第48話 妨害は続く
野営地に着いた。
「大変です。石が詰められ井戸が使えません」
「こっちは飼葉が持ち去られているぞ」
「タルコット様どうしましょう」
せこい手に出やがって、兵糧攻めか。
「近隣の村まで飼葉を買い付けに行きましょう」
そう言ってタルコットさんは俺達に警備を任せて慌ただしく出かけ、しばらくして困った顔で帰って来た。
「困りました。馬に飲ませる水は貰えたのですが、飼葉が買い占められてて」
「雑草を食わせる訳にはいかないのか」
俺はそう尋ねた。
「毒の草もあるのですよ。地元の人間でないと、見分けがつきません」
「こういう時はライオンの出番だ。それと草刈り機を作ろう」
久しぶりに作成依頼せずにモデリングした。
円盤を作って、そこからワイヤーを伸ばし、円盤の中心にパイプを取り付け、パイプに取っ手を付けて完成だ。
おっと石を跳ね上げるからカバーを付けないとな。
よし後は円盤が回るアニメーションを作って、今度こそ完成だ。
草刈り機で雑草を刈り集め、ライオンが食えない草を判別する。
たまに貴重な薬草が紛れていて、それも別にしてもらった。
意外な所で小遣い稼ぎが出来た。
こうなったら。
水の出る蛇口もサービスしよう。
野営地に設置した。
しばらく井戸は使えないだろうから、旅人にはこれを使ってほしい。
「水の出る魔道具は私も扱っていますが、この草刈り機は便利ですね」
「分かっているよ。売らないかと言うんだろ。もうちょっと見栄えを良くしたら売ってやるよ」
作成依頼で草刈り機を頼んで、エンジン部分は要らないので削除する。
ポリゴン数がかなり節約できた。
これでいいだろう。
「商業ギルド経由で品物を送ってもらえますか」
「街に戻ったら発送するよ」
今回のトラブルで一つ思いついた。
馬のポリゴンは売れるだろうと。
価格の高いし、AI装備ならカーナビ付きみたいなもんだ。
馬は既にショップで買ってある。
飼葉も水も要らないところがなお良い。
「ゴーレムの馬って需要はあるのかな」
「それはもちろんありますとも。ですが、ゴーレムは術者が居ないと動きません。ですので運用は割高になります。あらゆることに自動的に適応するゴーレムを作るのが、ゴーレム職人の夢だとか」
「【具現化】馬。タルコットさんの指示で動いてくれ。これは飼葉も要らない馬なんだ。どういう物かと言われれば魔法生物が近いのかな」
「それは素晴らしいですね」
「サンプルとしてあげるから感想を後で聞かせてほしい」
「いいですとも。これが商品になれば金貨10枚はいきそうです」
うははは、大金持ちだ。
「ディザ、また黒い笑顔している」
「いやな、シェードの妨害のおかげで大金持ちだ」
「大変だ。メタルスコーピオンがこっちに来るぞ」
見張りに立っていたタルコットさんの使用人が声を上げた。
みると金属光沢をした軽トラックほどのサソリが樹をなぎ倒しのっそりと歩いてくる。
スピードはないというタイプか。
防御力特化と言う奴だな。
また、魔獣寄せの香の仕業か。
あのFランク冒険者の姿はない。
彼女はメタルスコーピオンに食われたのか。
まあ良い。
原因解明は後だ。
こいつをどうやって倒そう。
「【具現化】鎧の戦士と剣。
鎧の戦士が駆け出してメタルスコーピオンの前で技の溜めに入る。
特徴的な振動音と共に一閃。
メタルスコーピオンの片手を斬り飛ばしたが、剣も駄目になり光になった。
「【具現化】剣。これを使え」
俺は剣を鎧の戦士に投げてやった。
再び溜めに入る鎧の戦士。
そして、キングスコーピオンから毒液が鎧の戦士に掛けられる。
ポリゴンに毒とか効かないのにな。
振動音と共にまたメタルスコーピオンの残る片手を切り落とした。
新しい剣を作り三度の
今回は素材が採れるな。
いやあ儲かった。
収納バッグに入れながらそう思った。
そうでも思わないとシェードへの怒りがこみ上げてきそうだ。
今回の事は十中八九、妨害工作だと思う。
夕飯の支度をしようという時に村人が野菜を売りに来たので、俺は薬草を村人に売ろうと広げて見せた。
そして村人が採取した薬草を見て。
「これは……メタルスコーピオンの涙。商人さんよくご無事で」
「なんなのそれ」
「薬草なんですが、この薬草を傷つけるとメタルスコーピオンが寄ってくるのです。そういういわくつきの物です」
「今回は俺達のミスだったのか。いや、違うな。ライオンさん、メタルスコーピオンの涙が植わっていた所を示せ」
ライオンが示した場所を見ると薬草を移植した跡がある。
そういうことか。
馬の飼葉を無くせば、この付近の草を馬が食う。
その中にメタルスコーピオンの涙があれば、今回の事件が起こる。
よく練られた妨害工作だな。
訴えられても知らんぷりを決め込めるという訳だ。
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