第54話 あなたが悪いのではなく運が悪かったのです(カエサルと水木しげる)

幸運不運は人間の運命を決定づけます。まるで人を嘲笑い翻弄するかのように。


前44年3月15日、ライバルをことごとく倒し、初代ローマ皇帝の座を99%確定させていたカエサルは、最後の最後で元老院議場でブルータスら元老院議員により暗殺されました。

たぐいまれな軍事・行政上の才能に恵まれ、大変な努力の末に手に入れかけたローマの帝冠を、最後の最後で永遠に失ったのです。


これを運命の悪意と言わずになんと言おう。


(「『3月15日』に注意せよ」と予言した占い師に元老院への道中で出会い、カエサルは「3月15日に注意せよとお前は言ったが、何も無かったではないか」と語ったが、占い師は「これはお気の早い。『3月15日』は未だ終わっていませぬぞ」と返答したと言われてます)


水木しげるは太平洋戦争中、兵士としてニューギニア従軍中に左腕を被弾、自分の血液型を忘れてしまい(笑)、左腕をほぼ総て切断してしまいます。

悲劇です。


ですがもし右腕が被弾したならばどうなっていたか。漫画家として「ゲゲゲの鬼太郎」を生み出すことができず、21世紀になってもアニメ化される息の長い人気と鳥取県境港市の水木しげるロードは生まれかったでしょう。

片腕の身障者として、母親が言うように灯台守にでもなってひっそりと誰にも知られない生涯を送ったでしょう。悲劇ですが幸運だったのです。


人間の運命を決定するのは運不運です。その他の条件は付けたしみたいなものです。


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