第70話 紅い象徴

 大衆や大隊長によりフォールオルドが次期後継者として広まり出す、帰り道の森。

 ハイライトが斬り掛かってきた。


「何?」


「シオンならなれたんじゃねえの?」


 後継者の話だった。

 きっと魔力に飲まれていた姿を重ねている。


「王が最強の存在を知らないってのも可笑しくね?」


「そう?」


「派手すぎなシエラの影響はシオンだろ」


 不機嫌なハイライトと渓谷の奥地を進む。

 シエラは相変わらずといった感じで今頃戦っていると思う。

 俺の影響かは知らないが「年単位で言われるとこっちもきつい」し。


「だってよ〜」


 可笑しいと呟いて止まらない。

 少しして霧が濃くなる所にレナが立っていた。


「可笑しいよな!」


「そうね」


 今のどこに同調するものが合ったのか、相性がいいのか。

 ハイライトと別れる。

 歩いていると「服、切れてるよ」とレナ。


「体感鈍ってない?」


 先程の剣に服が破れていた。

 けど悪気があったわけじゃなく、信頼し合える仲だしと言っていたら。


「で」


「ん」


 レナから秘密裏に感じた。


「君の潜在的素質は凄いの」

「組織の器じゃない」

「ここじゃその素質が廃れる」


 聞くと組織が俺を蔑ろに導くらしく「君の力は絶大なの」と続いた。


「それって絶大な力より組織の方が強いって事になるよ」


 終わらしたい。

 きっと魔力に飲まれる姿が評価対象になってるし、落ち着いて行動出来る良さや無難に生きるが丁度よかった。


「君は善の考えなの?」


「善が分からない」


「大衆が上手くいく事を優先する考え方」


 難しい。

 理解できるものは、みんなが出来て君が出来ない様に、みんなが出来なくて君に出来る事だとのこと。


「ルールを活用し成果を出すのが一般的な才能かも知れないけど、君の力があって、ルールの中に生きていては」


「もういい」


「ここで身を隠していたら幸せに」


「生きるか死ぬしかないんだからしょうがないでしょ」


 会話が消えた。

 組織に着いて報酬を納める。

 これが組織を豊かにするしいずれ仲間が増えれば更に良くなると、会頭と話し合った事を思い部屋に入った。


「おい」


 呼ばれた。

 というか『おい』って、俺参謀だぞ。

 部屋汚ねえーし!

 名前ないから呼び方分かんねーし‼︎


「おい」


「おい」


 ムカつく!


「俺はシオンだ」


「お兄ちゃん」


「誰が兄貴だクソ」


「ふん!」


 俺は部屋中を片付けながら不安になる。

 こんなのが慢性的に続くとか不幸だ。


「次部屋荒らしたら…」


「あい」


 ポカンとしている。

 そう言えばあのお爺さんが会話が出来る事を評価していた。

 白魔術界には学校があるらしく色々教えてくれる機関があるとか。


「お兄ちゃん」


「だから」


 向き直ると貝殻を差し出された。


「あげる」


 貰った。

 ニコニコしながら、髪が赤いからか表情も赤く見える。

 でもこれ、昨日の食堂のお皿なんだけど。


「あり、がとう」


 折角だし感謝を教えるつもりで言った。

 それでやけに光ってるし磨いたのだろうか?


「えらい」


 ムカつきながら次の日が経った。

 今日は他の組織の調査に周る。

 活動が被って突発的な抗争を避けるため、特に敵対系には念入りに。


「よ!」


 血塗れのシエラだった。


「シオンとこの大将が堅気を襲ったって騒がれ出してるが、何が目的だったんだ?」


 何それ。


「初耳」


「一部じゃ子供の誘拐って、昨日狩った構成員が暴露した」


「詳しく…聞きたい」


 仕事を投げた。

 外見的特徴は左手に指輪を五つ付けているのが幹部という情報の元、建物の地下に入っていく。

 大音量の曲で振動する通路を進むと直ぐ見つかった。


「何処んもんじゃ!」


 そこで手下は魔力で陥れ、五体満足に生きたければ教えろと言って情報を得た。

 この幹部は住人にみかじめ料の徴収に出向いたそうで、元を辿れば住人は不審に過剰で一般人を射殺する事故が相次いでいた。

 その地域はこういった構成員に抑止力として共存していると。

 ただ一点のみ、餓鬼の悲鳴は嫌いだったと耳に入れ、恐らく悲鳴に駆け付けたんだと会頭の立場になって想像した。

 家を覗く。

 夫婦の仲が見える。

 きっと純粋な時に知ってしまえば家族の概念が歪んでいた位に、胸くそ悪かった。


「だから売っちまえばいいっつたろ?」


「あんたが鉄で引っ叩くから他所に響いたのよこの無能」


 俺はその声も光景も聴き続けた。

 歯冠を噛んで、どうでもよくなってしまわない様に。

 あいつが組織に来て何日経つだろう。

 未だ不満なのか、愚痴が続いている環境なんだと知る。

 夫婦の声を聞くに、幹部が来るから泣き止まないあいつを調理器具で引っ叩いた事や、案の定悲鳴が響き激怒する幹部に夫婦が暴力を振るわれた事。

 あれが家族にストレスの矛先を向けられていたアザだったんだと鼻の奥がツンとした。

 俺は後日、家族の評判を下げるとみなし、その組織を血祭りに上げて。

 部屋に戻ると綺麗なままだった。

 一息付いて棚に置いた貝殻を見ている所に。


「たいんたいん」


「は?」


「よろこべ」


「…」


「あい」


 その子の頭を撫でた。


「名前が決まった」


「おう」


「ヴァレン」


「うゆ」


「シェスヴァレン」


 意味はシエラを意識した。

 少し変えたに過ぎないけれど、この子に逞しい生命力が育まれる願いと。


「ヴァレンって?」


「ん」


 情熱的で素敵だなーって想ったのは内緒にした。

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