第136話


 2人がかりでラウラと戦い負けてから約2週間が経った。

 この2週間2人は常に魔力感知を使って生活をしていた。最初は苦戦をしていたが今ではなれた物になっていた。

 そして予定ではカイ達が王都に戻るのは1週間後に迫っており、今はいつも通り3人で晩御飯を食べ終えてゆっくりしていた。


「2人ともちょっと話がある」


 2人はラウラの方に顔を向ける。ラウラは2人の顔を見た後で目の前にあるティーカップを持ち上げ一口お茶を飲む。


「今朝手紙が届いて、帝国で問題が起きたから協力してほしいって書いてあった。早ければ明日にでも向かいたいと思ってるんだけど、2人はどうする?」


 ラウラの問いかけにミカは考え出す。


「俺はミカが帰るときに一緒に帰るよ」

「分かった。ミカはどうする?」

「明日王都に戻ります。早くお母さんに会いたくなりました」

「ん。急でごめん。次に来た時は今回よりもっと修業しよ」

「はい!お願いします!」


 急遽1週間も早く王都に帰還することが決まった。




「2人とも気を付けて。いつでも来て良いから」

「分かった。次の長期休みまでに絶対に強くなってくるから」

「私もです!雷纏って攻撃できるようにしてきます!」


 カイとミカは家の前にいる。ラウラもこの後すぐに出るために一緒になって出る準備をしていたが、先に2人の準備が終わったため、先に出ることになった。


「これ持ってって」


 ラウラが取り出したのは、前回ミカが怪我した時に飲んだ回復薬が入った瓶だった。


「念のため。骨折までだったら治るはず」


 カイは瓶を受け取り袋の中に入れる。


「ありがとう。じゃあ行ってきます」

「ありがとうございます。次の長期休みも絶対に来ますね!」


 カイとミカが都市に向かって行くのを見届けた後でラウラは急いで帝国に向かう。




 森の出口前でカイとミカはどうやって都市を出るか考える。

 行きの時に問題を起こしているため、仮面とローブは着れない。そして、カイが変装をしないでいるのもマズイ。


「路地裏通って検問所まで行く?」

「逆に人が多いほうがいいかも。紛れればバレる可能性が減る」

「あの人を見つけたら、急がずに顔を見せないように気をつければ大丈夫だね」

「最悪の場合は魔法を使って逃げよう」


 作戦が決まったところで森から出ることが出来たため、急いで大通りに向かう。

 大通りは以前来た時と変わらない盛り上がりを見せており、貴族が正体不明の誰かに傷つけられたことなどなかったかの様に皆が過ごしている。

 これにはカイもミカも驚き、話しを聞くために露店で軽食を買うついでに話しを聞いてみることにした。


「へいらっしゃい!ホーンラビットの足揚げがおすすめだよ!少し待ってくれれば揚げたてを出すよ!」

「じゃあ、揚げたて2つで」


 店主はカイに言われ、ホーンラビットの足を箱から出し、目の前で上げて行く。


「ところで、数週間前に騒ぎがあったって聞いたんですけど、何か知ってますか?」

「あー、そんなことあったって知り合いが言ってたな。でも内容は教えてくれねぇんだよな。わりぃな。ほい足揚げ2つ!」


 カイは足揚げを受け取ってからお金を渡す。


「あぁ、そうだ。あんちゃんたち、数日前に王都から騎士達が来てたぜ?さっきあんちゃんたちが言ってたことに関係してんじゃねぇか?」

「教えてくれてありがとうございます」


 長居は良くないと思い、2人はいそいで人混みに紛れて検問所に向かう。


「おい!あんちゃん!ったく、まだ続きがあるってのに」


 店主がまだ何か伝えようとしていたが、既にカイ達はいなくなってしまっていた。




 検問所に着いた2人は審査が厳しくなっていたかと思ったがそんなことは無く、以前と変わりなく通ることが出来た。


「おかしくない?3週くらい前のことだけど、貴族の嫡男が大怪我を負わされたんだよ?普通だったら厳しくするはず…」

「…王都に急ごう。白ローブさんに調べてもらった方が良いと思う」


 帰りはゆっくり帰る予定だったが、急いで王都に向けて歩き出す。




 急いでいたため野宿は1度で済み、カイ達は王都の検問所に朝早く着くことが出来た。

 そして、カイ達は検問所を見て驚いた。

 検問所の前に馬車や冒険者などが長い行列を作っていたのだ。急いでカイ達も急いでその列に並ぶ。


「お、若いの!驚いたろ!」


 暇を持て余していたのか、前に1人で並んでいた冒険者がカイ達に話しかけて来た。


「はい、驚きました。何か知ってますか?」

「なんでも極悪人が出たらしくてよ。兵士達が馬車の中身と持ち物を厳しく取り締まってんだ」


 極悪人と聞いて、カイとミカは嫌な予感がした。


「どんな人か分かりますか?」

「いやー、兵士に聞いても教えてくれねぇんだよ。にしても隣の彼女可愛いな。いいなぁ俺もそんな彼女と冒険してぇよ~」


 冒険者が嘆いているのを2人は苦笑いしていたが、内心ヒヤヒヤしていた。バーシィ領で犯人が見つからなかったため王都でも調べることになったのだと思った。カイは冒険者黄昏ている間にミカに小声で話しかける。


「ミカ、袋渡して」

「え、でもこれの中には…」

「俺だったら調べられないかも」

「…いや、私が持ってるよ。調べられそうになってもアルゲーノス家の名前を使えば大丈夫のはず」

「でも、確実じゃないよ」

「おいおい、俺が崩れてる間に彼女とイチャイチャか?羨ましいなぁ」


 元に戻った冒険者はカイにやたら絡んでくるため、ミカに袋を渡すように言うことが出来なくなってしまった。


 並び始めてから40分たち、ようやく前の冒険者が検査を受けていた。


「ミカ、袋を渡して!」

「大丈夫だよ。私が持っとく!」

「次、並んでるから早くしろ」


 カイは呼ばれてしまい袋を受け取ることが出来なかった。渋々前に出て冒険者カードを渡す。


「冒険者だな。ん?お前、学生だな。学生証も出せ」

「はい?わかりました」


 カイはポケットに入れていた学生証も出す。


「…間違いないな。お前ら捕まえろ!!」


 検査を担当していた兵士がそう叫ぶと、奥からたくさんの兵士が出てくる。ミカが近づこうとしたが、カイはミカと視線を合わせ首を横に振る。


 最初に近づいた兵士がカイを無理やりうつ伏せにし抑え込む。


「カイ=クノス、帝国の誘拐の容疑でお前を捕まえる」


 カイは枷で拘束されると、大量の兵士が周りを囲み、城にある牢屋に連行された。

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