R.H.Miller

そう、超伝導も

18世紀には、魔法で作り出せた。


E=IR、即ちR=0とするのが

超伝導。


R=抵抗だから、電子が、隣り合った分子を渡る時の

衝撃だ。


つまり、それを超次元的に無、にしてしまえばいいのである。


例えば、ルーフィたちが時間旅行をする時

こちら側にあるのは、0次元モデルであるから

無。


代わりに、無限に近いエネルギーが起こる。


それは、言ってみれば


今、合金導体を冷却する高温超伝導で

R=0にして、E=IRより 

E/I=無限大になるのと同じ事だ。



それは、魔法でも可能なのだけれど・・・・。




「分子の構造って、3次元の宇宙そっくりだから。電子が僕ら、だとすると

超次元の魔法って、超伝導のお話とよく似ているね」と、ルーフィ。



「そう言われると、なんとなく魔法、って分かるような気もします」と、めぐ。



18世紀には、医学でもあったし科学でもあった魔法。



それらを、近代の科学はひとつひとつ、実現しようとしているのだ。




限られた者だけに許された技術である魔法、それを

あまねく全ての者に与える科学技術。


いい事なのか、悪いことなのか・・・?






モペッドは、風を切って図書館に真っ直ぐ進む。


ぱたぱたぱた・・・・と、エンジンの中で燃料が爆発して

都度、前に進む。



めぐは、思う。


「どうして、アクセルを開くと力が出るんでしょう?」




ルーフィは、楽しい。


素朴な、その問いは

自らが少年の頃思ったのと同じだから。




「はい。シリンダーの中に入るガスは、爆発した後

全部出て行く訳でもなくて。


外の空気が入ってこないと、出られない分もある。


その、外の空気を、アクセルにつながっている

スロットル・バルブ、まあ、シャッターみたいなものだね。

その塞ぎ具合で加減するのさ。


いっぱい開いても、まあ、100%入れ替わりはしないんだけど。


それを、理論充填効率って言って、まあ、66%くらい。ふつうは。」


と、ルーフィは、なるべく優しく話した。



めぐは、大体理解したようだ。

「34%はどうなるんですか?」




ルーフィは、明快に「それを内部循環、I-EGRって言うね。

内側で循環しながら序々に出て行くわけ。」



ふーん、と、めぐはうなづいて「それだと、ふつうのエンジンは66%しか

使われていないんですか?」と、いいところに気づく。



それだけじゃなくて、と、ルーフィは言い

「その66%のエネルギーの、更に30%くらいしか

車輪を回す力になっていないんだね。

0.66×0.3=0.19かな。つまり、2割くらい。残りの8割は使えない。」




「どこに行ってしまうんですか?」と、めぐは

そろそろ、橋を渡って図書館に近づいたモペッドの後ろで。



お巡りさんが、交番でのんびりしているのが見えるが

旧いモペッドを見ても、別に気にも止めていない。




「うん、それは熱になったり、空気の中に出て行った排気の勢いに消えたり。

ちょっと、もったいないね。ピストンを押し下げる距離が短いとね。

爆発エネルギーが残っているうちに、排気されてしまうから。」と、ルーフィ。



「もったいないですね。」と、めぐは思う。

無駄を好まない、賢明な子だ(笑)。




「そう、それなので・・・・分母を小さくすればいい訳。

最初から少ないガスを、目一杯膨張してから出せば

その30%が、60%くらいになれば倍でしょう。

理論的には効率40%になる。」




「賢い人が考えたんですね。でも、どうして普及しないんですか?」と、めぐ。




ルーフィは、ちょっとシニカルに笑って「それはマヤカシの奇術だって

みんなが信用しなかったのさ。大昔に魔法使いが迫害されたり

魔女狩りが起きたみたいに。


でも、今になって、見直されて。

使われ始めてるね。



彼は、1世紀も前の人だけど。当時は魔法使いだったんじゃないかな。


僕らも2世紀後に、そう言われてるかもしれないけど(笑)。」



と、ルーフィは楽しい空想をした。


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