幼馴染に浮気され、義妹とセフレになる

2023年中に小説家となるスンダヴ

第1話 帰ってこないね。ママも。おじさんも

 「帰ってこないね。ママも。おじさんも」


 裸で抱き合っていた義妹の丸山結愛まるやまゆあがぽつりとつぶやいた時、すでに朝を迎えていることに気付いた。一睡もしていない。


 時刻はすでに朝7時30分となっていた。朝9時の始業に間に合わためには、30分前には家を出なければならない。

 そろそろ準備を始めないと学校に遅刻する。


 「仕事で遅いんだろ」


 とりあえず適当に誤魔化し、結愛の体からゆっくりと離れ、上体を起こした。


 「じゃあママは?」


 「詠美さんは…分からない」


 「分かってるくせに」


 結愛はふあ、と小さなあくびをした後、すらりとした脚を掛け布団から出し、先ほどまで僕といたベッドから出る。


 肩まで届く黒い髪。

 雪のように白く、ほんのり紅潮している頬。

 薄い桜色の唇。


 16歳になったばかりの、花のつぼみのように瑞々しい肢体が朝日に照らされていた。


 「どう?」


 両腕を広げ、結愛はにかっと笑みを浮かべる。


 「お兄ちゃんだけに許されたこの背徳的な…ってなにすんのさ!」


 「風邪をひくだろ」


 「だからって毛布投げつけることないでしょ!?」


 「先にシャワーを浴びた方がいい。朝食は俺が作っておく」


 「はいはい。ったく、終わったらすぐ賢者モードになるんだから」


 不平を述べながらも、結愛は自分の体に毛布をまとった。まだあどけなさを残した小さな顔以外がすっぽりと収まる。

 

 寝室のドアを開け、階段を降りていこうとする結愛だったが、こちらを振り向いた。




 「もう1回する?」


 「馬鹿」 


 「ちぇっ」


 ドアは閉じられ、階段をすたすたと降りていく音が聞こえる。


 音が完全に聞こえなくなるまで聞き耳を立てた後、俺はベッドの状況を確認した。状況はあまりよろしくない。「ラブホテルの清掃アルバイトはキツイ」とネットで読んだことがあるが、それを実感する日が来るとは思いもしなかった。


 「とりあえず、ゴミから片づけるか…」


 部屋の隅に置いてあったゴミ箱を手に持ち、ゴミを捨てていく。気持ちの良いものではない。行為の痕跡を示すそれらを手に取ると、自分がしたことに対する実感が湧いてくる。




 俺、すなわち丸山円二まるやまえんじは義妹である結愛と体の関係になっているのだと。




 ーあんたもあたしが邪魔なんでしょ…?気持ち悪いもんね、こんな歳になって義理の妹なんて。


 不意に、初めて結愛を抱いた日の事を思い出した。


 義理の兄妹の関係になって、初めてみた泣き顔。

 それまで散々体に触れるのを嫌がったのに。その日だけ、胸にしがみついてわんわん泣いた。誰かの温もりを求めた。


 ー抱いてよ。抱いたら、あんたを、お兄ちゃんと認めてあげる。


 そして俺は、一線を越えた。

 結愛が初めてだったことに気づいた時には、すべてが終わっていて、どうしようもなかった。


 それを止めてくれる人間も、今この家にはいない。

 

 死んだ母さんが空けた心の穴を埋めたがっていた親父もー、

 シングルマザーからの重圧から解放されたがっていた詠美さんもー、


 ずっと家を空けたまま。




 俺は結愛の家族になれなかった。

 



 「シーツの洗濯は…帰ってきてからでいいか」 


 とりあえず片付けを終え、俺も家の1階に降りようとする。特に使う用事もない水色のスマホを充電コードから抜き、LINEを確認した。


 1件、連絡が来ている。




 「円二くん。最近私を避けてませんか?」


 結愛の初めての彼氏を奪った俺の幼馴染、静谷凛しずやりんからだった。



 ****



 あとがき

 

 相変わらず癖の強い作品ですが、もし気に入れば応援や☆、フォローを頂けると嬉しいです!


 ☆500達成でイラスト化企画を立ち上げますので、よろしくお願いしますm(__)m



 



 


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