【完結】悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪)

naturalsoft

プロローグ

ガタガタッ!

ゴトゴトッ!


私は今、馬車に揺られながらこの国の最北端にある修道院へと向かっている。


はぁ~=3


「こんなはずじゃ無かったのになぁ~」


何度目かのため息を付いた後に呟いた。

私は敗れたのだ。

ただ、言い訳をさせてもらうと、ライバルに負けたのやら政治的やり取りで負けたのなら100歩譲って許せる。


しかし─


「イベントの強制力に負けたってのは承服できーーーーーん!!!!!」


ざわざわ

ざわざわ


「煩いぞ!静かにしろっ!」


護衛の兵士に叱られた。

(まぁ、護衛っていうより逃がさないための兵士なんだけどね!)


私はどうしてこういう状況になったのか思い出してみた。



これは、この国の貴族が通う学園での出来事だった。


我が国では12歳になる子供達は王立の学園へ入学する決まりがあった。すでに各家で家庭教師を付けて知識を付けているが、将来の人脈作りの為が大きな所である。ここで人脈を作り貴族社会での立ち位置を作っていくのだ。


そして私、シオン・アクエリアスはアクエリアス公爵家の長女であり、この国の第一王子であるエリック・ファーランドの婚約者で【あった】。(過去形)


王太子妃になるべく、それはもう厳しい指導を受けて立派な淑女へと邁進してまいりました。しかし、ピンクブロンドの変わった髪の色をした少女・ヒロインが転入して来てから運命は変わり始めました。

元は平民として暮らしていて、男爵家に引き取られたヒロインのアリアは私の婚約者であるエリックに近付き、心を奪っていったのです。


しかし、私も黙って見ていた訳ではありません!ここが【ゲームの世界観】の中だと知っている数少ない【転生者の1人】として、運命に抗いましたわ。


出逢いのイベントでは、エリック王子と一緒に登校したのに、忘れ物をしたと急にエリックが馬車の所へ走って戻った所で、ヒロインとぶつかりイベント成立!


魔法属性イベントでは、ヒロインが聖属性の力を持っている事が判明して騒ぎになる所で、エリックを別の場所に呼び出してその場に居ないようにしても【偶々】具合が悪くなり、保健室でヒロインが回復魔法を使って好感度を上げてくるし!


街中の遭遇イベントでは─etc……


はぁ、もう思い出すのも億劫ですわね。

極めつけは、王族主催のダンスパーティーでの婚約破棄イベントですわ!今、思い出してもムカッ腹が立ちます!


あること無いこと罪をでっち上げて、私を断罪して!大体、本当の悪役令嬢と違って私はイジメなど行っていないのですからね!

ヒロインのアリアが目の前で【勝手】に転んだら、私が突き倒したと責められるわ。成績で首席を取ればカンニングなどの不正をしただのと言われるわ………てめぇらこそヒロインと遊んで成績下がったら、絆された教師に点数をかさ上げして貰ったろーが!!!!!


ハァハァ………!!!


でも、断罪イベントで唯一誤算があったのは家族が庇ってくれた事だった。両親を始め、攻略対象者の兄も私の擁護をしてくれたのだ。

そのせいでアクエリアス公爵家を取り潰すとバカ王子が喚き出したことで、私は全ての罪を【否定】した上で辺境の修道院送りを認めたのだ。


「はぁ~、厳しい教育から逃れられたし質素に暮らせるのも悪くないかな?」

(まぁ、限度があるけれど)


でも、まだ着かないのかしら?最後に街(村)に着いてから3日は経っているのだけれど?


そう思っているとヒヒィーン!と、馬車が急停止した。


「うわっと………何事?」


鉄格子ような小さな窓から外を見ると、鋪装もされていない獣道に近い馬車1台分だけ通れるような道に、大木が倒れて通れなくなっていた。左右は深い森の木々で覆われ迂回は不可能だった。


「おい、どうする?」


護衛の兵士の相談の声が聞こえる。少しして─


「おいっ!出ろ!!!」


突然、馬車のドアが開き馬車から降ろされた。


「倒木のせいでこのままでは進めない。Uターンも出来ないため、馬を切り離し馬車は捨てていく!地図ではもう少し先に北方修道院『シャングリラ』がある事になっている。お前はここから1人で向かえ!」


あら?シャングリラなんて洒落た名前の修道院なのね。ってじゃなーい!!!!!

ここから1人で向かえっていった?言ったよね!?


「えっ?ここから1人で?」


「ああ、【地図】ではすぐ先のようだ。まぁ、逃げようとは思わない事だ。馬もなしに水、食料もなしで引き返しても、道に迷って野垂れ死ぬのが落ちだ」


兵士達は次々に馬で引き返していった。


「修道院へ行けば食事ぐらいは出よう!大人しく向かえ!」


そして、馬車の従者を馬に乗せ最後の兵士も去っていった。


「マジで?私、質素とはいえドレスなんだけど?」


私は途方に暮れても仕方がないので行動を開始した。一応馬車の中には立ち寄った村で買った干し肉と硬いパンが少し残っていた。


倒木を乗り越え、道なき道を歩いていくことになった。



おかしいわ?あの倒木の折れ目から見て、倒れたのはずいぶん前のようだわ。ときどき足りない食料や生活物資を買いに来ていると聞いていたけれど…………どうやって行き来をしていたのかしら?まさか、別のルートがある?


その時、私は嫌な予感を感じて背筋に嫌な汗をかいた。


「いや、あの兵士達の表情も予想外の様だったはず………私を亡き者にしようとしての行動ではない。ただ、道を間違えただけなのかしら?」


しかし、すでに前に進むしか無い私は歩き続けた。


30分ほど歩いて行くと、光が射してきた。森の出口が近い!


森から抜けるとそこには─


半分崩れ落ちた修道院がありましたとさ。

手入れされていない田畑や家庭菜園や、雑草が覆い繁る状態から誰もいない事が見て取れた。


why?


何これ?なにこれ??ナニコレ???


これが後に『シャングリラ《桃源郷》』を見た私の最初の感想であった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

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