第7話 パーティ勧誘急増中
換金した金は昨日のものと合わせて、50000ムル手元にある。
こんなに金があるのは初めてだな。
昨日はいつもの癖でいつも通りの食事をしたが、今日は少し贅沢にいこう。
鶏肉と野菜のスープ、パン、干し肉、そしてエール酒が今日の夕食だ。
くっ、なんて贅沢なんだ。
食べるのが少し躊躇われる。
俺はこんな豪華なものを食べていいのか? と。
今までの生活がギリギリだったので、こういう風に贅沢すると少しだけ不安な気持ちになる。
まぁ、そんなの最初だけで一口食えば気にしないのだが。
うん、美味い。
周りを見ると、パーティを組んでいる冒険者達が多いな。
仲間同士で飯を食うってのに少し憧れを抱く自分がいた。
すると、二人の冒険者が俺を挟むようにして、両隣に座ってきた。
「なぁ俺達、前衛二人でパーティを組んでるんだけどさ、良かったらロアも加わらないか? 優秀な後衛を求めているんだ」
「お前、俺のこと無能って馬鹿にしてたよな?」
「ぎ、ぎくっ!? た、確かにそうかもしれないけど、昔のことは水に流そうぜ。な? お前も前衛を必要としているだろう? 俺達もお前を必要としているんだ」
バカにしてきてる奴の顔はいちいち覚えてないが、こうやって鎌をかけてみれば引っかかるもんだな。
「断る。今のところ前衛は求めていない」
「こ、この無能のロアが〜! 下手に出てると思って調子に乗りやがって〜!」
「ふ、悪いな。それにお前みたいな奴とは組む気になれない」
「ッチ! せっかく人が誘ってやってんのに、行こうぜ」
そう言って、二人は去って行った。
なんだったんだ一体……。
さて、冷めないうちにスープを飲んでしまおう。
「ここいいかな?」
スープを飲もうとしたそのとき、また声をかけられた。
そして俺の有無を聞かずに3人の冒険者が俺の近くに座った。
「なぁロア、短刀直入に聞くが俺達とパーティを──」
「組まない」
「はぁ!? 即答!?」
「すまん。後衛なら他を当たってくれ」
「てめえ! 調子に乗ってんじゃねえぞ! ダンジョンでくたばっちまえ!」
また捨て台詞を吐いて、去って行った。
やれやれ、やっとスープが飲める。
「ロア、良かったら俺達とパーティを組まないか?」
と、思ったらまたパーティの勧誘がきた。
……俺は無視して夕食に集中することにした。
◇
夕食を済ませて宿屋に帰って来た。
「酷い目にあった。まさか5組のパーティから勧誘されるとはな」
それだけ魔法使いという存在は価値が高いのだろう。
しかし、今ここでパーティを組むのは得策じゃない。
経験値が分散されて[MP回復薬]を作成する効率が一気に落ちる。
それに強敵と戦ったときに経験値が増加するのは、パーティを組んでいるときでも反映されるのか分からない。
俺が思うに自身よりも強敵である基準は、実力ではなく、レベルにあるのではないかと思っている。
実力だけで言えば、きっとボスだった骸骨剣士も良い線いっていたと思う。
どう考えても俺より強敵だ。
それで経験値が加算されないということは、多分レベルが関係しているはずだ。
なので、パーティで経験値が分散されるのならば、もしかするとパーティに一人レベルが高いやつがいた場合、強敵を倒してもボーナスが得られない可能性が高い。
俺の考察をもとに考えるならな。
パーティの勧誘を断った理由は主にコレだ。
……後は、あまり信用できない気がしたのだ。
今まで無能とバカにしてきた奴らが手のひらを返して、パーティに誘ってくるか?
普通ならしない。
でもそれが行われている。
俺が相手の立場なら、そいつを利用するためにパーティに誘うだろう。
「考えすぎかもしれないけどな」
まぁこの手のひら返しは、あんまり気分が良くないな。
どうせならずっとバカにしていてほしいものだ。
……んー、それもそれで嫌か。
そこら辺の感情は自分でもあまりよく分からない。
「寝る前に【魔法創造】にどんな魔法があるか調べておくか」
今のところ次取得する予定の魔法は《豪火球》だが、それ以外になんか良い魔法あるかな。
「……なんだこれ?」
ある魔法を見つけた。
魔法の名前を見ると、攻撃するようなものとは思えない。
気になったので、詳細を見てみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《アイテムボックス(極小)》
消費MP:0
消費レベル:25
効果:異空間にアイテムを収納出来るスペースを20種類まで作成する。1種類のアイテムの収納上限は100個。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
よく分からないけど、とにかく20種類のアイテムを収納出来るようになるのか?
しかも上限が100個?
……めっちゃ良いじゃん。
消費MPが0って絶対損しないし、取り得だな。
25レベルで取れるなら早めに取っておこう。
アイテム作成ともかなり相性が良い。
これは間違いなく《豪火球》よりも取得の優先度が高いな。
「よし、明日からは25レベルを目標にレベル上げを頑張ろう」
そう意気込んで、とっとと寝た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます