第20話 旅は道連れ世は情け②
勇んで一路野盗達の元へと駆けつけた
襲われている者の幾人かは、いかにも行商人とか遍歴の職人とかいった感じの人種で分かりやすいのだが、中には護衛なのか荒事家業の人間か、野盗と変わりないような武装を身につけて応戦している人物が何人かいるのだ。というか、混戦になっているので、どちらがどちらやらさっぱりなのであった。
──取り敢えず、そうと分かる奴をぶちのめそう。
状況をある程度把握して、そう決断すると勇躍修羅場へと躍り込む。
まずいかにも商人でござい、と丸々と太った男性相手に剣を振り上げようとした男向かって突進し、片足を
「ダッシャァアア! レッグ・ラリアートっ!!」
「ぐぺらっ!?」
それに堪らず、野盗と思しき男は妙な叫び声を上げて、文字通り吹っ飛んだ。
さて、ここからが本番だ。
光は馬から降り、すぅ……っと息を吸い込むと、腰の刀を抜いて叫んだ。
「おうおうおう! こ の 悪党ども! 白昼堂々野盗まがいの事やりやがってっ! お天道様が許しても、この俺が許さねぇ!! 全員まとめて相手してやるから、覚悟しやがれ!!」
それは『力』を伴った言葉だった。前衛系なら必須と言われている『
効果があるかどうか、少々疑問であったが一応の効果があったようだ。
「んだとぉ!? この
「この
「誰が女だっ! 俺はっ! 男だぁっ!!」
ついでに自分の
とは言え、これで敵は自分に攻撃を集中させてくる。光は刀の刃と峰を逆に持ち替え、峰打ちで迎撃する構えを取った。
甘いと言われそうだが、悪党といえ人の命を奪う事には
それに峰打ちと言っても、得物は鋼で作った鈍器と同じである。骨折ならまだしも、打ち所次第では十分死に至る攻撃となりかねない。
光は慎重に出方を待った。
しばしにらみ合いが続く。動き出したのは緊張に耐えられ無かった、野盗の一人だった。奇声を上げてがむしゃらに剣を振り下ろしてくる。光はそれを軽々といなし、愛刀で鋭く
やはり実戦は違う。命のやり取りに肝が冷えそうだが、やらねばやられるという緊張感が光を奮い立たせた。
続けて第二波がやってくる。今度は左右同時の連携攻撃。
(こいつら、慣れてやがるな)
一瞬野盗達の手際に感心しながらも、光は鋭く刀を振るって、その剣をことごとく弾き返した。そしてがら空きになった胴に峰打ちの一撃を叩き込む。
その衝撃は鎧を突き抜け、内臓に達したようだ。「かはっ!」という息が抜けるような声が聞こえたかと思うと、二人は吐血して倒れた。
これで三人。
「どうした? これ以上は無益だと思うが、まだやるか?」
光の恫喝に残った野盗は怯み、警護していた傭兵と思しき者達は息を吹き返して立ち上がっていく。
数でと言えば、野盗側が勝っているのだが、突然現れた光の技量に怯んでいるのは確かだった。明らか士気が低下し、及び腰になっている。
しかも後から付いてきた真琴の
「こ、こうなったらっ! 先生っ! 先生ーっ!!」
なにやら頭目らしき男が、時代劇よろしく助っ人を呼び出して来た。
(ここで「どーれーい」とか抜かして来たら笑ってやるわ)
などと思いつつ、光達が身構えたその時。
「どーれーぃい……っ」
そうベタな返事をしながら出てきたのは見上げる様な巨漢だった。しかも異種族の血でも入っているのか、口元からは牙の様な物が生え、腕の太さが光の
それが巨大な
(こいつ……まさかハーフ・
ハーフ・
魔法職には不向きだが、高い肉体能力と魔術への高い抵抗力など、戦士系として特筆した才覚を持っており、見かけを除けば有能な戦士職として人気がある。
光は気になったので、そのハーフ・ウルクの左手の薬指を見てみた。
(指輪は……無し、か)
どうやら
だが、そうでないのであれば、勝ち目は十分にある。
だが、
「参る!」
ハーフ・ウルクの巨漢はその巨体に似合わぬ俊敏さで、『
まずいっ! そう直感した光は慌てて『縮地』を使い距離を取る。
一刹那遅れて、巨漢の斬撃が大地に文字通りえぐり込み、地面を爆散させた。
「外したか」
その野太い声が愉快そうに弾む。
だが冗談ではない。あんな一撃を喰らっては堪ったモノでは無い。下手に受けようものなら、刀ごと叩き斬られるのがオチだ。
光は次の一手を模索しながら、再び刀を構え直すのであった。
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