第16話 親里

午睡より起きたる夜の自室には酒瓶たおれて窓より冬が


夜半酒を求めおとなう店なべて醒めえぬ酔いは並べておらず


薄緑色のきっぷを手に取れば欠勤連絡するをも嬉し


痛みさへ今は感ず用もなし雑巾絞る両手のあかぎれ


霜朽ちを温むに如きは親里のあたたかきこと痛みを覚ゆ


「ねえ、かあさん」なんでもないよただじぶんがこどもにもどれてうれしいだけで

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