第37話 VS海賊ウィリアムキッド 後半

 立ち上がると、少しフラフラした。

 だがまぁこれぐらいの方が冷静になれていい。

 九死に一生を得たと思えば、それはそれでラッキーだった。

 相手はとんでもないレベル差のある化物だ。

 これ以上攻撃をもらうわけにはいかない。

 やらなきゃやられる。


 《アイテムボックス》から[MP回復薬]を取り出して、MPを全快させる。



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 ロア・フォイル 19歳 男 

 称号:[ルンベルクのダンジョン踏破者]

 レベル:70

 HP:120/370 MP:1020/1020

 攻撃力:480

 防御力:65

 ユニークスキル:【アイテム作成】【魔法創造】

 魔法:《生活魔法》《火槍》《アイテムボックス(極小)》《豪火球》《投雷》《稲妻雷轟》《紫電一閃》《身体強化》


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 称号が[ルンベルクのダンジョン踏破者]になっているが、フォイルの方の称号の効果もちゃんと適用されているな。

 《身体強化》を最大の3倍で使うとどうなるのか見てみよう。



「《身体強化》」



 俺は一瞬だけ《身体強化》を使い、ステータスの上昇具合を確認する。


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 ロア・フォイル 19歳 男 

 称号:[ルンベルクのダンジョン踏破者]

 レベル:70

 HP:120/370 MP:990/1020

 攻撃力:1440

 防御力:195

 ユニークスキル:【アイテム作成】【魔法創造】

 魔法:《生活魔法》《火槍》《アイテムボックス(極小)》《豪火球》《投雷》《稲妻雷轟》《紫電一閃》《身体強化》


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 どうやら《身体強化》で上昇するのは攻撃力と防御力だけのようだ。

 そして思った通り、ミスリルの剣を装備した分も含まれるみたいだ。

 《紫電一閃》の必要ステータスの攻撃力500をミスリルの剣を装備した状態で満たしていたことから俺は《身体強化》の効果を予想することが出来た。


 それでもこのステータスでBランクを相手にするには少し心許ない。

 だが、やるしかない。


 討伐推奨レベル1000にレベル70が挑んでやるよ。

 ま、ただのレベル70じゃないけどな。


「ソニア、これから俺は接近戦をしかける。援護を頼む」

「ロアさんが接近戦!? ……分かりました。精一杯援護します!」

「──《身体強化》」


 《身体強化》を使える時間はMPの値を見るに33秒が限界だ。

 33秒が経過する前に亡霊と距離を取らなければならない。

 そしてソニアが亡霊をひきつけてくれている内に《アイテムボックス》から[MP回復薬]を3本取り出して一気に飲み干す。

 そしてまた30秒全力で戦う。

 これが今回の作戦だ。


「はああぁぁっ!」


 亡霊に近づいて剣を振るうが、それを平気な顔で亡霊はカトラスで受け止める。

 一発で攻撃が当たるとは思っていない。

 何度も斬り込む。

 そのための《身体強化》だ。


 攻めの姿勢を崩さない。

 だが、反撃を貰ってはそこで終わりだ。

 俺にはもうあとがない。

 亡霊との剣戟が長引くと、不利になるのは俺だ。


「ソニア!」

「はい! ──《自己標的》」


 そんなときはソニアにターゲットを移してもらう。

 俺も詠唱中でなければ自由に動けるため、一旦戦線離脱をして再び、亡霊に斬りかかる。


 ザシュッ!


 よし、攻撃が当たった。

 この調子でソニアと連携して何度も攻撃を当てていこう。


「ソニア、MP回復をする! 時間を稼いでくれ!」

「分かりました!」


 MPが無くなってきたら、無理せずに退く。

 経過時間は常に意識しなければいけない。


 すぐに[MP回復薬]を3本飲んで戦闘に戻る。

 これを繰り返していくうちに段々と亡霊の行動が読めてくるようになってきた。


 そして同時に《身体強化》を使うタイミングも最適化されてきた。

 ずっと使っているのではなく、身体を動かすときにだけ詠唱する。

 幸い《身体強化》は詠唱時間も0秒でクールタイムも無い。


 亡霊の動きが読めるようになってきたこと、そして秒数を正確に無意識のうちに把握できるからこそ可能にしている。

 と、自己分析。

 秒数を正確に把握出来ているのは、今まで魔法を使う際に時間を逆算してタイミングをはかってきたことが活きているのだと思う。


 この試みの結果、離脱する機会を大幅に減らせられた。


 ソニアの息が切れてきたため、これ以上負担をかけて先にダウンされることを避けたかったので、かなり効果的だ。


 魔物だからこそある一定のリズム、狙い、動作。

 亡霊が人型だからこそ、それを読むのは他の魔物よりも容易だったかもしれない。

 行動は賢いけど、所詮魔物だ。


『海賊ウィリアム・キッドの亡霊』との剣戟で俺は次第に優位を広げていく。


 そして、トドメをさす絶好のタイミングがやってきた。

 俺の剣が亡霊の腕を斬り落としたのだ。

 カランカラン、とカトラスが地面に転がった。


「ソニア! 今だ! 亡霊に飛びつけ!」

「はい!」


 ソニアが亡霊に飛びついた。

 亡霊はソニアの拘束から逃れようと抵抗する。

 斬り落とした腕は再び生えて、ソニアを引き剥がそうと必死だ。


「──《紫電一閃》」


 紫電がミスリルの剣を纏う。

 詠唱時間は2秒。

 たった2秒だが、この亡霊相手ではとんでもなく長い時間のように感じた。

 しかし、この状況なら2秒の時間を稼ぐことが出来る。


「きゃっ!」


 亡霊はソニアの拘束から逃れて、俺に向かって襲いかかってくる。

 亡霊の蹴りの威力は絶大だ。

 当たれば俺が負けるが──。


「残念だったな、2秒経過だ」


 亡霊に紫の一閃が走った。

 しばらく亡霊は立ち尽くして、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 その様子に力はない。

 数歩前に進んでから、海賊ウィリアム・キッドの亡霊は前のめりに倒れた。



『自身よりも強い敵を倒したため、経験値が加算されました』

『レベルが400上がりました』

『[キャプテン]の称号を獲得しました』


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