第2話 イノシシになったカモシカの話

 おはようございます。


 昔、旅に行った時の話です。私が泊まった旅館にはカモシカの剥製が飾られていました。恐らくカモシカの生息地だったのでしょう。壁にも「かもしか」と書かれたのれんがかけられています。私が剥製を眺めているところへ、関西弁のおばちゃんとおばあちゃんの二人組がやってきました。


 おばちゃんが「鹿のはく製や!」と言いましたが、それをきいたおばあちゃんが、「イノシシやんか。」と言い放ちました。おばちゃんは一瞬「え?」という顔をして、剥製の正面に回り、「やっぱり鹿やで。角あるもん。」と返します。するとおばあちゃんが「イノシシも角あるやんか。」と自信満々に言ったのです。その後すったもんだの末、二人の間で「このはく製はイノシシで、イノシシには角がある」という結論が出てしまいました。私は、笑いを堪えるのに必死でした。


 私も年を重ね、気付けば周囲は年下の人が多くなってきました。間違えないようにしようではなく、間違えた時に年下の皆さんから「間違っているよ」と親しみを持って教えてもらえる人間でありたい、また若い者こそが持っている深い知識を臆することなく「教えて」と言える人間でありたい、そう感じた一幕でした。


 では、本日も一日笑顔で宜しくお願い致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る