第1話 新しい機体
キュィィィィィイイイィィィン――――。
疾走する機械音が鳴り響く。荒野とも呼べるほど何もなく。辺りは砂漠のように、砂だけが広がっている。
一機の機体が砂しぶきをあげながら、地面すれすれを飛ぶように走る。
黄色とオレンジ色の機体は、スピードを上げて飛んだ。
この地球にある機械は、錆や塗装の剥がれ等、とてもと整った美しいものではない。 色んな形の鉄を組み合わせて作られたモノ。そこらへんにあるものの組み合わせ。 だが、地面を駆けるオレンジ色はとても美しく、精巧に作られた機体でそれを感じさせなかった。
オレンジの機体は飛ぶのを止め、足を地面につけた。 空を見上げる。
コックピット内には人が乗っている。 操縦桿やモニターなど沢山のボタンがついてる中、前方を映すカメラを見るパイロットがいた。
「はぁ――――。空がまた光ってる。 一体どうなってんだろう、あの空の先は」
パイロットは耳を澄ます。
「何か来る。 これを狙ってる? ただの旅人ならいいけど」
操縦桿を強く前に倒すと、中にあるレーダマップを確認する。 数個あるモニターの中の温度を探知する画面を見る。 真直ぐオレンジに向けて走ってきていた。
「数は2つって所か」
オレンジの機体の背中に搭載されたバーニアが噴き出すと、また足を浮かせて地面すれすれを飛ぶ。
だんだんと近づいてくるモーター音。 バイクのような黒いマシーンが二台、オレンジの横に挟むように並んだ。
そのバイクのような二輪車に乗る二人乗りの一人が、何やら語り掛けてきているが、外の音がうるさく、全く届いていない。 後ろの奴は銃を持っていて、オレンジを威嚇していた。
パイロットはそんな状態をモニタ―越しに確認していた。
「あ、なんか言ってる。ま、いっか」
オレンジはさらに加速した。 バイクの連中を抜いて、どんどん前に出る。
バイクの連中は怒ったのか、サイドのでかいスラスターを吹かすと、一気にオレンジに並んだ。
後ろに乗る連中が、オレンジに向けて発砲してくる。
「うわっ、あいつら発砲してきた 何て事するの」
オレンジは軌道を揺らして、何とか弾丸を回避しようとしていた。特段オレンジより小さな弾丸は、何らダメージを与えられてはいないが、しっかりと装甲されている訳でもない機体。
当たりどころが悪ければ、可動部の損傷の危険性がある。
パイロットはなるべく綺麗な状態を保ちたかった。
バイクの連中はさらに、オレンジに向かってマイクをつなぐように指示をする。
「あぁ~もう、声をつなげって事? えっと、確かこの変に」
パイロットは、銀のボタンの一つを上にあげた。
「おい、こら、てめぇ! 聞いてんのかボケ。 さっさとマイク繋やがれ、 止まれっつってんだよ。 聞こえねぇのか、 潰すぞ」
連中はさぞかしお怒りのようだ。
「もう、なんでよりにもよってこんな時に」
金髪の女の子が、レバーをさらに倒し、ペダルを踏みこんだ。
オレンジはその場から逃げるようにさらに加速する。
「あの操縦者。 舐めやがって。 ぶち殺すぞ」
バイク野郎は離されまいと加速し、後ろにつく。
「バル、あれ使え」
「へぇ」
後ろに乗っていた男が、バイクの両サイドに積んでいた入れ物から、誘導式のミサイルランチャーを取り出した。
反対側のバイクはロケットランチャーをぶっ放す。
「ちょっと、止めてよぉ、 当たったらどうすんのよバカぁ」
「おい、直撃させるなよ! 動きを止めれるだけで良いんだ。 壊しちまったら使えねぇだろうが」
女は必死で回避した。 飛んで行ったロッケトランチャが先で爆発して煙を上げる。 あんなものが当たれば機体もただでは済まない。
ピピピピピピピピッ
「あぁ~もう、うるさいわね、今度は何よ」
ミサイルにロックオンされている警告音だ。
後部のモニターでそれを確認した。
「う、嘘でしょ、もう、止めてよ、最悪。 お願いだから撃たないでよ」
ロックオンしたミサイルを容赦なくぶちかましてきたのである。
「もう、最低……」
彼女は振り切ろうとしたが、標的をロックしたミサイルは簡単には離れてくれない。 それはオレンジに激突し大爆発を起こす。
「きやぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ」
「へへっやったぜ」
「バッカやろう何やってんだ、おめぇら」
辺りは煙で覆われた。 バイク野郎達は先に煙の中から飛び出してきた。
この煙が開けたらバラバラになっている機体か、動けなくなっている機体が拝める。
彼らにしてみれば今回走っていた機体はとても上玉だった。
あそこまで綺麗に作り上げられた機体は中々ない。
それにこの時代、機体を持っていなければ生きていくのは難しい。
機体があってこその力の象徴でもある。 だから作れにない者たちは、機体を奪取する事が多い。
煙があけないうちに、オレンジが煙の中から飛び出してきた。
「嘘だろ、」
男は加えていた煙草を落とした。
彼ら等お構いなしに、オレンジは飛んでいく。
「あんにゃろぉ、絶対捕まえる」
バイク野郎は赤い光を空高く放った。
「照明弾? 何かの合図!?」
バイクどもは後ろから乱射してくる。
オレンジのボディーや鉄に当たる鉛の音が、いくつも鳴り響く。
「もうやめて、怖いよ」
一発のロッケトランチャ―がかすり、爆発する。
「きゃぁぁ」
「ちっ、しぶとい奴め、さっさと動きとめちまえ」
ピピピピピピピピッ――――。 また警告音が鳴り響く。
「もう、やだよー、死にたくない」
一発のミサイルが放たれた。
オレンジの機体に当たり爆発。
「今度こそ仕留めた」
かに見えたが、ぴんぴんしていた。
「なんなんだ、アイツ あぁん?」
オレンジは自身の武装を使ってミサイルを撃ち落していた。
「アイツ、銃弾使いやがったのか、 気をつけろ、撃って来るぞ」
バイク野郎は仲間に注意するよう合図を促し、発砲し続ける。
「あぁ、もうしつこいよ」
オレンジは持っているライフルをぶっ放した。
「う、撃ってきやがった」
一台のバイクがスピードを落とす。
「怯むんじゃね、奪っちまえ! 向こうは一人。 とにかくさっさとあれを止めろ」
ピピピピピピピピッ――――。
「しつこい。どこ、どこにいるの。 そこか」
オレンジはミサイルを持って狙って来るバイクに威嚇射撃した。
「う、うわぁぁぁ」
丁度、持っていたランチャーに当たりそのまま爆発した。
「ちくしょ、よくもやりやがったな」
「当たっちゃった? 私…… 」
「ボス、逃げられちまう」
「大丈夫だ、 この先にはタンクがあるだろうが」
オレンジは行く先の岩影に隠れていたタンクの主砲攻撃を受けて転ぶ。
「きゃぁぁぁぁ」
「今だ、ショルダーを狙え」
持っていたロケットランチャでバックショルダーを狙う。
「うううっ、」
ロボットのコックピット内の画面が赤く光る。
「うそ、ショルダーをやられた? そんな、」
バイクが機械に迫り、フックのついたワイヤー銃を放つと機体にフックを貫通させた。バイクの遠心力を使ってワイヤーを機体に巻き付けていく。
「きゃぁぁぁぁぁ、止めなさい。 動かない」
「ようし、もうちょっとだ。 俺たちの勝ちだ。 よくも仲間をやりやがって、ただじゃ済まさねぇ」
女は脅えていた。
「嘘、捕まった。 殺される、私殺されるの」
バイクの男がコックピット前に立つと。
「おい開けろ、このくずが。 開けないなら力づくでこじ開けるぞ」
銃を持った男たちに囲まれる女であった。
「この機体は俺たちがもらった。 さっさと出てこないと、お前も殺す」
どのみち出て行ったところで、酷い目に逢うのは変わらない。 ならば、この中に開けられるまでいた方が安全だ。
こうなってしまったら、機体は奪取される運命にしかない。 こうして、機体が奪われる事件は後を絶たない時代なのだから。
「うぎゃあぁぁl」
大きな爆発音とともに、前に止まっていたタンク一台が爆発して炎上している。
「攻撃? どこからだ」
「ボス、あれ」
白い機体が、一機、向かってきていた。
「何だあれは? もう一機? 面白れぇ、あれもいただければ、今日はお宝三昧じゃねぇか」
「だけど、武装してる。 こっちのタンクも一台やられたんスよ」
「だからだよ、こいつだけじゃ、割に会わねぇ。まだ1台とバイクがある。 見たところ軽量装備だろ、あれ。 やれんぞ」
「タンクはあいつに発砲しろ。 あいつも捕獲する」
バイクで指揮をとる男の名はダンク。 ダンクはバイクに乗ると、白い機体に向かっていった。
「へぇ、ただの旧式の銃じゃねぇか。 作戦は一緒だ、捕縛する」
白い機体が使っている銃はけっして真新しいものではない。 何年も昔に使われていたのだろう、錆びついていて、いつ弾が詰まってもおかしくないような見た目をしていた。
それにオレンジより、動きが鈍い。機体の性能はあまりよくはないようだった。
だが、乗っているパイロットがすごいのか。ミサイルランチャーも、タンクの主砲も軽々と、避けてオレンジに近づいてくる。
「バッカ野郎! ちゃんとねらえ」
狙ってます!と、無線が届くが、タンクはみるみる距離を詰められ、主砲を曲げられた。 白い機体はそのまま銃口を突き付けてきた。
タンクが撃たれると思ったダンクたち。ダンクの後ろから仲間がロケットランチャーを二発ぶち込んだ。
「死、しねぇー」
白い機体が、避けた先に、タンクに二発とも命中。 タンクは大爆発を起こした。
「チクショウ。 あの野郎」
白い機体はオレンジに向かって一直線に向かって飛ぶ。
「させるかよ」
白い機体もオレンジが目当てなのか、ロッケトランチャを撃ってくるバイクには目もくれない。
「やらせるかぁー」
ダンクはブースターを使って、白い機体を追い越すと、前に立った。
ロケットランチャーを構えるダンク。
「取った」
白い機体がかわすには不可能な間合い。 確実にロケットランチャーは当たる。 撃ち放った弾は見事に白い機体に命中。
そのままダンクの上を通り過ぎて行こうとする前にコックピットが開いてパイロットが飛び出した。
「ガキ?だと」
パイロットはそのまま綺麗に丸まりながら、円を描き、持っていたいマシンガンを上から撃ち放った。
弾丸はダンクの左方にかけて数発辺り、後ろに乗っていた。キムに致命傷を与えた。
「くっ、」
青年はダンクに銃を突きつけたまま黙っている。
「チクショウ、覚えてやがれ」
ダンクは仲間のキムを助ける為、その場を去った。これ以上長いしていたら、彼は出血多量になってしまうだろう。
青年はオレンジに近づくと邪魔なワイヤーを熱線ナイフで切り落としハッチを空けた。
「止めて、殺さないで」
女の子は顔を覆っていた。
「クレイド、俺だよ」
クレイドはゆっくり目を開けて確認する。
「ライル? ライル・ハレミ―なの? 本物?どうして」
「何でって、お前が遅いから襲われてるんじゃないかって。 見に来てよかった。 案の定これだからな」
クレイドは涙をぬぐった。
「た、助かった。 ありがとう、ライル」
「ば、バカ。 大げさだな、クレイドは」
ライルは照れながら彼女にそっと手を差し伸べてみた。
「ねぇ、それよりこれ、どうするの?」
ライルとクレイドの目の前にはロボットが二体転がっている。
「両方大丈夫だ。 ほら、動力装置も動いてる。 しかし酷くやられたものだな」
ライルはオレンジの機体のコックピットに入って、スイッチをいじる。
「何よ。 私はあんたみたいな操縦マニアじゃないんだから」
「交代しよう。 クレイドはあっちの白い奴を。 あれならまだスラスターも生きている」
「ちょ、ちょっと」
ライルはオレンジの機体を、彼女がまだいるのもお構いなしに、立たせてみせた。
急に動き出すものだから、クレイドはバランスを崩して落ちそうになっていた。
「ほう、すごい装備だ。 リニアエンジンにリセコンもつけてある。 まさかバックモニターまで! クレイド、お前天才か?」
「あったり前でしょ! 誰が整備してると思ってるのよ!」
「これならいけるぞ」
ライルはオレンジを思いっきり動かしてみた。 その可動に耐え切れず、どこかのギアが外れ、機体がガクつく。
「うおっ、 どこか落ちたか? 酷くやられたなこれ。 それでこの耐久性」
オレンジはどんどんと進んでいく。 ライルのコックピットの横にいついてるモニターにクレイドが映る
「普通の、ラムニル版じゃないわ。 その中に、一癖入れてるんだから。 それを機体の全体になるべく覆ってるの。 普通のより、耐久性いいんだから。 苦労したわ」
「クレイド、追いついたのか。 流石だな。 よし急いで帰ろう。 できれば抱えてくれるか?」
「嫌よ、自分で帰りなさいな」
スラスターが機能しない機体では、どうもコックピットが揺れる。
オレンジの後ろを、白い機体が優雅に飛びながらついて行った。
赤い発行体が見える。 彼らが目指す先はその光。
「おーい、ライルだ。 ライルが戻ってきたぞ」
「何だあの機体! 新型か! 」
「あれがライルの言っていた 」
「どけどけ、お前ら潰されるぞ」
ライルが発行される赤い光に誘導され、大きな体育館のような倉庫へと入っていった。
辺りは砂と岸壁で挟まれている。
機体を収納すると、オレンジからワイヤーを下ろし、その先のトライアングルのような金属に足をかけて降りてくる。
「おかえりなさい、ライル!」
小さな子供たちが集まってきた。
「ただいま、 ミゲル、サイ、ルーシェ」
「おいおい、こりゃまたなんだ、新型がいきなりボロボロじゃねぇか」
吹き溜まりの油のにおいを漂わせ、ペンチを持ったおじさんがやって来る。
「あぁ、また盗賊だ。 でもすげぇぞこの機体。 ロデルも見てみろよ、 絶対興奮する」
「なんでぇ、それは。こんなボロボロでやる事いっぱいじゃないか。 で、勝てそうなのかこいつ」
「あぁ、ちゃんとできりゃ、負ける気はしねぇ」
ロデル「ならちょっくら調べてみっかな」
ライル「最初っからそのくせしてよ」
ライルはオレンジから離れ、白い機体の方へ向かっていく。
イワン「こっちだ。こっちに止めてくれー」
白い機体は赤い発行に誘導された場所に留まった。
イワン「よぉーし下ろせ。 気をつけろよ」
白い機体の前に、歩道橋のような太い鉄のバーが移動してきてコックピット下で止まる。 そこにクレイドが降り立つ。
イワン「おいおいなんだよこの美人さんは。 クレイドって女の子かよ」
クレイドは長い髪をなびかせて、汗を拭いた。
ライル「イワン、 絶対触るなよ。 行こ、クレイド」
ライルはクレイドの手をとって引っ張る。
クレイド「あんたこんなところに」
ライル「まぁな。 ここのおかげで食えてる。 紹介するよ」
ライルはジープに乗って、少し離れた町にクレイドを連れて行った。
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