エロスの里 第3回
袖を出て二の腕白し春の処女 友未
大変遅くなりました。申し訳ございません。諸事情と視力低下が重なり、ストックブックの更新がすっかり遅れてしまいました。お詫び申し上げます。
今回の「エロスの里」には長編、短編、合わせて20の作品にお集り頂くことができました。友未の期待通り文芸性豊かな作品を数多くお寄せ頂けましたこと、お礼申し上げます。エロ小説もあれば、その呼び名を使いたくない作品もあり、今回もエロスの様々な様相を覗かせて頂けました。
事前の予想通り、「普通の」恋愛や性行為より、変質者さんやアブノーマルな状況の絡んだ内容のものが多かったような印象です。その中から、今回は一つの長編と二つの短編をご紹介してまいりましょう。(なお、毎回申し上げていることの繰り返しになってしまい恐縮ですが、こちらの「ストックブック」は友未の好きな作品を紹介させて頂く備忘録であり、必ずしも友未の客観的評価の高い作品を取り上げて行くスタンスの資料ではございません。確かに、自分なりの客観的評価が低いものを好きだというケースこそないでしょうが、その一方、実際、これまでにも友未の波長や好みに合わなかったばかりに取り上げられなかった傑作と思しき作品は山ほどございました。特に「エロス」というようなテーマの場合、好き嫌いは読み手ごとにかなり異なりそうですので、友未のチョイスだけを信じ過ぎぬようご用心なさいませ)。
さて、今回最もご紹介しておきたかったイチオシの作品は、
∮ 宇地流ゆう様の書きかけ長編【春の裾】でした。
https://kakuyomu.jp/works/16818093094609908014
只今現在、3話(21章)68,386文字で連載中ですが、とりあえず、区切りの良い2話10章までを拝読させて頂きました。文学的耽美性と露骨なサディズム描写を兼ね備えた妖しい世界に、さながら映画でも見ているかのように引き込まれて行きました。
舞台は18C英国。故郷デンマークから名門トレバート公爵家の次男ジェームズに嫁いで来たジゼルは、軽薄な上流階級的社交の輪から未だ距離を置く中で、夫の弟、三男のユアンに出会う。善良さだけが取り柄のジェームズとは異なり、彼には洗練された優雅さと、捉えようとしても掴み切れない謎があった。だが、ユアンの裏の顔を探るべく邸のメイドを尾行していたジゼルは、突然何者かに襲われて隠し部屋へ連れ込まれ … というのが第1話の荒筋です。
第2話ではユアンのサディズムに蝕まれるジゼルの心身が、前話に引き続き一人称視点で生々しく描き出されて行く展開でした。
この物語の最大の魅力は、そのネオ・ゴシック風の、ストーリー全体を
UPされてからまだ2カ月余りとは言え、現時点で☆ふたり6つしかないのは、いくら何でも惜しすぎる名作かと思います。ゴシック・ファン、ホラー・ファン、ミステリーファンに強くお勧めしておきたいSM作品でした。
今回は他にも、アジフライ(百合)さま作、”【カクヨムで告白します】甘えんぼでマザコンの私。先生と同級生にお願いして、放課後だけママになってもらいました……。”や、@nakamayu7さま作、【妄想男 スタンド・バイ・ミー】、@Vaizenさま作、【月影に綴じる英雄譚】など、友未が自分に課している「中・長編でも1万字までは拝読する」というルールの文字数を大幅に越えて拝読させて頂けた魅力ある力作
が揃っていたように感じます。また、@idd11さまの、【さらばまつろわぬ神々よ~美少女妖怪達をテイムして神殺しします】も、他の企画テーマでしたら是非とりあげさせて頂きたいほど面白い和風奇譚でしたが、如何せん、友未には殆どエロスが感じられませんでした。
短篇作品にも友未の好みにぴたりと
∮ まさつき様、【花芽こそ、】https://kakuyomu.jp/works/16818093093323816673 は、芽吹き切らない未だ蕾の男児たちへの妖しい想いを秘める六年生の担任女性の内声によって綴られた前、後編からなる一幕劇です。前編には、朝、出欠の点呼をとるシーン以外、何も描かれていません。他には全く何の事件も起こらないただの点呼、なのですが …
〈男の子たちの眼差しが、私の身体を次々に舐めてゆく刹那が、たまらなく――好き。/ 冷えた体の芯に、すっと熱が挿すのを感じて。〉(原文)
危ない先生です!この前編ではストーリーではなく、こうした危うくも鋭い言葉そのものが氷の欠片のように次から次へと読む者の生理を冷たく射抜き続けて来ます。詩か俳句の言葉のようにニュアンスと隙間に富む文章にひと目で惹かれました。
〈芽吹きを待つ男児の生気が身を焦がすと確かめる時間。〉
〈愛しい子たちの名で早く口腔を満たしたくて、気が逸る。〉
〈ピアノが得意な樋口君の指先は、どんな人に触れ、どんな音色を奏でるのだろう。〉
〈互いに掠める指先の触れ合いただそれだけで、私の女は
(以上、全て原文より)
何と秀逸でセクシーな言葉たち。胸を打たれました。
後編では、女児に手を出した容疑で昨夜逮捕された同僚の男性教諭の話題が語られ、物語に立体感が添えられます。彼には、芽吹きを待つ幼い児童しか愛せない同類の匂いを感じていた主人公ですが。
〈「バカなやつ……」〉
〈どうしてだろう――どうして、花芽のままを愛せないのか。
なぜ、摘んでしまうのだろう。〉
〈 私が愛せるのは、芽吹きを迎える前のあえかな花芽たちだけ。
そう生まれついてしまっただけの私を、裁ける者なんているはずがない。〉
(以上、全て原文より)
∮ 【少年天使】千織🕘山羊座文学さま作
https://kakuyomu.jp/works/16818093092496882953
は、少年愛を描いたあまりにも美しい一種の幻想譚です。ファンタジーと呼んでも差し支えないのですが、魔法や転生とは何のかかわりもない奇妙な味わいの漂う耽美篇でした。
物語は、常設展に出かけた主人公の私が、美術館の中庭にいるひとりの少年を認める場面から始まります。
〈「君、親御さんは?」〉
〈「僕に親はいません」〉
〈ならば天使だ。天使は自然発生する。〉
〈私は彼を抱きかかえた、彼も私にしがみついた。彼の匂いは太陽だった。〉
(以上、全て原文より)
こうして少年を連れ帰る主人公。だが、その私も、実はかつてこの屋敷の主に天使として拾われ、かこわれ続ける者だった。何ひとつ不自由のない生活。私は少年を「アンジェ」(友未註:
〈彼には簡単なガウンしか着せず、いつでも彼を感じられるようにした。彼の肩が露わになると同時に彼の胸元に蕾が現れる。それを優しく啄んでやると、アンジェははにかんで身を捩った。それを見て堪らず、アンジェの唇に私の愛の印を押印する。アンジェも私の唇を軽く吸って、受け取ってくれた。私はまた、アンジェを後ろから抱くのも好きだった。足を絡め、腹の僅かなたるみの柔らかさを弄び、臍の窪みの縁を中指でなぞった。アンジェの肩甲骨に羽は無かったが、アンジェは間違いなく天使だった。〉(原文)
三年ぶりに海外から帰って来た主が珍しく私の元を訪れた。「天然天使」でなかった私は齢相応に美しさを失い、主人は少年でなくなってから私に構わなくなっていた。
〈「君が天然天使を見つけてきたんじゃないかと、家政婦たちが噂している。そうなのかね?」〉(原文)
〈主は完全にアンジェを取り上げるようなことはしなかったが、頻繁にアンジェに会いに来た。〉(原文)
〈主とアンジェが部屋にいる時、私はいつもベッドの上で一人、膝を抱えて踞った。〉(原文)
「逃げようか」と誘った私にアンジェは驚いた表情を見せる。
〈もしかしたら、アンジェの瞳には美しいものしか映らないのかもしれない。〉
〈「そうか……そうだね。行こう、美術館へ……」//あそこには私たちだけの世界がある。〉(以上、原文より)
ある種の割り切れない薄気味悪さをかすかに秘めた世界観のもとに映し出されて行く主人公の、天然天使少年への切ない執着や無条件の讃美の眼差しと、性描写の生臭さを巧みに
以上、ご紹介させて頂いたお勧め三作は、いずれも「エロ小説」「アダルト小説」ではなく、少なからずソフィスティケートされた半芸術、半娯楽作です。実際、今回を含めて過去4回の「エロスの里」企画にお寄せ頂けた数十作のなかで、完全に通俗的なエロ小説で友未を唸らせたのは、エ小研さまの【妻だけが知らないネトラレ生活】ただ一作でした(この作品は現在カクヨム上ではご覧いただけません。外部リンク → https://www.amazon.co.jp/dp/B0BG3W15GN)。エロ小説作家さまにとってはかなりハードルの高い友未の「エロス」を、次にどなた様が見事クリアして下さるのかと楽しみにお待ちしております。
スカートの裾こそばゆし風五月 友未
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