第10話 新生活
私は社会人になると同時に
一人暮らしを始めることにした
実家にいると何かと便利だ
必ず誰かいて寂しくないし衣食住も保証される
お金だってかからないから
いい事しかない
だけど私は社会人として
新しい自分を確立するためにも何としても一人で暮らすことを選んだ
正直に言うと
ほんの少しの冒険心もあった
パパは
「女の子だからお嫁に行くまでは家にいたほうが・・・」パパ
と心配してそうに若干反対してたけど
ママが意外とドライで
「一人で生活をする経験も必要よ
ありがたみもわかるわよ」ママ
とサラッと言うから
首を縦に振ってくれた
会社まで徒歩で20分の所に部屋を借りた
結構都会のキレイ目のマンション
せっかくだからこだわった
お風呂トイレ別
人が来た時に寝室が別のほうがいいから
1LDK
自炊はきっとあまりしないから
キッチンは狭くてもよかったけど程よくゆったりした感じ
収納には拘った
片付けが得意ではないから四角く部屋を使いたかった
リビングには
テレビ台+テーブル+ソファー
の三つ以外は置かない
これからここで私の新生活が始まる
家からは
衣類やバッグ靴だけを持ってきた
寂しくなった時に逃げ帰るシェルターとして
実家の自分の部屋はそのままにしておきたかった
ママが掃除をしてくれて
もちろん私も手伝った
パパと涼太と栞が荷物運びと家具の設置を手伝ってくれた
みんな手際が良くて
お昼ごろにはちゃんと暮らせるように
部屋は整った
パパがみんなを近くのそば屋へ連れて行ってくれた
引っ越しそばを食べる
「しかし大丈夫かな?オートロックと言っても
最近は物騒だから・・・」パパ
「大丈夫よ
ちゃんと気を付けるし」悠
「そうよパパ
そんなに心配ばかりしてたら
悠はいつまでも自立できないわ」ママ
「そうだよ
姉ちゃんなんか襲うもの好きいないって!!」涼太
「は?最後まで嫌なこと言うのね」悠
涼太はふざけた表情で私をからかう
「涼太も栞もたまに遊びに行ってやって
男の子が出入りしてたら少しは良いだろう」パパ
「そうね
そうしなさいよ
たまに泊りに行ったらいい」ママ
「嫌だよ!!姉ちゃんの家に行っても楽しくないし!!」涼太
「来なくていいわよ!!」悠
「喧嘩しないの!どうしていつもそうなるの?」ママ
「僕はたまに行きますよ
悠ちゃんのご飯食べに行きます」栞
「それは良い!嫁入り修行にもなるしね」パパ
「そうね、一人だとこの子は家事を何もしなさそうだからね
栞ちゃん行ってあげてね」ママ
「栞・・・無理するなよ
マズイ時は食うなよ
腹壊すぞ」涼太
「何なのよ!!」悠
そんな家族のなんとなく交わした楽しい会話
家族のような
本当の弟のような付き合いをしてきた栞は
平然とした顔で私が一人で暮らす部屋に来るとパパやママ
そして涼太に公言した
心がソワソワしたのは私だけなのだろうか
栞はニコニコ笑顔で
いつもと変わらない表情をしていた
ソワソワも
どういう意味なのか自分でも分からない
私は栞を待っているのか?
何かを期待しているのか?
栞が一人で来たらどうなるのだろうか?
今はまだ
想像もつかない
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