第9話 『フォイルのダンジョン』の最下層へ

【アイテムボックス(極小)】のアイテム収納上限は1種類につき100個だ。

 だから俺は[MP回復薬]を100個集めようと思った。

 備えあれば憂いなしだ。



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【1日目】


 [魔石(Eランク)] ×12


 [MP回復薬] ×12  合計 ×44



 例のタンクの女の子のパーティを今日も見かけた。

 名前なんだっけ……あぁ、ソニアか。

 ソニアは昨日と変わらず、怒られている様子だった。

 1階層だけでなく、次の階層にも進んでいたので、多分ダンジョン内をよく探索するのが目的なんじゃないだろうか。


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【2日目】


 [魔石(Eランク)] ×20


 [MP回復薬] ×20  合計 ×64 



 他の冒険者に遭遇することなく狩りが出来たので、効率良かった。

 パーティの勧誘が今日は一つも無かった。

 順調にぼっち道を歩んでいるようでなにより。


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【3日目】


 [魔石(Eランク)] ×30


 [MP回復薬] ×30 合計 ×94



 魔物の行動パターンが読めてきたので、あまり隠れることなく積極的に狩ってみた。

 今までで一番魔物を倒せたけど、少し危ない気もした。

 油断は命取りである。

 慢心してはいけない。


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 そして、4日目。


 今日は6体の魔物を倒した後からレベル上げを始める。

 下の階層に行けば、魔物が強くなるため、レベルが上がり次第、下の階層へ行ってみようと思う。



 サクッと6体を討伐して、



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【アイテムボックス】


 [MP回復薬] ×100


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 とりあえず[MP回復薬]の所持数は100個になった。

 正直お金も結構溜まってきたので、足りなくなったら普通に買ってもいいかもな。



 ──よし、それじゃあレベル50目指して、レベル上げ頑張っちゃおうかな。



 まず1体目は丁寧に倒す。

 今まで通り、安全な方法で《火槍》を詠唱。

 ホブゴブリンを一撃で倒す。


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが10上がりました』


 これで11レベル。

 俺は下の階層への階段を探しながら、魔物を狩る。

 魔法の扱いもかなり慣れたものだ。




『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが5上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが4上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが3上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』




 25レベルになったところで下の階層への階段を発見したので、進んでいく。

 現在2階層。

『フォイルのダンジョン』は全5階層のダンジョンだ。

 これはFランク、Eランク関係なく、どちらも5階層である。

 地形もFランクの『フォイルのダンジョン』と似ているため、あまり戸惑うこともない。


 《豪火球》を取得したら、こっちのダンジョンボスにも挑む予定だ。

 今日は最下層の結界前まで行き、ボスモンスターがどんな奴かだけ見ておこう。


 道中でレベルも相当上がるはずだ。




『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが2上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが1上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが1上がりました』


『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』


『レベルが1上がりました』




 最下層への階段を発見したところで現在レベルは40。

 下の階層の魔物は討伐推奨レベルがどんどん上がっていった。

 たぶん経験値も上の階層の魔物より多いのだろう。

 4階層では大体、討伐推奨レベルが60〜70だ。


 普通にいる魔物が骸骨剣士よりも強いって考えると、この短期間で凄いところに来れるようになったもんだ。


 俺は最下層への階段を降りて行き、結界の前に到着した。


 さてさて、こちらのボスモンスターはどんな奴かな?


 ……ん?


 結界の中では、一人の女の子がボスモンスターと戦っていた。


 あの子は……ソニアだ。


 なぜパーティは一緒じゃないんだ?

 たしかタンクって攻撃手段があんまり無いんだったよな。

 だったら尚更だ。

 お前はどうして一人で戦っているんだ?


 なにかソニアなりの考えがあるのかもしれない。

 少しの間俺は見守ることにした。


 ……で。肝心ボスモンスターは……『キングフロッグ』か。



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『キングフロッグ』

 討伐推奨レベル:120

 ランク:D

 《フォイルのダンジョンボス》


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 巨大なカエルの魔物だ。

 全長は目測で約4m。

 頭部の幅は、頭長よりも長い。

 後肢の水かきは非常に発達している。

 背面は鮮緑色で、淡赤色の斑紋がまばらにある。


 攻撃手段は発達した水かきを利用した蹴りと、ムチのようにしなる長い舌だ。


 見ている感じだと、ソニアは防戦一方だな。

『キングフロッグ』の攻撃をひたすら耐えているように見える。


 前見たときよりも動きにキレがない。

 体力が尽きてきているのか?


 そう思っていたところに『キングフロッグ』の蹴りをソニアはガードが間に合わず、直撃してしまった。


 ソニアは地面に倒れて、なんとか立ち上がろうと頑張っている。



 ……これは勝ち目なんてあるのか?


 このまま見ているだけだと、ソニアは死んでしまうんじゃないか?



 いや、これが冒険者って仕事だ。

 こういう危険に合うリスクを本人も承知の上だろう。

 だから俺が助けても余計なお世話だ。

 俺も誰かから余計なお世話を焼かれたくなかったように、ソニアもきっとそうに違いない。


 俺はダンジョンから引き返すために、階段を登ろうとした。

 そのとき、ふと思った。




 ……俺って本当に誰からも助けてもらいたくなかったのか?




 一つの疑問が頭の中をぐるぐると回っている。

 何度も自問自答している。

 俺は誰かから助けて貰いたかったのか……?




 いや、そんなはずはない。




 否定すればするほど、その疑問は大きく膨れ上がっていく。

 どうしてだろう。



 ……ああ、そうか。



 ……違う。


 ……違った。



 俺は助けてもらいたかった。


 でも、そんな都合のいい話ある訳ないと、自分に言い聞かせた。


 俺は誰からの助けも受けたくないと、自分でそう思うようにしたんだ。


 本当は誰かに助けてもらいたくて仕方がなかった。


 だから、俺は自分より格上の骸骨剣士と戦っても恐怖感を抱かなかった。


 今は魔物と戦うとき、少し怖いのに。


 今の方が強いのに、ほんと笑ってしまうな。




 俺は階段にかけた足を降ろして、振り返った。



 助けるのが余計なお世話?


 上等だ。


 俺は結界を超えて、キングフロッグと対峙した。



「《火槍》」



 放たれた《火槍》はキングフロッグに直撃するが、一撃で仕留めることは出来なかった。

 流石はDランクのダンジョンボスといったところか。



「えっ……あなたは……」



 ソニアは困惑した様子で俺を見つめていた。



「通りすがりのEランク冒険者だ。そこのボス、横取りさせてもらうぜ」

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