第89話 同盟

 満天の夜に喧騒を鳴らした宴は継承に至らないものの、後日ユダと共に来訪者を招いていた。

 連絡無くいきなり現れたものだからレリアス中が大慌て、また侵略されるなどの騒ぎだったが、結果として良かった。

 シイナが移住する話しが自然に伝えられ、


「いいかレリアスの民達! 昨日の会談で正式に領域文明となった功績は、王エルヴィが民達を想い、事象の権限トトと遺伝子領域最高責任者のイブを、ど突き回した勇敢な姿に感銘を受けた」


「違いますユダ様、本当っに違います」


「軍事力が足りねえとほざいた連中だ。だがしかしここにいる俺は輪廻の権限所持、地獄の王だよく聞け! 命とは死んだら終わりじゃねえ、生き様通して俺の領域に入る。つまりだ。俺は強え奴が好きなんだが、強えとは、芯ある奴を指す。ようは何があったって微動だにしねえ心の強靭さよ。俺は縁あってレリアスの事は前から知ってるが、領域文明へ票を入れた一任者とし、俺の次に強えシイナを受け渡す事にした。いいか。地獄の同盟として、戦う意味は大事なもん守る意志に他ならねえ。真に大事なもんと交わった時、今まで受けて来た常識なんざ平気で覆せる様にならねえと、やれ今まで従ってきたのにその力がねえだのとうだうだしちまう。だが戦うとは、んな難しくもねえ。どんな困難に阻まれようが切り拓く理念があれば向こう数百年は通用する。それでも、全員が長寿全う出来ると思うな。何かを失った時、例え理性が崩壊しようとも、そこにあるものは忘れてくれるな。各々が逞しく生きるには、各々に期待せず、己が切り拓く強靭なものとなれ! 地獄の王が応援する」


 民達の歓喜があった。

 それは実際に示した戦いが拍車を掛けて、王位側近相手にユダが完勝した後の演説だった。

 レリアスに移住する事は、宴の終わった就寝中に告げられているので、シイナを気遣ったユダの計らいだと思う。

 対してシイナは、自由にしてくれたから秘書になると言ってくれて、ユダの演説から察するに、自ら来た意志なのだと、長年の付き合いと照らし宮殿の屋上からその光景を眺めていた。

 それから月日が流れた事をメイミアの帰還と共に実感する。


「帰ったよ! 待ち遠しかったでしょ?」


 その声が響いて来るのは、宮殿で書類を作成しているエルヴィの頭上。

 かんざしの羽が揺れている身振りに、エルヴィの額から血管が走った。


「私がそんな顔に見えるか?」


 領域文明の王となると、最初は忙しい事この上なく、業務進行に気が散っている様子を。


「可愛くない! ねえシオンは!」


「ああおかえり! また一段と頼もしくなったな」


「でしょ! もうシオンにも勝てるよ!」


 俺はメイミアの成長が嬉しかった。

 かんざしはレリアスで猛勉強していた時に渡したものだった。


「ねえねえ私の活躍聞いて」


 エルヴィに言い寄るメイミア。


「はあ…一応聞いてやる」


「ふふん! なんと私は熾天使に昇級したのだ!」


「なもん風の噂で聞いているわ」


「可愛くない!」


 二人の張り合う様子から月日の経過を覚える。

 それは二人が揉めると長引く事、俺はメイミアと外出した。

 近状報告してるうちに、メイミアの帰還は幅広い人気や子供達の迎える大盛況となっていった。


「只今帰還致しました」


「…どうして…悪魔が」


「お取り込み中でしたか…」


「いやご苦労。直ぐ行く!」


 帰還報告のシイナに宮殿へ戻ると急いだ。

 動揺するメイミアに子供達も影響しており、直ぐに宮殿で報告を受けていった。


「ティバイの幸福度は戦いの尊厳に依存していました。構成されている組織は主に二大勢力となって、勇者側と魔王側で対立しています。また勇者と魔王は均一した状態でした。またスキルと魔法のニ大法則を司る者がティバイを支配している傾向にあります」


「なるほど」


「所で幸福度を重視されるのは何故ですか?」


「ん。それは好きが心を豊かにすると思って、例えばティバイの報告を受けるに、幸せが齎す成長は戦いだった訳だ。しかしレリアスが幸せで齎されるのは戦いではない筈だ。この幸せと成長を仕組みとして活用出来れば、望んだ夢が実現し易くなる事と、今までの競争概念とは違った形で、互いの影響が切磋琢磨する環境、またそれが平穏の象徴だと思ってる。その密接にあるものが幸福度の作用だと、異界の書に記してきた」


 そう言ってこの目で確認してきた情報を今まで記した。

 シイナに手伝って貰ってるのは、異界の書に執筆する最後の世界として、ティバイの情報収集と秘書。

 秘書に関しては無理ない様に伝えつつ、一方でシイナの長所は強靭な戦力の持ち主。

 秘書と並行して、その長所を現地で発揮してくれているという所で。


「ユダの理念は刺激が強い、特に子供にはな。気に病まないでくれ」


「ええ」


「メイミアには、途中で大盛況になって言いそびれてしまった。秘書の事はしっかり伝える」


「はい」


「あと疲れたろ?」


 俺は遊んできたらと紡いだ。


「僕に匹敵する者は、エルヴィとリオン様でしょうか。特にエルヴィはゾンビとして有名でしたし」


「匹敵?」


「ちょっと襲って来ます」


「待て‼︎」


「なんです?」


「確かエルヴィも初めて会った時そんな感じだったわ!」


「一応幼馴染ですが、澄ました顔でいるアイツを見ていると、変な意味で血が沸きます」


「分かった。俺も紹介がてら出掛けよう」


「デート?」


 俺は反応せずシイナと宮殿を出た。

 歩いていくと学校が映る。


「ここが前に話した教育施設」


 当初教師をした施設の面影はなく、沢山の校舎が建設され、伸び代や希望に合わせて学べる場となっていった事や、他の国の教育方針の取り入れを勧め、効果などを共有し今に至っている学園都市。

 優秀な子を育むつもりはなく、生きやすくするを推奨している。

 しかし突出した可能性や、メイミアの様に他の世界で活躍したい意思など、未来に合う準備や手続きを行える様にしていると。

 そうこう言ってると格闘専門の施設に着いた。


「運動しないか?」


「運動とは、武器ありですか?」


「純粋な身体能力で打撲までを覚悟した木刀、但し身を守る魔力と幻想はあり」


「治療術者は?」


「いるけどお互いが切磋する場で事故のトラウマは避けたい」


「安全って事ですね」


「ま怪我がつきものって意見もあるが、高い段位を習得すれば制限解除の証明書が貰えるよ」


「つまり?」


「俺が持ってる」


 そう言って施設へ入っていく。


「「おはようございます!」」


 元気そうな生徒達や段位習得者が掲載されている壁にシイナが注目した。


「ここの一番は誰ですか?」


「永久不変のハイロン様です」


 施設の先生が惹かれている。

 俺も「ハイロンはここで強いを証明し王位側近になった」と便乗した。


「…メイミア様もここで?」


「メイミアは一生懸命エルヴィに…」


 付き纏い続けて勝手に強くなっていったとは言いにくい。


「ちょっと教わって独学。所でみんなのメンタルの調子はどうだ?」


「「絶好調です‼︎」」


「オーケー。ユダから聞いてる通り俺の秘書を務めてくれてるシイナだ。強さは折り紙付きで保証するし命の保証も俺がする。七次元の実力と戦ってみたいものはいないか?」


 シイナの交流を深める絶好の機会。

 また地獄の帝王との経験は今を除いて他にないよと、


「「はいはいはいはいッ!」」


 生徒達と先生の立候補が活気立つ。

 熱意が溢れていく結果じゃんけんが始まる中に、シイナは慎んで提案した。


「いいですよ。如何なる手段も地獄の第一階級では肯定されます。但し、僕を殺してもバトルは継続です。永遠の戦いに持つべき心は屈する事なかれ、です」


 立候補者全てを相手にするそうで「強くなるにはどうすればいいですか?」との質問が上がる。


「駆け出しであれば骨や人体の構造を把握する事です。しかし首の様な急所は敵も反応し易く、狙うのであれば背後からの一捻りが得策です。しかし腕力に自信がない場合、ナイフが有効です。ここで骨の構造なんですが、基本的に硬いので慣れるまでは損傷で限界でしょう。よくお腹がいいと言われますが、戦い慣れてる輩には読まれるため、ナイフも卒業しなくてはなりません。これらをふまえ多くの戦士が行きつく剣や武器であれば間合いも取れるので比較的自由な戦闘が愉しめます。準備が出来たらいつでも来て下さい」


「シイナ…」


「何でしょう?」


「畏縮って知ってる?」


「無限大の死を経験しているものに畏縮はありません」


「周りです」


「え?」


 ぽかんとするシイナ。

 つまり、うん、真面目な話しと生徒達の距離感が乖離していた。

 おそらく鮮やかに戦いながらも指南していくユダの戦闘を期待しているんだと、そっと教える。


「あ…あーいうのですね! はは! 僕を惑わすなんてみなさんヒーローの資質ありますよ!」


「「ありがとうございます!」」


「はは! 素晴らしいですね! 気軽にどうぞ…」


 休めの姿勢でシイナが待っているものは、魔力及び幻想の武具。

 広過ぎる砂漠の地に早変わると、体術、武術の準備が整う。

 先生の魔力の波動が先陣を切って、着弾した飛沫は火の海となり。

 シイナの歩法は消失と顕現を繰り返し、攻撃者に指南する。

 その頃には地中、空中、上空に術式が発現。

 術式の紋様から火、氷、風、光の系統が識別出来るんだけど、きっと丹精込めた発動が噴火の様に、津波の様に、嵐の様に降り注いだ。

 一体誰の攻撃なのか分からなくなりそうで、対して満身を使い適切な助言をしていくシイナの活躍は、初日の施設で二番の功績を飾った。


「みなさまお疲れ様でした」


押忍おす!」


 俺らは施設を後にした。

 少し歩くと住宅街が見えてくる。


「家作らないか?」


「僕の部屋は宮殿ですよ?」


「シイナにとって仕事場だし、疲れないか?」


「いいえ」


「そか…欲しいものあるか? 物や休日とか」


「没頭するものが無いですし大抵の傷は寝れば治ります」


「そっか。腹減ってないか?」


「少食なので」


「…そう」


 シイナの幸せが何なのか、酒場に入って考える事にした。


「お国の偉い御人がいいんですか?」


「うんハイロン酒二つ!」


「おう!」


 カウンターで酒を作るハイロン。

 一方王位側近が何で酒場の店長やっているのか問われる。

 少し悩んだが、労働の経緯に繋げた。

 レリアスにはお金の消費がない事や、紙幣という仕組みで国が発展して来た歴史も、人は貢献から幸福を受ける研究が今のレリアスを形作ってる事も。

 好きに没入する情熱を推奨していると続けた。


「ではお金がないのは何故ですか?」


「ん。そうだな。お金ってさ、良くも悪くも平等じゃん。こうやってハイロンがお酒を作ってくれる様に、泥棒とか詐欺とかして手に入れた人も同じ価値じゃ変じゃんって思った」


「はい」


「で無くした」


「え…経済どうやって回して?」


「一応貿易のため紙幣はあるが国で管理してる。ただ貿易って言っても輸出が多いし、物作りの評判がいいんだ。率先して使うものは、他の国に留学する子の支援とかで、活躍してくれると、その国と仲良くなれるきっかけとか生まれて、豊かになりそうな輸入をしたり、それを研究者が分析し、生産できる仕組みを提唱してくれる。昔は大工もやってたんだが、今じゃ政策以外に携わる要因も減って、ひっく」


「酔っ払いは苦手です」


「安心しろ。おれに比べればアルコールは極少量だ」


「分かりました。何やらシオン様は僕に気を遣っていらっしゃるので、しかしお酒に支配される程僕は弱くありませんよ?」


 一気飲みするシイナ。

 こういう場は体質によって上手く渡れと教師の時に言った事を思い出すが。


「ハイロン。店の酒全部もて」


「はいよ!」


 このように悪い奴がいるから気を付けなさいと、俺の戒めである。


「いいか、水は混ざり易くてだな?」


「酔っ払ってますね」


「ひっくぅん! ヒッヒッ! ふゆ〜♪」


「そういう酔い方の人初めてなんですが…命を奪われたいんですか?」


「未だに現れねえから苦労してんだっつうの…」


「でしたね」


 シイナがクスりと笑った。


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