第849話霧響は理解できない
俺たちは特に危ないことなど何もなく、遅くなりすぎる前にそれぞれ家に帰ることになった。
そして俺の家の玄関にて。
「おかえりなさいませ、お兄様」
「あぁ、霧響、ただいま」
霧響が恋愛について考えると言ってからそういった関連に関する話は一切していないが、霧響はようやくその話を始めた。
「お兄様、長い時間考えましたが、やはり理解することができません」
「どこが理解できないんだ?」
また兄妹なんて関係ない、とか前と同じようなことを言おうとしたらそれをどう言い返すかと考えていたが、霧響は全く別の方向性で俺に告げた。
「私はお兄様の恋人になってはいけないのに、どうして白雪さんはそれが許されるのでしょうか?それだけがずっと納得することができません」
・・・その差は俺と霧響が兄妹だから、という今まで通りの簡潔な返答は、今この場に望まれていない。
そんなことを言うなら、そもそも霧響からしてみれば最初から「兄妹だからというだけで恋人になれないのは理不尽です」と言えばいい話だからだ。
つまり霧響が話たいのはその部分ではない。
「白雪さんは私に恋愛は一方的ではいけないと言いました、ですがそれであれば白雪さんとお兄様が付き合っているのはやはり不自然です」
「・・・え?ど、どういうことだよ」
「お兄様は白雪さんのことをお好きでは無いでしょう?」
「・・・え?」
霧響は・・・何を言っているんだ。
「お兄様のことをすぐに制限したり、お兄様のことを苦しめたり、そのようなことをしてくる方のことをお兄様は本当に好きでいらっしゃるんですか?もしそうなのであれば、尚更私がお兄様の恋人になれないことには納得がいきません」
「いや、それは・・・」
俺はそれを否定しようとしたところで、口が詰まった。
確かに今まで初音にされてきたことと言えば、浮気を疑われ、ご飯を抜かれ監禁され襲われ、その他様々なことをされて、挙げ句の果てには俺自身が本当に浮気をしてしまうという歪な関係性になってしまっている。
そして今は一時的に、という形かもしれないが、初音とも結愛とももう恋人ではない。
・・・こうして考えてみると、本当に俺たちは不思議な運命を辿っているのかもしれない。
「お兄様は今私に納得のいく説明ができるんですか?そして本当に白雪さんのことを好きだと言うのなら、好きな点をあげてください」
「・・・それはできない」
「好きな点は無い、ということですか?」
「そうじゃない・・・実は───────」
俺は霧響になら話ても差し支えないと思い、今は一時的に初音と別れていることを話した。
兄妹水入らずということもあり、俺は浮気していたこととその理由も霧響には話してしまっていた。
「・・・お兄様」
「なんだ?」
「では、お兄様には今は交際相手がいない、ということですよね」
「あぁ、そうだ───────」
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