第34話 倫弥と沙絵
倫弥はテーブルに肘をついた姿勢のまま話を続ける。
「ナズナちゃんとレイの気持ちも聞かないとな。」
「わたしは一人で行きます。これ以上迷惑かける方が辛いです。」
ナズナは倫弥を見据え、聞かれる前に応える。
「闇雲に行ってもダメなんだ。」
「じゃあ方法を教えて下さい。」
「あっちに行って、今のここまで戻ってくること。それだけなんだけど、その過程は結構きついと思う。」
倫弥はレイを見る。レイもずっと顔をあげたまま話を聞いていた。
「わたしも行く。どうしたらいいかわからないけど、わたしがやれることがあるなら行く。」
倫弥と目が合うとレイも応える。
「沙絵、いいか?レイが一緒に行くこと。それが、最小限必要な事だと考えたんだ。」
「説明してほしいな。なんでレイじゃなきゃダメなの?」
沙絵の表情は少し険しくなっている。
「二人の関係かな。俺でも紗絵でもダメなんだその役割は。」
「行ったら、壊れるんじゃないの?」
「壊れるよ。」
「じゃあなんで二人をそんな所に行かせるの?行かない手だってあるんでしょ?」
「ああ、ナズナちゃんが望めばな。でも、そのままだといずれ生きづらくなる。ナズナちゃんが行くって言うんだったら行かせたいと思ってたんだ。」
「壊れるのに?」
「そう。壊れた先に行くつもりなんだ。だから、きっとどうにかできる。そう確信してる。」
ナズナは何か言おうとするが話す隙がない。
「納得できないけど。」
沙絵は言葉を発した後、腕組みする
「結果見るまでは納得できないだろう。俺も確信してるだけで想定外の事があるかもしれない。」
「じゃあ、わたしはどうしたらいいの。黙って見送れって言うの?」
沙絵は組んだ腕をほどき前のめりになって言う。
「できればそうしてほしい。」
倫弥の返答に紗絵は何も応えない。
「わかった。まず俺がこの穴を一度見てくる。それでまだ出来る事があるかもしれない。戻ったらまた話しよう。」
倫弥は湯呑みを手にとり、ぬるくなったお茶を飲む。
「兄さん一人で行くの?」
「そうだ。それならいいだろ?」
「それなら、わたしも行く。」
「ダメだ。行く意味がない。一人で大丈夫だ。一人がいい。」
「ちょっと待ってよ、兄さん。話が唐突すぎて理解できない。いつもそうだよ。もっとちゃんと説明してよ。」
沙絵の言葉に倫弥はため息をつく。
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