第30話 空港

栞とは距離はあるものの

今までにないほど落ち着いた気持ちで交際を続けている


私たちは幸せの真っただ中にいる


私はあれから3度

アメリカへ行った

本当はもっと会いに行きたかったけど

やはり距離が壁になる


まとまった休みがとりずらいので

行き帰りに時間ばかりかかって

実際に会えても1日か2日くらい


私たちはそれでも僅かでも会えることに・・・

お互いを思い合っていることが変わらないと言う事に

喜びを感じていた


月日が過ぎるのは早いもので

もうすぐ栞は卒業する

この間の話では

直ぐにこちらへ帰ってくるらしい


「悠ちゃん

俺、そっちに帰るから」栞


「そうなの・・・よかった

アメリカで就職するって言われたらどうしようって思ってた」悠


「そうなったら

悠ちゃんをこっちに呼ぶよ

そしたらずっと一緒でしょ」栞


「プロポーズみたいね」悠


「そうだよ」栞


他愛のない話

だけど嬉しかった

アメリカへ移住するのもいいかも


言葉はよく分からないけど

栞と居れるなら・・・


私は向こうでの生活を妄想したりしていた


栞の話では

こちらに帰ったら

ご両親の仕事を手伝うらしい


栞の家は学校を経営している

幼稚園・高校・大学が敷地内に一緒にある

かなり大きな学校


お爺さまが大学の学長を務め

お婆さまが幼稚園の園長

栞のお父さんは高校の校長


栞には兄弟がいる

双子なのかな?

同じ年の弟は浪人2年を経験し

2年生を二回していることもあってまだ大学生だけど

そのうち手伝うことになるから

栞はそこ手伝う気は無かったようだけど


大学卒業が決まったころ

お父様に戻って手伝うように!!と話をされたらしい


私はどんな理由で会っても

栞が会いたいときに会える距離に帰ってきてくれることが

何より嬉しかった


その日が待ち遠しい

毎日毎日、指折り数えていた


彼は無事に卒業し

帰ってくることになった


家族や友達には帰国日を一日ずらして報告した

一番に私と会うためだ


帰国日には涼太が空港へ迎えに来ると言っていたらしいのだが

一度、自宅に帰ってから両親に会って

それからうちの実家に挨拶へ行くと伝えたらしい


その日は家で帰国パーティーがある

私にも参加するようにとメールが来ていた


私は簡単に


”仕事だから

行けたら行くね”


と弟に返信のメールをした


彼が帰る日

私は空港近くのホテルを予約して

彼を迎えに行った


時間になり

胸が高鳴る


ドキドキドキドキ


栞の姿が見えると

私は彼に駆け寄る

栞もたくさんの荷物を押しながら

こちらへ歩いてくる


私たちはやっと会えた


栞は手荷物を大きな台車の荷物の上にポンと置いて両手を広げる

私は満面の笑みで勢いよく抱き着く

栞はぎゅ~っと力ずよく私を抱きしめる


「会いたかったよ」栞


私は喜びすぎて声が出ない

うんうんとうなずく


もう離れたくない


私は人目も気にぜづに何度も何度も栞にキスをした

二人だけの世界・・・

その時


「えっ?なんで?」


その声は私たちの世界にぐさりと刺さる様に入ってきた

私たちは声がする方を見る


そこに立っていたのは涼太と來未ちゃん

二人は化け物でも見たような顔でこちらを見ている

それはそのはず

明日帰るはずの親友と

それに絡みついている姉

意味は不明なはずだ


私たちだって

どうして涼太と來未ちゃんが目の前に立っているのか?

目の前にある事実ではあるけど

理解できないでいた


時間が止まった


騒がしい空港は沢山の人がいきかう

私たち4人を避けるように・・・行きかっていた






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