第8話 恋の転回

クリスマス以降

純一郎からのメールはなくなった


ちゃんと謝ろう


メールだと


ごめんなさい


が軽く見られそうだから

電話は好きじゃないけど

何度か電話もした・・・出てくれない・・・


病気になっただけなのに


と私は拗ねるような感情で落ち込んでいた


今度会ったら

私のほうからデートに誘おう

クリスマスのリベンジ


私だって楽しみにしていたことを伝えよう


三年間

純一郎から思ってもらったのだから

今回は私のほうからちゃんと

ちゃんと思いを伝えようと決心をしていた


クリスマスに会えていたら


私も好きです


って伝えようと思っていたことを

ちゃんと言おうと考えていた


それから彼に会ったのは

1月初めのゼミの集まり


全く何もなかったかのように明るく爽やかに挨拶された


私は


二人で会えない?


と聞きたかったけど

ずっと皆といたから言いそびれていた


純一郎は目を合わせてくれない


私は少し戸惑ったが

今までだって皆に内緒で連絡を取り合っていただけなので

甘い言葉をメールでくれた翌日にも

平然とした顔でいたのだから

不思議なことではなかった

ただ、なんとなく

なんとなくだけど

純一郎は友人としても私と距離を置くような態度をとっていた


授業が終わると

久々に集まった仲間でファミレスへ行くことになった


「悠、元気ないな」聡


聡はいつもこういう時に気が付く

そうか

私、元気なく見えるのか・・・

聡の言葉で自分の曇った表情に気づかされる


「うん、大丈夫」悠


私は笑顔を作る

聡はしばらく私の顔を見ていたけど


「そっか」聡


そう言って肩をポンポンとたたいた


ファミレスに着くと

今まで溜まっていたいた話で盛り上がる

相変わらずみんな騒がしいくらいに仲がいい

久々に集まったから

話が弾んでいた

私以外は


しばらくすると異変に気が付いた


ここへ来てから

美咲と純一郎は横同士に座ってピッタリとひっついている

皆で話しながらも

視線はお互いだけをとらえるように見つめ合っている


美咲が純一郎に向けて見せる笑顔は

同性の私から見ても綺麗で・・・


そして純一郎は

美咲を愛おしそうに見つめ返している


これは・・・

これは・・・

二人は始まっているの?

まさか…


「お前らさ、イチャイチャすんなよ!」修斗


修斗は少し嬉しそうに純一郎の肩を軽くパンチする


「付き合いはじめだからって

仲間といるときはやめろよ

見ててハズイから」修斗


修斗の言葉が私のコメカミに刺さる


「えっ?付き合ってるの?」七海


七海は目をクリクリして驚く


「知ってた?悠?」七海


私は下を向いたまま首を横に振る


「女子は知らなかったのか?」修斗


「今日、言おうと思ってたから」美咲


美咲はハニカミながら膨れて言う

幸せそうな可愛い笑顔


何で?と思うよりも

自分の思い上がりのような今までの感情が整理できないでいる


「仲間でいることを優先するって約束だろ?輪を乱さないって!」聡


少し強めに聡は言った

そして私のほうを見た

私はだんだん皆の声も聞こえなくなる


眩暈と一緒に血の気が引くような嫉妬心で

そこに座っていることも苦しくて


「今日は帰るね」悠


そう言って店を出た


みんな不思議そうな顔で私を見送った

私は足早に駅へ向かった


どういう事か分からない

どうして純一郎が美咲にあんな視線をおくるのか?

どうして美咲が・・・いつから?


だって

つい数日前までは

クリスマスのあの日までは

純一郎は私の事を真っすぐに純粋に思ってくれていたのに


嘘だったの?


三年も一途に直向に・・・


嘘だったの?


よく分からなかった

彼の気持ちも誰の気持ちも


街は騒がしいはずなのに

私の耳には雑音のようにその事がグルグルと渦巻いて

何も聞こえなかった


家までどういう風に帰ったか

よく覚えていない

とにかく何も考えられなくてスマホを壁に投げつけてベッドに潜って大泣きした


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