3.戸惑い

 そこはやはり、寒い。夏伊は手短に佳宮に説明する。すると、佳宮は「……良かったな」と一言言って、背中を叩かれた。


「なにするんだよ……!」

「神板さんの事、……好きなんだよ、おれ」


 突然の告白に、夏伊は言葉が出てこない。


「神板さん、優しくて可愛いんだよ。ずっと見てても飽きないし……」


 そこで、佳宮はうつむく。


「でも、お前と赤い糸が繋がってるなら、仕方ないな……、おれは諦めるから……!」


 そう言って、夏伊の肩を掴み、こう続けた。


「神板さんの事、頼んだぞ。それじゃあ、教室行こうぜ……」


 佳宮は腕をさすりながら、歩き出す。それについて、教室に戻るが、その間、夏伊と佳宮は無言だった。

 教室に戻ると、やはり、見間違いではなく、夏伊の小指と愛美の小指が赤い糸で結ばれている。それをジッと見ていると、「どうしたの? 何かあるの?」と愛美に聞かれた。夏伊は慌てて、誤魔化す。すると、愛美はニッコリと笑って「そう」と一言、言った。


(ミヤが言う通り、可愛いかも……、しれない)


 そんなことを考えていると、佳宮に肘をつつかれた。そして、顔を見ると、「可愛いだろ!」と言っているように感じた。


(好きな気持ちを簡単に諦められるわけ、ないだろ……!)


 そう思いながらも、自分の中に芽生えた気持ちに少しだけ、戸惑いを感じていた。

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