異世界に転生したのでのんびりしようと思ったのに

青空 翔

プロローグ  転生




 突然だが悲しいお知らせがある。

 俺、矢崎圭太(やざきけいた)は先ほど、あの「東京じゃないのに東京の名前がついている超有名なテーマパーク」へ向かっている途中に死んだ。

 どうか(……は?)とはならないで欲しい。

「普通にディズ●ーラ●ドって言えよ」なんて言わないで。

 ああ、どうか「お前が死んだって別に悲しくない」とか言わないで欲しい。

 マジだから。死んだからこそ、ここ(天国)にやってきているのだから。

 信じてぇぇ!

 ※情緒不安定中。死んだ直後なので大目に見てください。



 さて、天国へやって来た経緯を説明しよう。


 俺はバイクを走らせ、友達と遊ぶために某テーマパークに向かっていたのだ。

 もうウッキウキだったよ。

 さあ、もうすぐ着くぞ。と、ほんの少しだけスピードを上げたその時だった。交差点で青信号だったので渡ろうとした俺の目には、横から信号を無視して突っ込んでくる一台の大型トラックが映った。


「えっ」

 方向転換や急ブレーキをかける暇もなく。


 ドガァァァァァン!!

 と、轟音が鳴り響き、俺は吹っ飛ばされた。ヘルメット無意味。あ、信号も無意味だったな。

 一瞬の感じたことのない激痛が走り、

(ああ、死ぬってこんな感じ……)

 俺は意識を手放した。

 ちなみに俺まだ18歳。まだお酒も飲めてないんだぜ。悲しすぎるだろ。

 と、言うことで、俺は短い人生を終えることになったのだ。

 あのトラック運転手許すまじ。呪ってやる!



 と、言うことで俺はここ天国にいる。

「なんで天国って分かった?おまえは地獄行きだろ?」

 なんて言わないで。俺は悪いことはやった事ないよ!

 あ、ちっちゃかった頃に家の壁にクレヨンで落書きをしたことが悪い事なら悪いこと一回だな。それ以来至極真っ当な男子を貫いてきたぞ。

 …………ウソジャナイヨ?

 大丈夫だ。雲の上だから完全にイメージ通りの天国。……いや、まさか地獄……な訳ない。大丈夫大丈夫。


 さて、俺はずっと座っている。体育座りで。じーっとしている。……何故?

「……俺、いつまでこうやってここで座ってなきゃならねぇんだ?」

 なんか脳内に……いや、魂状態だから脳は無い……?ま、いいや。なんか聞こえたのだ。「少し座って待っておれ」と。

 仕方なくおとなしくお座り。

 犬じゃねぇよ。チワワ好きだけど。トイプードルもいいよね。……じゃなくて。

 あの声は多分神様だったね。間違いない。あの声は不思議だね。頭に残る。

 ……頭はないか。魂だし。……いいや。もう気にしない。頭も脳みそも耳も全部あると言うことで。


 と、一人で考えていると、「待たせたのう」の声とともに白いローブを着たおじいさんがやってきた。


(……神様!!!!!!)

 いやー、思い描いてた通りの神様だったね。気持ちいいくらいのドンピシャリ。

 ちょっとびびったよ。


「ちょいゴタゴタしとってのう」


(喋り方まで想像通り!!!!!!)


「いえ。大丈夫です」

 大丈夫じゃねえよ。神様が何から何まで俺の想像通りで怖くなってきたよ。


「そうか。さて、お主はとても人生が短かったようじゃな」


「……はい」

 まさか人生18年とはね。俺も虚しいよ。


「どうじゃ?セカンドステージは」


「……は!?」

 セカンドステージ?何を言って……?


「異世界転生とやらじゃ」


(ま、まじで!?アニメか!?ラノベか!?)


「なんか希望はないかのう?前世でやりたかったこととか何かあるじゃろう?」

 希望……?やりたかった事……。うーん……。あっ!!


「の、のんびり生活したいですっ!!!!」

 のんびり旅しながら生きていきたいなと思ってたんだ。


「ほっほ。そうかそうか。たやすいことじゃ。今までならここで『はーれむをつくれ』だの『魔王にしてくれ』だの訳のわからんことばかり言われとるからのう。平穏な日々をおまえにぷれぜんとするくらいは簡単だ」


「……」

(は、ハーレム……。魔王……。完全に欲望まみれ。ダメダメなやつだな。顔が見てみたいよ。)


「じゃあ、準備はいいかの?」


「え、もう!?」

 早いな。まだ心の準備が……。


「なんじゃ。早い方が良かろう」


「そうだけど……。……ま、いっか。」

 ……あ。一つ聞いておきたいな。


「あのー」


「なんじゃ?」


「俺が話す言葉は通じますか?」


「もちろんじゃよ。世界観も完全にお主の世界の者たちが夢見るような世界と酷似しておる。心配はこれっぽっちもいらんわい」


 ガハハと神様は笑っている。

 でも、言葉通じるって大事だぜ?コミニュケーション取れなくなっちゃうし。


「さて、いくぞい」


「はい」


 神様は杖を構えた。さっきまで持ってなかったけど、どっから持ってきた?

 まあ、いいか。異世界でのんびり生活だぁ!


「ほれ!」

 神様が杖を振り下ろした。


 俺の体に光が集まってくる。


「それ!」

 神様がもう一振りして。


「あっ!!ミスってしもうた!!」

 の声と同時に、俺の視界は真っ白になった。


 …………。

 ミスったって何?


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