第6話 Christmas(上)

大学も四年生になってすぐに

私は化粧品関係に就職の内定ももらった


学部とは全く関係がなく

当初の希望の内勤職ではなく

サービス業となるけど

この就職氷河期に

こんなに早々決まったことは

親も安心してるし

良かったと思う


単位もほとんどとれていたので

大学へ行くこともあまりなくなっていた


そうそう、栞とは

あれからやはり何もなかった

毎日のように顔は合わせるけど

以前と同じ

弟よりも

より弟感を出して甘えた声で話してくれるし

かわいい顔で微笑んでくれる


今となっては

あれは何だったのだろう❓️と

考え込んでしまう


ま、中学生に何か期待しても

何もないし

あってはならない気もするし

これで良かったのだと

思おうとしていた


仲間とは

やはり変わらずに集まった

最後の年と言うこともあって…


春は恒例のキャンプバーベキュー

一年のバーベキュー以来私は参加できていなかった

今年は全員参加が必須だったから皆で盛り上がった


海水浴

毎年、「行けたらいいね~」と言うばかりで

女子が日焼けしたくなくてキャンセルされていたイベントだったけど

最後だから全員丸焼け覚悟で参加した


花火大会

男子も女子も

皆で浴衣を買うところからはじめて

張り切って全員参加した

だけど

花火の途中で大雨にみまわれて

ずぶ濡れで帰宅した


秋になって

あと、半年となり

全員無事に就職も決った


ハロウィーンは仮装してホームパーティ


クリスマスはイルミネーションを見に…


初詣はドライブしながら牡蠣小屋


卒業旅行は海外を考えている


心置きなくこれからのイベントも組まれていった


私と純一郎との関係と言えば

特に変わりはなく…


もちろん

全く動きがなかったわけではない


栞とのキスから舞い上がってしまっていた私は

純一郎からのメールを何度も読み返すことはなくなり

返事もすぐにではなく

翌朝だったり

返信の内容が的外れだったりで

さすがに3ヶ月くらい過ぎた頃

純一郎から


"もしかしてだけど

メール迷惑かな❓️"


と何とも不安げな

とても短い文をポツリと送ってきた


三回以上はスクロールしなくては読めない長文だったのに

ある日送られてきた短い文に私は


"はっ"


とさせられた


私は純一郎を傷つける…


栞に心が揺らいで

何も非のない

むしろ

全力でこちらに思いを綴ってくれている彼を

ないがしろにしてしまっていた


好意をもらっている相手としてだけではなく友達としても

誠意をもって向き合うべきだと反省した


"ごめんね

最近、色々と忙しくて

メール適当だったね

心配させたね

純一郎を迷惑だなんて思わないよ

これから気を付けるね"


と返信した


後から読み返したら

なんだか自分に都合の良いような内容のメールだった


思い上がりが酷くて

恥ずかしかった


彼がこのメールをどう思ったのかは分からないけど

それからは

それほど長くもない文になった


呆れられたかも…


正直、不安だった


だけど、その不安を払ってくれたのは

純一郎からのメールだった


それは、去年のクリスマス

みんな忙しくて集まる予定もなかったので

純一郎から初めてのデートの誘い


"今年のクリスマスはみんな彼氏彼女

もしくは家族で集まるって…

悠はなにするの❓️

良かったら映画でもみて

飯でもいかない❓️

これは

12月25日

デートの誘いです‼️"


純一郎からこんなメールが来たのは

クリスマスの一週間前の事だった


私は予定もなかったし

デートの誘いが素直に嬉しかったから

即答で


"宜しくお願いします"


と返信した


彼からもその後直ぐに

25日の予定が送られてきた


初めて男の人とこんなデートをする

嬉しかった


私はきっと

このデートで何らかの決断をすることになるだろう


だって

未だ恋人になれていない二人が

数年越しに初めてデートするのだから


しかも

クリスマスの夜

絵に描いた様な恋人だらけの街で

私たちもきっと

まわりから見たら

そんな風で


辺りはキラキラしていて


映画みて

食事して


いつかドラマで見て憧れたようなデートは素敵すぎて…


きっと普段では思わない事だって思ったりするし

言ったりもするのだと思う


仲間との関係を気にする二人だって…

その日はお互いしか瞳に映らない


特別な日だから…

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