札を通り


「どしたの?」


友里恵は「通れない」



改札掛がやってくる。


「どうしました?」



友里恵は困って「『富士』が発車しちゃう!」と言うと


改札掛は、「連絡します」と、駅の電話で、駅長に


「新幹線改札です。東海道線1列車に乗り換え客あり。改札機トラブル。

抑止をお願いします。」



駅長は「了解」



もともと遅れている1列車なので、乗り換えを考慮しないとならない。



そういう理由もある。


普段なら、おそらく・・・定刻発車だったろうから

友里恵はラッキーだった。




「大丈夫です。待ってますから」と、若い男子駅員はにこやかに


友里恵のケータイを見る。



「チャージが足りないんですね。」と、にっこり。



新幹線の料金は高いのだ(笑)



「由香、ごめん。」と言いながら

改札の機械でチャージしてもらって」


自動改札、通過。



緑のランプが点いて。


「ああ、よかったーぁ」



由香が「アホ、ドジ」と、笑って



まだ夜半で、乗降客も結構あるが

バスガイドの制服のままのふたりなので


笑顔で見ていたり。




さあ、急ごう!。


駆け出して、東海道線ホームへ。



改札掛は駅長に「こちら新幹線改札。1列車への乗り換え客は

通過しました」


駅長は「了解」


東海道線ホームにいる駅員に、無線で伝える。





浜松駅は、新幹線と東海道線が隣り合っているので

乗り換えは楽だ。


例えば東京駅だと、それだけで10分以上は掛かる。

その辺りもラッキー。




ホームに駆け上がると、ブルー・トレインはまだ停まっていて


「よかったー。」と、友里恵。


歩みを止める。



由香は「よかったじゃないよ、さ、乗ろう!」と。


友里恵も「あ、そっか」と。


かばんを抱えて。


「どっから乗るの?」(笑)。




「どこでもいいから!」と、由香は

8号車から乗って。


その様子をみていた日野車掌は「ああ、あの子たちだな。」



指令に連絡。


「こちら1列車車掌。新幹線762Aよりの乗り換え客は乗車。

他、乗降なし。」



「指令、了解。」


指令は、出発信号機を青に。




列車最後尾にいた別の車掌が、ドアを閉じる。


空気の音がして。折り戸がばたり、と閉じた。



「出発、進行ー!」


日野車掌も信号機を確認。



機関士も、最後尾車掌から電話で連絡を受け

「乗降完了、出発!」


機関士も「了解。」



出発信号機を確認。「出発、進行!」




機関車、EF66-54号機の機関車ブレーキは閉じたまま

客車のブレーキを解放する。


客車の前からブレーキが緩むので


モーターに電力を僅かに与え、機関車のブレーキを緩めると

連結器の僅かな隙間が延びていく。


伸びきった辺りで走り始めると、スムーズに走り始められる。


機関車の、高等な運転技能であるーーー。





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