第12話 ひつじ

 ナズナは遅い朝食を食べ、家の片付けや洗濯をしていた。中学からのナズナの週末の日課。12時を過ぎた頃、レイから電話がかかってくる。

「今バイトの休憩中。終わるの3時過ぎると思うから、5時半頃にうちに来れる。」

「行けるけど。いいの?」

「いいよ、遠慮しなくて。嫌いなものあったっけ?」

「強いて言えば、ホヤとか。」

「えっ?そうなの?それって影がないより辛くない?」

「つらくないよ。ふざけないで。」

ナズナは笑って応える。ホヤは影踏みより出会わないナズナは思った。

「買って帰るかなホヤ、あるかな。」

「ふざけないでいいから。」

「とりあえず5時半ね。お母さんとおいしいもの作って待ってるからね。なんかあれば連絡しなよ。」

「わかったよ。」


 ナズナは洗濯と掃除を済ませ一息つく。コーヒーをいれるカポカポカポカポッの音が部屋に響く。コーヒーをカップに注いで昨日の課題に取り組む。しばらくテーブルに向かっている。

「終わったぁ。」と言って寝転がり伸びをする。テレビを点けて、いくつかチャンネルを変えたあと、時計を見てテレビを消す。

「まだ少し時間があるな。ひつじに行くかな。」


外に出る格好に着替え、駅前にあるお店へ向かう。


 民家に暖簾と看板。『ひつじ』と書いてある。店に入り、奥には畳の休憩スペース。商品棚を見渡しクッキーとマフィンを購入。奥でなにかを焼いていたお姉さんが出てきて会計する。

「いつもありがとうね。ナズナちゃん。」

名前が知られているのに驚いた。

「なんで名前知ってるんですか?」と尋ねると

「顔に書いてありますよ。」と冗談ぽく笑う。少しここでお茶していきたいけど、もう5時を過ぎている。外はもう少しで日が落ちそう。店を後にレイの家に向かう。

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