第24話 消えた消した
私は栞の連絡先を消した
部屋に置いてあった
栞のために買った部屋着も下着もカップも歯ブラシも
全部全部捨てたら
自分でも不思議なくらいに
彼と思い出は綺麗に無くなって消えた
きっとそう思うために
そうしたのだと自分でもわかっていた
もう振り返らない
あの夜から一年
私と早川は順調に恋を進めた
早川とは月に2度ほど会う
お互いの無理のないペース
彼とは休みが合わない時は
彼の部屋で夕食を食べる
そして、泊まった
彼は意外に料理も上手で手際も良い
私はお手伝いはするけど特になにもしない
彼の腕前を横から見ていることが多かった
けっこう甘やかしてくれるタイプのようで
そんな私を優しい目で見てくれる
休みに会う時はドライブへ行ったり
街へ買い物へ行った
普通の恋人
これが普通の恋人なのだと思う
ある日、私は風邪をひいてしまい会社を休んだ
社会人になって初めてだった
熱が高いので思うように動けない
私はママに電話をかけた
「もしもし・・・」悠
「久しぶりに娘からの電話があったと思ったら
酷い声ね」ママ
ママは笑いながら私をからかう
そうは言いながらママは優しくて後で来てくれることになった
2時間後
”ピンポン”
私はふらふらしながらロックを解除する
しばらくするとドアが開き入ってきたのは涼太と來未ちゃん
久々に会う
二人は飲みもと食べ物をっ数日分持ってきてくれた
「元気なさそうだな」涼太
「当たり前でしょ!病人よ」悠
「お姉さん、これ食べてくださいね」來未
來未ちゃんは優しくテーブルに買ってきた食べ物を出してくれる
「ありがとう」悠
「来てくれる男とか居ないの?」涼太
黙る私の表情をみて
「へ~居るんだ」涼太
涼太は嬉しそうに私の顔を見た
「心配して損した」涼太
「でも、こんな弱っているボロボロの時に会いたくないから‼️」悠
そう言って膨れる私をからかうように
「別に頼って良いんじゃねーの?
姉ちゃんの事を好きなら
頼ってほしいと思うよ」涼太
七つ年下の弟に
そんな大人びたことをそれなりの顔つきで言われるなんて
今まで思ってもみなかった
この子も成長しているんだ
感心していると
「あっそうそう
栞さ留学するってさ」涼太
「…そう…どこに?」悠
つい顔が曇る
「アメリカだったか?イギリスだったか?インドだったか?」涼太
「どこなのよ?」悠
「わかんねぇ
とにかくしばらく会えないからって
この前、家に挨拶に来た
あいつにとって
家は特別な場所だからってさ」涼太
なんだろう?寂しい
別にずっと会っていなかったのだから
状況は全く変わらないのに
そんなことを聞かされると
寂しい
最後に会ったときの
栞の悲しい顔を思い出す
「お姉さん、大丈夫ですか❓️」來末
來末ちゃんは
私の背中に手をあててくれた
二人から見たら
どうしてそんな顔になるのだろう❓️
って不思議だろうな…
私はすぐに顔に出るから…
私は二人が帰って
スマホを見た
もう、消しちゃったしな
連絡のとりようもない…
もしかしたら栞は
あの後、連絡してくれたかもしれない
知らない番号はブロックしているから
分からないけど
かもしれない
かもしれない
そんな想像をしていた
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