第99話


 カイとミカがラウラの下で修業している時、アルドレッドとセレスは帝国の城の会議室に来ていた。

 今回アルドレッド達が招集されたのには意味があった。当初王国と帝国は生徒達による模擬戦だけする予定だった。だが最近になって王国側から『和平を結ぶための対談をしたい』と言われたのだ。その上『その間生徒達は生徒達で授業に参加して交流を行わないか?』と言う提案が王国から出されたのだ。

 これには帝国側は悩んだ。今回帝国が王国に行くメンバーは、皇帝とその皇帝を守る団長を含んだ近衛騎士15名、それから対抗戦に出る生徒10人、その生徒の引率として学園長と教師2人、最後に何かあった時に生徒達を守るために騎士が20名だけだ。

 本当に和平を結ぶつもりならな帝国としても嬉しいところだ。だが、これが偽りだった時この数の兵士で生徒を守れるか不安がある。それならば、連れて行く兵士の数を増やせば良いとなるが、数か月前、王国と模擬戦をすることが決まる少し前から帝都の周りでモンスターがちょっとずつ増加しているのだ。その調査や警備のためにこれ以上増やすのは難しい状況になっていた。数ヶ月調査をしているが、未だに原因が分からず調査が難航しているのだ。しかもこの頃は出てくるモンスターの進化体も出てくるようになったため、警備に回される兵士や騎士の数が増えているのだ。

 ともかく、このまま王国と和平の対談をしても良いのか決めかねたため、王国を内部から調査している3人のうち2人を呼び戻したのだ。


「~以上が私たちが調査して得た情報です」


 会議室には今回護衛に参加する近衛騎士団長と副団長。皇帝と皇后、第一皇女、そして今回の対抗戦に参加することになっている第二皇女のルナがいた。全員がアルドレッドからの報告を黙って聞きた後、最初に口を開いたのは宰相だった。


「現時点では敵対するか協力するか分からないですか…」

「調べ切れず申し訳ありません」

「2人とも顔をあげなさい。あちらに攻める口実を作らせないためにもこれ以上追うことが出来ないのは皆が分かっています」

「近衛騎士団長が言う通りですぞ。今すべきはこの情報から相手の思惑を考えるのが先ですぞ」

「でもにわかには信じられないですね、モンスターを作るなんて」

「その男達に遭遇したのは1回限り、しかも遭遇したのがアルとセレスでは無く、王国の生徒。これは信憑性がかなり低いぞ…」

「私もそう思う。そもそもその生徒は信用できるの?」


 皆が最後にアルドレッドが報告した『生徒の1人が遭遇したローブ男がモンスターを作っている』ことを信用していなかった。特に副団長、第一皇女、ルナが信じていなかった。


「ですが、その作ったと言った男達、今のモンスター増加を考えたら関係しているかもしれませんな」

「そうですね。この頃のモンスターの増加は異常すぎますから」


 そんな中、宰相と団長はローブ男達が今回のモンスター増加に関係していると踏んでいた。

 その後はアルドレッド達が持ち帰った他の情報に基づいて会議が進んだ。




「今日の所はここまでにいたしましょう」


 宰相の声掛けで会議が終わりになった。会議室を出たアルドレッドとセレスの前に第二皇女のルナが現れた。そのためアルドレッドが挨拶する。


「ルナ様お久しぶりでございます」

「もう。なんでそんなに他人行儀なの」


 プンプウと言うような効果音が聞こえてきそうなほどに頬を膨らませて怒るルナを見てアルドレッドもセレスも笑ってしまう。


「お久しぶりですね、ルナ様」

「セレスー、アルがいじめるー」


 ルナは嬉しそうにセレスに抱き着く。セレスはそんなルナの頭をなでながら「出そうですね」と返しながら頭をなでる。

 数分間頭をなでてると、満足したのかルナはセレスから離れる。


「2人とも、さっきのモンスターを作ったってゆうローブ男は本当なの?」

「本当ですよ。現に他の生徒達もそう言ったことがあったと報告が上がってますから」

「あぁ、それに俺たちはあいつが嘘をつくとは思ってないからな」

「信用できるの?」

「出来る。ルナ様もあいつに会えば分かる」


 何故信じられるか言わないアルドレッドに対してルナは不思議そうにしたため、セレスがどうして信じられるか話そうと思ったところでアルドレッドが忘れていたことを話すように言う。


「そいつは俺よりも強いぞ」


 これを聞いたルナはそれが本当かどうか知るためにセレスの方を見る。


「そうね、全力を出されたら私たち2人でも勝てないわ」


 これを聞き、ルナの顔は驚愕で染まる。

 アルドレッドとセレスは近衛騎士になってからずっとルナの護衛をしている。ルナ自身も強くなりたいと思っていたため、アルドレッド達が護衛に着くよりも前から訓練していた。そして2人に指導してもらってからルナは格段と強くなった。

教えてもらっているからこそルナは誰よりもアルドレッドとセレスの強さを知っている。そんな2人が2人がかりでも勝てないと言ったのだ。驚くのも当然だ。

だが、アルドレッドもセレスもこの話を掘り下げず、セレスが会話の内容を変える。


「セレス様、学園ではどのような感じですか」

「え、えっと学園は…」


 その後3人は移動しながらお互いの近況を報告しあった。

 数日間はるドレッドもセレスも帝国にいるとのことで、それを聞いたルナはとても喜んでいた。

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