天使さんの幸せ

「ま、いつか会えるかもね」と

ルーフィは、軽快に。



「なんのこと?」と、めぐが不思議そうに。


「うん、こっちの話し。」と、ルーフィはにこにこ。



気になるなぁ、と言うめぐの行方から

路面電車が走って来た。


古いタイプの、オレンジ色と緑色の


鋼鉄の、重々しいサウンドが

レールの継ぎ目を叩いて。



「重厚ですね」と、クリスタさん。


「うん、モーターが軸に乗ってるから」

と、ルーフィ。





「どういう事?」と、めぐは

興味を持って尋ねる。




「うん、電車だからモーターで動くでしょう?歯車で、車軸に力を伝えるの。


さっきのモペッドみたいに。



なので、歯車同士は動けないから、

車軸にモーターを乗っけちゃったの。」と、ルーフィ。



電車が到着し、自動ドアが開く。

空気の抜ける音が、ため息みたいに思えてめぐは「お疲れさま」と

ひとりごとみたいに言うと



電車は、空気圧縮機を動かし、ぽこぽこぽこ・・・・・。


それが、電車のお返事みたいに

思えて、めぐは楽しくなった。



電車にも、魂はあるのかしら・・・・。


古い機械には、宿っているらしい魂。



丁寧に、お手入れされて

長生きしている電車は、なんとなく

おじいちゃんみたい。



そんなふうに、

めぐは思って。ふと、天国に行ってしまったおじいちゃんの事を思い出して。



なんだか寂しくもなった。



その気持ちを振り切るように


「車軸にモーターが乗ってると、どうして重い音がするの?」と

現実的な事に、気持ちを集中した。



思い出に耽ってたら、泣いちゃうかもしれなかったから。



そういう事はあんまりない、めぐだったけど


このところ、少しおセンチになってる。



そんなふうに、めぐ自身思ってた。





それは、たぶん・・・・恋の行方が

気になるせい、かもしれなかった。



ルーフィは、ふつうの感じで


「うん、モーターは重たいから。

それが、歯車を動かす響きが

直接レールに、響いちゃうんだね。


」と、ふつうに話しながらも

ちょっぴりだけ、寂しそうな顔になった

めぐの事を、ちょっと気にした。





ま、いつかはお別れするんだろうけれど・・・。と、ルーフィは思うけど



気持ちって、そんなに簡単に

切り替わらないもんなぁ。





せめて、夏休みの間だけでも

一緒にいてあげたいな。



そう、ルーフィは思ったり。



電車は、ドアを閉じて。



夕暮れのお客さんを、いっぱい載せて。



モーターの響きを上げて、めぐの

お家の方へと走り出した。





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